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2021年10月25日(月)

NHK「衆院選特集」党首討論 志位委員長の発言

 総選挙投票日の1週間前の24日、NHK番組「衆院選特集」で行われた9党の党首討論で、日本共産党の志位和夫委員長は、岸田自公政権の政治を厳しく批判するとともに、各分野で対案を示し、市民と野党の共闘で政権交代を実現し、新しい日本を切り開いていく展望を大いに語りました。

選挙戦中盤

「政権交代で政治を変えよう」の訴えに熱い受け止め

 選挙戦中盤に入り、「どんな訴えが有権者に響いているか」と各党首が問われ、志位氏は次のように発言しました。

 志位 私たちは、野党共闘で政権交代を実現し、新しい政権をつくろうと訴えています。この9年間の安倍・菅政治は、格差と貧困をひどくし、国政私物化疑惑にまみれ、コロナ失政で多くの犠牲を出しました。岸田新政権は反省なく引き継ぐという姿勢です。「こんな政治を続けていていいのか。変えよう」という訴えが、たいへんに熱く受けとめられる状況があります。

 そして政治の中身として、私たちは「四つのチェンジ」を訴えております。弱肉強食の新自由主義は終わりにして、命と暮らし最優先の政治へのチェンジ。気候危機を打開し、地球の未来を守る政治へのチェンジ。ジェンダー平等の日本へのチェンジ。憲法9条を生かした平和外交へのチェンジ――これを訴えておりますが、くらし、平和とともに、気候危機とジェンダーの問題について、とくに「若い方々の未来を奪ってしまうような政治でいいのか」との訴えは、とても強く反応が返ってくる。これも最後まで貫きたいと思っています。

市民と野党の共闘

首相が逆立ちしてもできない豊かな共通政策がある

 司会の伊藤雅之解説委員から「野党候補の一本化をはじめとした連携でも効果があがっているのか」と問われた立憲民主党の枝野幸男代表は、「一本化で他党のみなさんにかなりご協力、ご無理をいただいたことを感謝しているし、その効果も大きいと思う」と発言。一方、岸田文雄首相は「野党の選挙協力には政策・理念どうなんだろうか、選挙後どうなんだろうかという意見を聞く」などと述べました。志位氏は次のように述べました。

 志位 私たちは、新しい政権ができた場合には、「限定的な閣外からの協力を行う」ということで枝野代表と党首会談で合意しています。この「限定的な」という意味は、市民連合のみなさんと4野党で結んだ野党共通政策で協力していくということなんです。

 いま岸田さんが「政策ではどうか」とおっしゃいましたけども、20項目の合意がある。そのなかには、例えば「安保法制の違憲部分の廃止」、「核兵器禁止条約の批准を目指して(締約国会議に)オブザーバー参加する」、あるいは「(沖縄県)辺野古の新基地は中止する」、あるいは「従来の医療費削減政策を転換する」、「選択的夫婦別姓」、「原発のない脱炭素社会」。こういう岸田さんが逆立ちしてもできないような政策がしっかり並んでおります。そして、違う点は持ち込まないということも確認しておりますので、こうした大義のもとに野党共闘をいまやっているということを多くの皆さんに広げきって、いい結果を必ず出したい。その中で共産党も伸びていくような結果を出したいと考えております。

外交・安保でも重要な合意

批判は野党共通政策を読んでからに

 日本維新の会の松井一郎代表は、「外交・安全保障を横において政権選択選挙で有権者の信を問うことほど無責任な話はない」などと野党の共闘を攻撃。これに対し枝野氏は「4党の間では志位さんがおっしゃった通り20項目のかなり詳細で具体的な政策の共有をしている。これを実現するために閣外からご協力いただけるということだ。安全保障などには違いがあるが、それについてはこの連携には持ち込まないとご理解をいただいている」と反論。続けて志位氏が発言しました。

 志位 松井さんが、野党は安保・外交について、きちんとしたものがないとおっしゃいましたけれども、野党共通政策を読んでから言ってほしい。

 例えば「安保法制の違憲部分の廃止」とある。これは集団的自衛権を行使するのはやめようということです。これは憲法違反だからやめようと(書いてある)。安保・外交の一番の根幹部分でしっかり合意しているんですね。ですから、そういうことも含めて一致点で結束する。

 そして、私たちは日米安保条約廃棄(という立場)ですけれども、それを党としては訴えますが、政権には持ち込まない。ですから、そこはきちんとしているので、まったく批判は当たらないと思います。

