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2021年8月27日(金)

主張

首相「明かり」発言

危機感欠如はあまりに深刻だ

 菅義偉政権が緊急事態宣言の対象を21都道府県に広げました。13都府県に拡大し期間延長を決めた17日から10日もたっていません。コロナ感染爆発に歯止めがかからず、状況が悪化していることは明白です。ところが菅首相の25日の会見では危機感が全く伝わりません。踏み込んだ対策を語らない一方、「明かりが見え始めてきている」と「明かり」を3度も口にしました。重症化しても入院できず、自宅で亡くなる人が後を絶たない重大事態に不安を募らせる国民の実感とあまりにかけ離れています。現実を直視せず、楽観論を振りまく首相の責任は重大です。

国民の実感と大きな落差

 首相会見と同じ日、政府のコロナ対策に助言する専門家会合が開かれ、強い警告が出されました。「重症者数も急激に増加し、過去最大の規模となり、死亡者数も増加傾向」「公衆衛生体制・医療提供体制が首都圏だけではなく他の地域でも非常に厳しくなっており、災害時の状況に近い局面が継続」という指摘です。今後の見通しと対策では「これまでにない災害レベルの状況にあるとの認識での対応」を強調し、「命を守るために必要な行動を」と、かつてない表現で対策の強化を訴えました。

 ところが首相会見にはそんな切迫感はなく、「災害レベル」との表現もありません。首相の言葉が国民に届いていないことの認識を記者にただされても、「しっかり受け止めて真摯(しんし)に対応していきたい」と原稿の棒読みです。医療体制確保やワクチン接種の推進を力説しましたが、危機的状況に見合っていません。自宅療養者を放置せず安全な医療につなげるために、医師会や専門家が求める「臨時の医療施設」の大増設・確保を急ぐ姿勢も不明確です。医療機関が不足している場合、コロナ対策の特別措置法で国などに臨時施設の提供を義務付けている施策の具体化こそ早急に進めるべきです。

 ワクチン接種などの「効果」を一面的に強調し、「明かりははっきりと見え始めています」と繰り返したことは、あまりにずれた認識です。ワクチン接種が進んでも変異したデルタ株の猛威に、世界中が苦闘しています。

 日本も高齢者の感染や高齢者施設のクラスターは増えており、先の専門家会合は「ワクチンを接種した方も含め、市民は、自分や家族を守るためにも外出はなるべく避けて」と戒めています。首相の楽観論は危険です。

 菅政権の大失政の結果、感染爆発の危険のただ中に置かれた国民に「明かり」などどこにも見えません。長期化する緊急事態宣言で営業自粛に苦しむ飲食業者への持続化給付金の再支給に首相は応じません。国民の命と暮らしを守るための役割を果たさず、根拠のない希望的観測を振りまく首相は無責任と言う他ありません。

臨時国会を直ちに開け

 政府コロナ分科会の尾身茂会長は25日の国会審議で「専門家の分析より、やや楽観的な状況分析をされたのでないか」と政府に苦言を呈しました。緊急事態宣言下に東京五輪開催という矛盾したメッセージを出して感染を急拡大させたことを反省し、パラリンピックを中止すべきです。菅政権の間違った姿勢をただし、コロナ対策を転換するために臨時国会を召集することが急務となっています。


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