「校則を変える」という角度から、次の三つの質問群を設定しました。
頭髪に関して、ツーブロックや長さの規定を無くして欲しい。また、男子生徒でも長くできるようにして欲しい。女性は短髪でも長髪でも許されるが、男性は短髪しか許されないのは、差別だと思います。
髪型の縛り、就職している人でもツーブロックの人も多いのでツーブロック禁止は納得できない
髪色などは節度を守れば自由でいいんじゃないかと思う。
昔のやり方を突き通そうとするのを変えたい。寒かったり暑かったりしても、決められた黒服or白服を絶対着用を変えたい。冬に寒いとき上にジャンパー、夏暑いときに風通しのよい体操服など。
そもそも制服はあってもいいけど、靴下の色はなんでもいい。バッグは、なんでもいい。髪の毛は、なんでもいい。
制服・私服の選択制、制服でも男女で分けるのではなく選択制にする、頭髪検査を廃止する、運動靴とローファーで選べるようにする、コートやマフラーの規定を無しにする
自分の学校は靴下、靴を白じゃないと行けないことがよくわかりません。無地の靴下なら何色でもいいと思いました
・制服を無くしたい ・個人が尊重されるようになって欲しい
化粧!スカートの丈!髪色!
生徒を信頼して昼休みや休み時間に校内でスマホを使えるようにしてほしい
やはり女子も気軽にスラックスを買えるようになればいいのにと思う。買ってはいけない、という決まりはないが、私の学年には1人しかいない上、やはりその子の事は話題になってしまっている。制服の着こなし方のパンフレットのイラストにも、女性がスラックスを履いているイラストを載せるべきだと思う。スカートしか描かれていないせいで尚更履きにくい。例えば、スカートよりもスラックスを少し安くするなどしてでもスラックスを気軽に購入できるようにした方がいいと思う。
もっと自由になりたいと思う 不良になりたいわけではない 先生は子供のすることはすべて悪いとはじめから決めつけてる気がします
生徒会で話し合って生徒議会と生徒総会で承認したら校則の変更をできるようにして欲しい。先生が勝手に昔からの校則をそのままなのはおかしいから
「変えたい」は、85.9%という高率でした。これまでの中高生の思いを考えれば理解できる数字です。そのあとの「校則のどんなところを変えたいですか」(自由記述)への回答は短文から長文までさまざまでした。
おおざっぱに分けると、頭髪関係408人(45.0%)、服装関係372人(41.0%)、持ち物などその他477人(52.6%)です。足すと回答数を上回るのは、頭髪と服装を変えたいなど複数にまたがった回答が当然のことながらあるためです。ほぼ全部を変えてほしい、校則をなくしてほしいという回答も多くありました。
《頭髪関係で変えたい校則》
頭髪関係を記述してくれた中高生408人の半分以上が、頭髪の規制全体の見直しを求めるものでした(215人)。
頭髪の個別の記述では、ツーブロックと髪染めを認めてほしいという意見が目立ちました。ツーブロックについては「流行の髪型で清潔感もあり、どこがいけないの?」という強い気持ちうかがわれます。ある東京の高校生は、「正直、時代遅れ」「ツーブロックだから事件や事故にあった事例が何処にあるんですか?」「そんな恥をかいてまで生徒にツーブロックを禁止させる思考がわかりません」と述べています。
髪染めを自由にしてほしいという意見もツーブロックと同じ程度あり、要求のつよさを感じます。髪染めが大人社会で普通なことになっているなかで、考えないといけない問題と言えます。「ドライヤーなどで変色した髪を黒染めする必要があるところ。」など理不尽さを訴える回答も少なくありません。「髪型の自由化(派手なものは除く)」など極端なもの以外は認めて欲しいという意見もありました。
「女性は短髪でも長髪でも許されるが、男性は短髪しか許されないのは、差別だと思います。」など性別で髪型に差をつける現実への鋭い批判が多くありました。
頭髪は服装と違って着替えることができないものだけに、その他の「オン眉禁止」「長い髪はくくる」などの記述も含めて全体として切実な思いが込められているように思えます。
《服装関係》
