「校則アンケート」(2021年4月15日~6月30日)に、多くの子どもたちの切実な訴え、おとなたちの真剣な回答がよせられました。回答された約3000名のみなさんに感謝いたします。 校則の見直しが進むことを願い、アンケート結果を発表します。
第9回 校則についての自由意見「校則をかえてほしいいいいいいい」
校則をなぜ守らなければならないのか。半分以上の中高生たちのが「説明されていない」と訴え、七割の中高生が「説明に納得できない」と答えていました。そのことと同じ質問を教職員に尋ねました。
[コメント]
「説明している」の比率は四分の三を超え、中高生の「説明されている」の半分弱とは少し違う結果となりました。母集団が異なるのでその違いを検討することは困難ですが、回答に応じた教職員は比較的、校則問題に関心があり、生徒にていねいに接する教職員だった可能性が高いかもしれません。
★多かった集団生活、注目される人権からの説明
次に、生徒たちに説明している「校則を守る理由」を記述式で書いていただきました。それらを私たちなりに大まかに分類してみましたが、項目的には中高生アンケートでの回答にほぼ対応していました。ただし順位はやや異なり、例えば教職員で一位の「集団生活での安心・安全」は、中高生では4位でした。かつ、その記述を読んでいくと「互いの自由を尊重し人権を大切にする上では行動が制限されることがある」といった、生徒の人権からの説明が一定あることが目を引きました。こうした人権からの説明は中高生の回答ではなかったものですが、生徒が納得できる可能性の高いものかもしれません。
ところで、人権からみたとき、どんな状況で、誰の、どんな人権が制限できるかが問題となります。たとえば授業中に、A君が大音響で音楽を聴きたいと思ってそうしたとします。A君にとっては幸福追求権の行使です。しかし、そうすれば他の生徒の学習権が侵害されます。この状況で、A君の幸福追求権と他の生徒の学習権とのどちらの権利が優先されるかは明らかでしょう。それでは、髪型や服装はどうでしょうか。例えば「A君があの髪型だと自分は落ち着いて勉強できない」という生徒がいれば、A君はその髪型が許されないのでしょうか。自分で髪型を選択する権利と、他者の髪型への好き嫌いの感情とどちらが優先されるのかということが考えられなければなりません。あるいは、学校の伝統として制服がある場合、それと生徒の服装の自由とどういう折り合いをつけられるのか......考えていかなければならない、多くの問題がありそうです
★校則への率直な批判 「校則変えよう」の呼びかけも
教職員の「校則を守る理由」についての記述のもう一つの大きな特徴は、校則への疑問の表明が少なからずあったことです。たとえば、次のようなものです。
――子どもの権利条約などから自分は校則に批判的だが学校の方針なので「仕方なく、指導している」と生徒に説明している
――「自分は気にしないけど、その髪型に切れる人もいるから気をつけたほうがいいかも」という言い方をする
――就職や進学の際に不利にならないようにとは説明するが、本当に不利のなるのか甚だ疑問と思っている
――私自身が理不尽だと感じるきまりは強要しない
――バイク乗車や喫煙は指導の根拠があるが、服装や頭髪について生徒を説得する根拠はない
さらに、「ルールだから守ろう」と言いつつ、「納得いかない時には声を上げよう」と生徒に語りかけている回答も少なくありませんでした。校則に問題があることはわかっている。そのことを生徒に考えてもらい変える方向に導きたい。そう考えている教職員がある程度いるのではないでしょうか。
説明していないと回答した教職員には、その理由を尋ねました。その多数は、「自分が校則に納得していないから」という先生たちでした。「人権侵害に加担したくない」という回答もありました。そういう説明は生徒指導担当の教員の仕事であり、自分は関わらないという回答もありました。
★生徒たちの納得の微妙さ
説明に生徒は納得しているのか?回答した教職員の4割以上は、生徒たちは「納得している」と回答しました。「納得していない」は14.3%です。中高生アンケートでは「納得していない」が7割でした(母集団が異なるので単純な比較はできませんが)。注目されるのは、納得している/していない以外の「その他」を選んだ教職員が4割以上あったことです。「ある意味、無理やり納得させていたと思います」「生徒による」「ケースバイケース」などが多くありました。教職員たちが回答した「納得」は微妙なものといえそうです。回答した教職員の九割以上が勤務校の校則に疑問をもっていることを考えれば、その微妙さはある意味で当然かもしれません。「(生徒は)ほぼ納得しますね。『納得できない教員』が重たい課題です。」とは、ある教員の回答です。