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2022年3月20日(日)

主張

経済安保法案

統制強め軍事研究加速の危険

 岸田文雄内閣が国会に提出した経済安全保障推進法案が17日、衆院で審議入りしました。日本の経済活動を脅かす行為を未然に防ぐと言います。しかし「経済安全保障」の定義は示さずに、経済や科学技術の国家統制を強めます。巨額の予算を投じて軍事技術の開発も推進します。戦争放棄を定めた憲法と相いれません。

定義なく運用は白紙委任

 法案は(1)供給網の強靱(きょうじん)化(2)基幹インフラの安全確保(3)官民技術協力(4)機微な技術の特許非公開―の四つの柱から成ります。政省令に委ねられた事項は124カ所にも及び、実際の運用はほとんど政府に白紙委任されています。

 海外依存度の高い物資を「特定重要物資」に指定し、企業秘密であるはずの供給網について報告させます。

 基幹インフラを担う企業は、指定を受ければ、設備や業務委託について事前の届け出を義務づけられ、場合によっては業務内容の変更を命じられます。下請けや取引先まで監視を受けることになりかねません。

 対象となる業種は電気、ガス、金融、放送など14の分野に及びます。サイバー攻撃の防止を想定していると言われますが、法案には何が妨害行為にあたるかは書かれていません。ここでも恣意(しい)的運用が可能です。

 統制強化の一方、特定重要物資を扱う企業には助成金などの支援が与えられます。岸田政権は昨年、日本に工場を新設する台湾の大手半導体メーカー、TSMCに5000億円という破格の助成金を決めました。特定企業への国費投入が横行しかねません。

 官民技術協力では「特定重要技術」を指定し、政府と大企業が一体で軍民両用技術の開発を進めます。対象とされているのは宇宙、海洋、量子、AI(人工知能)などの先端技術です。

 15年には防衛装備庁が軍民両用技術の研究開発を支援する制度が発足し、年間約100億円の予算が支出されています。経済安保法案は政府が前面に出てこの分野の研究をさらに加速します。

 軍事に役立つ研究の推進と同時に特許制度に統制を加えます。公開すれば国の安全を損なうと判断した発明を非公開とします。戦前、軍と産業界が一体となって軍事技術を開発したことへの反省から日本の特許法は公開が原則です。秘密特許の復活は許されません。

 法案は特定重要技術の研究のために機微情報の管理や守秘義務を規定しています。学術分野の管理強化や非公開が研究や産業活動を制約することになりかねません。

日米同盟に組み込む狙い

 もともと「経済安全保障」は日米安保体制強化の一環です。1月7日の日米安全保障協議委員会は中国を念頭に「同盟が技術的優位性を確保するための共同の投資」に合意しました。同月21日の日米首脳会談は、経済安全保障での連携を確認し、閣僚レベルでの経済協議体の設置に合意しました。岸田政権はいま見直しを進めている国家安全保障戦略の中に経済安保も組み込もうとしています。

 経済や科学技術を軍事目的で統制することは戦前の日本がたどった道です。これを繰り返してはなりません。憲法9条に基づいて世界平和の実現に貢献することこそ追求すべきです。


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