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2022年3月10日(木)

主張

空襲被害者の救済

生涯にわたる苦しみ直視せよ

 1945年3月10日未明の東京大空襲は、一夜で約10万人の命を奪いました。米軍の無差別爆撃は名古屋、大阪、神戸など各地に拡大され、多くの市街地は焦土と化しました。ロシア・プーチン政権のウクライナ侵略で街が破壊され、子どもを含む多くの市民が殺されています。日本の空襲被害者は、この惨状を77年前の自らの体験と重ね胸が張り裂ける思いです。親やきょうだいを殺され、体や心に負った深い傷は生涯癒えることがありません。日本政府は民間の空襲被害者の苦しみを直視し補償に踏み切るべきです。

自分と重なる恐怖と不安

 全国空襲被害者連絡協議会(空襲連)は、ロシアの侵略開始直後、「ウクライナ市民の苦しみは私たち自身のもの」だと談話を発表し、軍の撤退を求めました。清水市(現静岡市)で米軍の焼夷弾(しょういだん)攻撃を受けた石川雅一さん(86)は「おまえだけ先に逃げなさい」と母に促され、火の海を逃げました。家の防空壕(ごう)に身を寄せた他の家族全員は、近くの変電所に落とされた焼夷弾で焼き殺されました。「ウクライナで防空壕に避難している家族の映像を見ると、自分の体験を思い出す」と話します。

 東京大空襲で両親と生後3カ月の妹を殺され、孤児になった共同代表の吉田由美子さん(80)は「ウクライナの子どもの不安と恐怖に満ちた目は、当時の自分たちと重なり、胸が痛い。罪のない人たちがこんなひどい目に遭うことを絶対に許したくない」と強調します。

 空襲連は3日、国会の議員会館で集会を開き、開会中の国会での救済法の成立を求めました。超党派の議員連盟がまとめた法案は、心身に障害を負った民間被害者への一時金支給や、被害の実態調査を盛り込んでいます。

 鹿児島の空襲で左足を奪われた安野輝子さん(82)は集会の動画メッセージで「酷使してきた右足がもう歩けないと悲鳴を上げています」と述べ、長生きは苦しみが続くことだと訴えました。そして「国民の命と暮らしを守るのが私の仕事」と繰り返す岸田文雄首相に対し「早くその言葉を守っていただきたい。私たちには時間がありません」と求めました。

 民間空襲被害者は戦後、「戦争を二度と起こさせない。同じ苦しみを誰にも味わわせない」と願い活動してきました。救済法制定を求めているのは、政府が過去の侵略戦争を反省し、再び戦争の道に進ませない証しにするためです。

 日本は31年の中国東北部への侵略、37年の日中全面戦争、41年のアジア・太平洋戦争の開戦と戦線を拡大しました。日本の起こした侵略戦争が各地で一般市民を巻き込み、アジア諸国民と日本国民に甚大な犠牲と被害を与えたのは動かせない歴史の事実です。しかし、国は「戦争被害は等しく受忍すべきだ」などと責任を認めず、謝罪も補償も放置してきました。元軍人・軍属と遺族には補償を続ける一方、民間被害者を救済しないことも全く道理がありません。

憲法9条を持つ国として

 民間空襲被害者への謝罪と補償は、政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こさないと決意した憲法の精神に合致したものです。9条を持つ国として、岸田政権に求められるのは、過去の過ちに正面から向き合った被害の救済です。先延ばしは許されません。


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