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2021年7月15日(木)

五輪バス乗務員「怖い」

宿泊施設の感染対策ずさん

 東京五輪・パラリンピックの大会関係者を輸送するバスの乗務員が、新型コロナウイルス感染対策のずさんな施設で宿泊を強いられていることが14日までに分かりました。本紙の取材に応じた関係者は「東京に来る前にワクチン接種もできなかった乗務員もいる。感染者が出たら全員アウトだ」と怒りをぶつけました。(遠藤寿人)


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(写真)朝の混雑時は廊下に列ができる洗面所(提供写真)

 宿泊場所は五輪組織委員会が借用している「国立オリンピック記念青少年総合センター」(渋谷区)内のA、B、C棟など。A棟(定員500人)は20~30の部屋が一つのユニット(まとまり)です。各部屋(6畳)にはシングルベッドがあるだけ。ユニット内でトイレ、洗面所、シャワーが各二つずつ共用となっています。

 乗務員に配られた小冊子には感染対策として「三密を避ける」などが列記されていますが、朝は洗面所もトイレも行列ができます。ひげをそる人、髪を染める人…。この関係者は「密になるので廊下で並ぶ。あきらめて違うユニットに行く人もいる」といいます。

 お風呂は浴槽が使えずシャワー二つだけ。足ふきマットがいつもびしょびしょ。タオル類やシーツの交換は5日ごとです。コインランドリーがない棟があり、みんな別の棟に行きます。関係者は「いつ行っても誰かが使っていて、いまだに自分のものは洗えていない」と話します。

 ある乗務員はワクチン接種を申し込みましたが、ワクチンの不足で打てなかったといいます。

 この関係者は訴えます。「感染対策は全然なっていない。換気もしていないし、手洗いといったって消毒液があるぐらい。施設の中ではみんなマスクを外している。お風呂とトイレ、洗面所は部屋にないと感染者が出ると思う。エレベーターに乗るのも怖い」

バス乗務員の悲鳴

風呂なくシャワーは満員

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(写真)五輪選手村の警備ゲートに入り、入場のチェックを受ける大型バス=13日、東京都中央区

 「みんなとんでもないところに来たと驚いている」。東京五輪・パラリンピックの関係者はいいます。バス乗務員は全国から集められ、延べ8・1万人が必要とされています。バスは広島、岡山、山口、福井、鳥取、新潟、福島など全国から800台近くあります。

 宿泊先の一つ、国立オリンピック記念青少年総合センターでは、宿泊者から不満の声が上がっています。

自費で弁当買い

 「働きに来たのにお金を使いに来ているのと一緒」。センターの周辺は明治神宮と住宅街。食事ができる店は限られています。それでいて食事が3食ついておらず、自費で食べるしかありません。必然的にコンビニ弁当やおにぎりに。コインランドリーが少ないため、靴下や下着、ワイシャツなども替えがなくなったら買わないといけないといいます。

 取材に応じた関係者は「コンビニ弁当しか食べていないですね。まだ始まったばかりで元気はありますが疲れが出てくる。宿舎に帰っても風呂ではなくシャワーです。すぐ浴びれたらいいけど二つしかないから順番待ち。並ばないといけない。五輪が終わるまでもつだろうか」と不安をのぞかせます。

 宿泊先の一つの棟に1カ所しかない共用スペース。一つの部屋を開放して電子レンジ、冷蔵庫、湯沸かしポットが3個ずつ置かれています。みんな一斉に使うので常時お湯が足りない状態です。「ポット、冷蔵庫、電子レンジの、みんなが触る開閉部は触る気になりません」といいます。

 バスにはメディア輸送の業務もあります。海外メディアの人たちを輸送します。まず宿泊先からバスの駐車場(築地、若洲、葛西)へ行き、メディアセンター(有明)からメディアが泊まるホテル、メディアセンター、競技会場間を送迎します。

ワクチン打たず

 運転中はマスクに手袋をして、運転席がパーティションで仕切られています。しかし、各国のメディアの人たちが運転席を横切る際、ハローとかサンキューとか声を掛けたら、顔を向けて返す必要があります。

 その時、飛沫(ひまつ)を浴びる可能性があるため、ワクチンを打ってほしいと会社側に頼んだ運転手もいました。会社側は優先接種を打診しましたが駄目でした。「ワクチンを打っていないから怖い。こんな施設は嫌だ」と怒って帰った乗務員もいたといいます。

 この関係者は「クラスター(感染者集団)を発生させないために宿泊施設をユニットに区切っていると会社から説明を受けていました。感染者が出たら、同じユニットに宿泊している乗務員を濃厚接触者扱いにし、稼働できなくなる人を最小限のワンユニットで抑えたいのでしょう。でも他の棟の人たちも行き来しています。実際に来てみて『ユニットに区切る』というのがうそであることが分かりました。感染者が出たら全員アウトでしょう」と諦め顔で話しました。


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