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2022年2月9日(水)

主張

医療・福祉人材紹介

現場圧迫の高料金放置できぬ

 コロナ危機で医療や福祉分野の人員不足が深刻化する中、民間人材紹介会社の高額手数料が問題になっています。有料職業紹介を全面的に自由化したことが弊害を生んでいます。ただでさえ厳しい病院や福祉施設の経営が人材紹介手数料の支払いで圧迫され、体制整備の障害となりかねません。労働者の待遇改善も妨げます。手数料の上限を定めることや公的な職業紹介の充実が必要です。

構造ゆがめた自由化路線

 福祉医療機構や全日本病院協会が2020年に行った調査によると、人材紹介会社が病院に人員を紹介する場合の1人当たり平均手数料は医師352万円、看護師76万円でした。病院や介護施設、保育所は法令が定めた基準の人員を確保しなければなりません。特に日常的に不足している看護師については8割近くの病院が人材紹介会社を利用せざるをえず、大きな負担となっています。

 医療の収益に対する人材紹介手数料の比率は平均0・38%です。2%前後の病院もありました。病院の利益率はコロナ前の18年度決算で平均1・8%です。病院団体は、もともと利益が少ない経営を手数料が圧迫していると訴え、料金に一定の基準を設けるなどの改善を求めています。

 この問題は1月25日の衆院予算委員会で日本共産党の宮本徹議員が取り上げました。民間人材紹介会社の手数料収入は14年度と19年度の比較で介護サービス8倍、保育士10倍に増え、看護師も13年度比で5倍になったことが質疑で明らかにされました。

 労働基準法は第6条「中間搾取の排除」で民間の職業紹介について「法律に基づいて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない」と定めています。悪質な職業あっせんで“ピンはね”が横行し、劣悪な労働条件が野放しにされた過去への反省があったからです。法律で許されるのが、職業安定法で許可された事業者です。

 以前、民間の有料職業紹介は法令で一部の業種に限定され、紹介手数料にも上限が決められていました。ところが1999年に労働者派遣の原則自由化と同時に有料職業紹介も自由化され、紹介手数料の上限も取り払ってしまいました。2014年にはハローワークの求人情報が人材紹介会社に提供されるようになりました。

 社会保障費が抑制され、医療や福祉分野で過酷な労働、低賃金、人員不足の悪循環が慢性化しています。そこに人材紹介会社が営業をかけ、利益をあげています。こうしたゆがんだ構造をつくりあげたのは、大企業の利益を最優先する新自由主義の政治です。

公共の体制こそ拡充せよ

 本来なら医療体制の拡充や職員の賃上げに充てるはずのお金の多くが高額の紹介手数料の支払いに費やされることは正されなければなりません。医療、介護、保育の事業所が支払う人材紹介手数料の原資には国民が払った税金や保険料が充てられています。岸田文雄政権は関係者の声に耳を傾け、少なくともこうした公的分野では手数料に上限を設けるべきです。

 さらに医療、介護、保育関係は国が責任を持って無料で迅速に職業紹介できるよう、ハローワークに専門部門を開設するなど公共の体制を強めることが不可欠です。


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