服装関係の個別の要求でもっとも多かったのは、制服に関することでした。制服の男女差をなくす、制服・私服の選択制、制服をなくす、制服の着こなし方などです。とくに男女差をなくす声が多く、ジェンダー平等に適合した改善が急がれます。また、その日の気温や体調に応じて服装を調整できるようにしてほしい等健康に関わるものも少なくありませんでした。地球温暖化のなか、健康面からも服装への規制が問われています。
二番目に多かったのは、化粧やピアス、アクセサリーに関することでした。ある高校生は、「大人になったら化粧するのがマナーみたいな風潮があるにもかかわらず、することが禁止されているところ」を変えたいと書いてくれました。ピアスも社会では普通になってきているもとで見直しが必要ではないでしょうか。
三番目は靴下に関することでした。靴下の色を白などに指定されている中高生は「靴下の色は何でもいい」と訴えています。靴下の長さの指定には、夏にハイソックスは蒸れる、くるぶしソックスを認めてほしいなど靴下の長さを指定しないでほしいという要求もあります。
そのほかは、下着の色、コート・マフラー・カーディガンの指定などです。
《頭髪、服装以外》
頭髪、服装以外でたいへん多かったものは、スマホに関するものでした。スマホを休み時間に使わせてほしい、スマホの没収をやめてほしいなどです。何人かの中高生がスマホを認めて欲しい理由を書いてくれました。休み時間や運動会などでスマホで思い出の写真をとりたい、授業でも有効活用できるのではないか、地震などを考えると必要などです。スマホがこれだけ普及するなかで、スマホとどう付き合っていくのかの前向きな議論が必要そうです。
また、恋愛禁止や謎ルール(男子を誘惑するから掲示物にハートマークは禁止など)をなんとかしたいという訴えもありました。
《変え方についての訴え》
さらに、「教師と『対等』に議論し、変更・維持を決めていく機会が欲しい」「生徒指導部の教師だけで決められ、生徒はそれに一切の関与ができないこと」など校則を変えるルールに関する記述も少なからずありました。中高生たちは、自分たちの意見がきちんと取り扱われ、民主的に議論されることを望んでいます。
※1 「わからない」は選択肢にはなかったもの。「わからない」「知らない」などの計。
※2 その他は、とにかく変えられないことの強調20人、生徒会などで変えらるなど変えられることの記述13人、校則がない14人、変えたいとは思わない表明2人、他事記載5人。
回答した69.5%の中高生が、「校則に校則をどうやったら変えられるか書かれていないし、教えられてもいない」と回答したことは、やはり驚くべきことです。子どもたちの髪型や服装、持ち物、さらに学校外の生活まで制約をかける学校の決まり。それがどうやったら変えられるのかの手続きが明らかにされていないことは、大きな問題だと言わなければなりません。校則の改正手続きが不明瞭だということは、校則の制定過程も不明瞭なものかもしれません。校則改正の手続きが「書かれている」か「教えられている」と答えた中高生は合わせて23.2%にとどまりまっています。
その他の記述でいちばん多かったのは、とにかく校則は変えられないというものでした。「そもそも変えることは不可能と思われる・生徒指導部の独壇場。」「文句を言うなと言われた」「絶対に変えられない」などです。そこには、「書かれているが教師たちが頑なに変えさせない」「生徒会が実施する生徒総会で意見を提出することは出来るが出す前に先生にそれは無理だからと言われる」など、教員側がいろいろな理由をつけて否定して実際には変えることはできないというものもあります。
子どもの権利条約は、「自己の意見を形成する能力のある児童がその児童に影響を及ぼすすべての事項について自由に自己の意見を表明する権利」(自己表明権)を保障し、子どもの意見への「考慮」を求めています。この「考慮」は、ただ聞き置けばいいというものでなく、誠実な応答関係であり、基本的に取り入れることを目指し、どうしてもできなければその理由を子どもたちにきちんと話して理解を得る必要があるというものです。
校則を変える手続きの「見える化」と、校則を変えたいという子どもたちの意見に誠実に応答する学校側の姿勢が求められているといえます。それは子どもたちの学校への信頼を築くことにつながっているのではないでしょうか。
※その他の6割近くが「ない」(変えようとしたことがないの意味と思われる)。14%が「わからない」、8.5%が「校則がない」など。