新型コロナ対策

法改正というなら「損失を補償する」と明記せよ

 議論は、新型コロナ対策に。感染拡大の次の波にどう備えるのか。「人流抑制のための法改正は必要か」との伊藤氏の質問に志位氏は次のように答えました。

 志位 私は、そういう法改正、あるいはさまざまな罰則を強化していくという法改正には反対です。

 私は、法改正というんだったら、「損失を補償する」という考え方を感染症法に明記すると、これが一番大事だと思っています。これが書いていないことが、いまの感染症法の一番の欠陥だと思います。そのために、さまざまな協力金、支援金、給付金が、つくられていますけれども、どれも不十分で、かつ一部の事業者しか対象にならない不公平なものになっている。

 ですから、ここは、きちんと法律に「損失を補償する」ということを書いて、政府のコロナ対策によって直接・間接に損失を被った全ての事業所を対象に、十分な補償を行うことを法律上も義務付ける。これが、多くの国民のみなさんが感染対策に協力していく上でも一番の要だと(思います)。そういう法改正を強く求めたいと思います。

病床確保言うなら

逆行する病床削減推進法廃止を

 岸田首相は、「病床確保については19日に史上初めて法律に基づいて国立病院機構をはじめとした公的病院、約200近い病院に病床確保の要求を行った」などと胸を張りました。これに対して志位氏は次のように批判しました。

 志位 いま岸田さんが病床確保ということをおっしゃいましたけど、そうおっしゃるんだったら、逆行することをやめるべきです。

 いま政府は、地域医療構想の名で、消費税を財源にして、全国の20万の急性期のベッドを削るとんでもない計画(を進めている)。これを中止するべきだと思います。

 この計画は既に始められている。2020年度に3400床が削られました。21年度には1万床の削減が予算に盛り込まれました。コロナ(対策)で、一方で病床確保といいながら、病床を削る法律を推進するというのは、一体どういうことか。

 しかも、消費税をそれにあてるという。消費税を「社会保障のため」とあれだけ言ったじゃないですか。ところが「社会保障を削るため」「病院のベッドを削るため」に消費税を使う。こんな二重三重に間違ったやり方はない。

 ですから私は、病床確保と言うんだったら、病床削減を推進する法律をきっぱり廃止する。やめると。こういうことを強く求めたいと思います。岸田さん、どうですか。

 岸田氏は「地域医療の在り方の議論は、大きな議論としてこれまでもさまざまな議論が積み重ねられてきた。今回の経験も踏まえてこれからこの議論についてどうすすめていくのかはまたしっかりと考えていきたい。目の前と大きな枠組みの整理は大事だ」などと訳のわからない回答しかできませんでした。

北朝鮮問題

問題解決の方法は外交的解決しかない。その条件はある

 外交・安全保障で、伊藤氏から「北朝鮮をめぐる情勢も踏まえて、敵基地攻撃能力保有が一つの論点になっているが、どう考えるか」と問われた志位氏は次のように述べました。

 志位 北朝鮮による弾道ミサイルの発射というのは、国連安保理決議違反であって、厳しく非難されなければなりません。私たちは厳しい抗議の談話を出しました。

 ただ、敵基地攻撃という形で軍事対軍事のエスカレーションにいく動きをつくっていくのは、私たちは反対です。

 私は、この問題の解決方法は外交的解決しかない。その条件はある、ということを言いたいと思います。

 今年の5月、米韓が首脳会議を行いました。そこで2018年の南北の「板門店宣言」、そして、米朝の「シンガポール共同声明」、これらの有効性を確認して、問題解決のために、これらに基づいて、「対話と外交を進めていくことが必須」だという確認をしているんですね。この二つの宣言というのは、朝鮮半島の非核化と平和体制の構築を一体に進める。たいへん大事な合意を結んでいる。これは、トランプ政権の時に結ばれた合意ですけども、バイデン政権もこれでいくんだと言っているわけですね。

 つまり、アメリカも韓国も外交で解決しよう。ここに真剣に取り組んでいるわけですから、私は、この動きを、日本政府も国際社会も後押しして、そして外交の力で問題解決していく。この努力を最大限に傾注するべきだと思います。

 一方、岸田首相は敵基地攻撃能力の保有は「選択肢の一つ」などと述べました。

 また討論では自民党が「GDP(国内総生産)比2%以上」も念頭に「防衛関係費」の大幅な増額を目指すと公約していることも議論に。連立を組む公明党の山口那津男代表は「いきなり防衛費だけ倍増するのは国民の理解は得られない」などと発言。岸田首相も「数字ありきではない」と釈明しながらも「必要なものはしっかり用意する」などと述べました。こうした軍拡路線に対しては、社民党の福島瑞穂党首、れいわ新選組の山本太郎代表らも厳しく批判しました。

中国との向き合い方

覇権主義に対しては「国際法を守れ」という外交活動こそ

 その上で、中国との向き合い方や経済安全保障が議論になり、志位氏は次のように発言しました。

 志位 経済関係を正常な軌道にしていくといううえでも、私は、中国に対して「国際法を守れ」と正面からいう外交活動がとても大事だと思うんです。

 この間(中国は)、東シナ海、南シナ海で覇権主義をふるっています。こういうもとで、中国は「海警法」というのをつくりました。これは自分たちが「管轄海域」とするところでは、武器の使用もできるという明らかな国際法違反の法律です。ところが日本政府は国際法違反という批判をしない。わが党はそうした批判をして撤回を求めていますが、それを日本政府はやらない。その点がとても弱いと思うんですね。

 それから尖閣(諸島)の領有の歴史的、国際法上の正当性についても、もっと国際社会に発信しなくちゃいけないし、中国との関係でも相手を論破するような外交活動が必要だと(思います)。

 それはやらないでおいて軍事対軍事で対応するというのは、私は、軍拡競争の悪循環に陥ってしまう(と思う)。はっきりいえば中国の思うつぼになる。「力対力」でいけば、中国の思うつぼになります。ですから、そうじゃなくて、今言ったような外交活動によって、国際的な世論で、中国を包囲していくことが大事だと思います。

ジェンダー平等

この問題でも政権交代が必要だ

 ジェンダー平等に向けた課題にどう取り組むかの議論では、志位氏は次のように述べました。

 志位 私はこの間、党首討論で岸田さんとこの問題を議論して、ジェンダー平等の日本をつくるためには、政治を変えなくちゃいけないと痛感しております。

 例えば男女の賃金格差という問題があります。女性は男性の55%、40年働くとして生涯賃金で1億円近い格差が出てくる。

 この格差を解消するかぎは、企業に格差を把握して公表させて、「見える」ようにする。EU(欧州連合)ではやっていることです。その問題を提案しましても、岸田さんは「情報公開の対象にしません」、こういう答弁です。格差を「見える」ようにしないで、「隠し」てしまって、どうやってなくすことできるのか。

 またこの前の日本記者クラブ(主催の)の党首討論会で、選択的夫婦別姓に、賛成に手をあげなかったのは、9人の党首のうちで岸田さんだけでした。2年前に同じシーンがあって、この時も安倍(晋三首相・当時)さんだけが手をあげなかった。2回連続これに背を向けている。これをいつまで議論しているのか。ですからこの問題も解決しようと思ったら、私は、政権交代が必要だということを強く言いたいと思います。

 岸田首相は「国民がこの問題についてどれだけ理解して前向きに考えているのか。まだまだ不十分な部分もある」などと国民に責任を転嫁するような発言を行いました。

社会保障

財源は富裕層と大企業の応分の負担で

 社会保障制度をどう持続可能なものにしていくのか。伊藤氏からのこんな提起に志位氏は以下のように答えました。

 志位 あらゆる面で社会保障を良くしていかなければいけないわけですけれども、問題は財源をどこに求めるかということだと思うんですね。

 私たちはコロナのもとでも大もうけをあげている富裕層と大企業に応分の負担を求める税制改革を行うべきだと(主張しています)。

 例えば「1億円の壁」――所得1億円を超えますと逆に税負担率が下がってしまう富裕層優遇税制にメスを入れる。それから、中小企業に比べて大企業のほうが法人税の実質負担率が低い。この優遇税制にもメスを入れる。それから税率も、所得税・住民税の最高税率を65%まで引き上げる。法人税も、大企業については安倍政権が23%まで下げてしまったものを28%まで戻す。そして消費税を5%に減税する。

 こういう方向というのは、アメリカのバイデン大統領が議会演説で「1%の富裕層と米財界に公正な負担を」と(述べた)。そしてトランプ政権が21%までに下げた法人税を28%に戻そうと言っているわけですね。日本共産党とアメリカの政権の立場が一致しているわけですけれども、ぜひ日米協調で進めていくことが大事だと思っています。


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