スマホの持ち込み タイツの着用 など、生徒総会で議題に上がり話し合いを重ね、可能になりました。
靴下の色が白のみでしたが、生徒会長が先生に意見しまくって、紺もOKになりまた。ただ、白と紺しか使ってはいけないので、しんどいです。靴下も洗濯するので、すぐ無くなります。
自分はジェンダーレスであり、指定の制服を着る事が心の負担となっていました。女子でもスラックスが履けるように先生方にお願いをし、その次の年のは可能になりました。今ではスラックスを履いて登校しています。
女子の5-6人で、担任の先生に、靴下の色指定(白のみ)について変えてほしいと要望したら、黒と紺も可になった。下着の色が白という指定に、学校からのアンケートに親が意見して、自由になった。
部活で髪型が決まっていたので、無くした
現在、生徒会長としてスラックスの導入に力を入れている。しかしあまりにも硬い学校なので、すぐに実現できるとは思っていない。
私は、生徒会執行部なので校則を変えたいと思い、今動いているところです。
クラスの女子全員で目安箱に意見を述べた
生徒が変えたい校則を生徒会に提出し、生徒にアンケートを取り、先生に意見を聞き、試行期間を設け、その結果を分析して正式に学校へ校則を変えてくださいという文書を出す。
生徒会で審議をしていたが先生に審議自体を否定され、変えようともできなかった
先生にははぐらかされる
署名を集めて提出をしたが、検討されなかった
生徒総会で大多数の意見がでるも教師により却下。
まずは生徒会選挙に立候補しようと思ったら立候補させてもらえなかった。
体育祭の日に女子は編み込み禁止、全体で鉢巻のアレンジ禁止と言われ、どうしてダメなのか、認めてくださいとクラスの女子で言いに行った。先生からは、ふさわしくない、体育祭はそういう場ではない、早く帰れと言われた。この学年なら理解してもらえると思ったと言われ、論点をずらされた感じがした。
中学生のとき、「靴と靴下が白色しか履けない」という校則をきっかけに、校則に対して疑問を抱き生徒会に入って校則を変えようとしました。3年間教員と何度も話し合いましたが、永遠と屁理屈を言われるだけで話は通じず、その校則を最後まで変えられることはありませんでした。
半分の中高生たちが、〝自分あるいはまわりの生徒が校則や決まりに意見を言ったり変えようとした〟と回答しました。そのことに中高生たちのパワーを感じます。中高生たちは、親しい先生に相談したり、生徒会の議題にしたり、目安箱にみんなで意見を書いたり、さまざまな形で現状をかえようとしています。
しかし同時に、彼らは校則がなかなか変わらないという厳しい現実に直面しています。中高生全体でみると69.1%が「変わらなかった」と回答。「変えようとしたことがある」と回答した中高生に限ってみても、64%が「変わらなかった」と回答しました。校則を変えたいとつよく願い、行動にもでていますが、多くの高校生が変えられなかった苦い体験をしています。
自由記述で校則を変えることに関する経験をたずねたところ、238人の中高生が答えてくれました。
変えた経験では、女子もスラックスをはけるようになったという経験が目につきました。
いま変えようとしている、まだ意見を言っていないが変えたいなどの中高生の回答には、何とか変えたいという気持ちが感じられました。
残念なのは、変えられなかった苦い体験についての記述です。教員から話し合いを拒否される、怒られる、話し合ってもはぐらかされるなど、その多くが全否定に近いものだったからです。
「先生に怒鳴られ変えられなかった」と書いてくれた高校生は、ツーブロックを認めて欲しいと回答した高校生でした。そこでは「そもそもなぜツーブロックがダメなのか。憲法第13条の幸福追求権で髪型の自由は認められているはず。教育基本法1条には人格の完成って書いてるけど、そもそもツーブロックとそれ関係ないし。校則より法律の方が上だし、この校則はあまりに不合理だから適用されないはず。事故に遭いやすいから等と言っているが、そもそもツーブロックは社会的に清潔だと言われている髪型であるため、明らかにおかしい。校則だのなんだの言っている学校は、教育者、教育機関としての資格はないと思う。」と論理だって自分の意見を書いています。