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2022年3月10日(木)

強制的契約解除や手数料減額

損保大手の横暴正す

代理店の声聞き質問10回 大門議員

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 火災保険や自動車保険を扱う大手損害保険会社は、保険契約締結業務を委託する中小の損害保険代理店に対し、一方的な手数料減額や強制的な契約解除などの横暴を繰り返してきました。立場の弱い損保代理店の話に耳を傾け、国会で10回の質問を重ねて損保会社側の対応を改めさせてきたのが、日本共産党の大門実紀史参院議員です。

 「危機的状況だったとき、偶然のつながりで大門議員に助けてもらいました。議員を頼るなんて考えもしなかった。幸運でした」

 損保代理店を営む上田直弘さん(仮名)は損保最大手の東京海上日動火災保険から廃業を求められたことがあります。きっかけは、保険契約の解約をめぐって顧客が誤解に基づく苦情を訴えたことです。東京海上日動の支店は即刻廃業を迫り、1週間以内に結論を出すよう求めました。中小代理店の統廃合をめざす本社の方針が背景にありました。

 「4人の弁護士と会いましたが、損保代理店の実情を知る人がいません。たまたま加入した大阪損保革新懇を思い出し、相談してみたのです。すると大門議員につないでくれ、事態が急転しました。国会で何度も質問している大門議員の働きかけだったから、対応が早かったのでしょう」

 民間と民間の契約には口出ししないというのが金融庁の基本的姿勢です。しかし「さすがにひどすぎる」と大門議員が金融庁に事情を伝えた後、東京海上日動本社は聞き取り調査を行って支店の誤りを認め、早期廃業要求を撤回しました。

 2020年頃には、福岡県の多数の損保代理店が東京海上日動支社から期限を区切った統廃合を迫られました。大阪損保革新懇を通じて当事者から相談を受けた大門議員は金融庁に事情を伝えます。東京海上日動本社が調査に乗り出し、一定の是正措置をとりました。

大門議員は「駆け込み寺」

ある損保社内では名前が飛び交った…

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(写真)大阪損保革新懇が開いた「損保代理店シンポジウム」で発言する大門実紀史参院議員=2020年10月23日、大阪市内

 「ダイヤモンド・オンライン」(2021年5月14日付)は「中小の損保プロ(専業)代理店の“駆け込み寺”と化した日本共産党の大門実紀史・参議院議員」と報道。同誌の取材に応じた東京海上日動の広瀬伸一社長は「確かに行き過ぎた対応になってしまった部分がありました。そこについては、きちんと再発防止を図らなければなりません」と述べました。

 損保会社の社員・元社員が結成した大阪損保革新懇は08年、代理店の苦難軽減に取り組む「損保代理店プロジェクト」を立ち上げました。同革新懇の世話人を務める松浦章さん(兵庫県立大学客員研究員・経済学博士)が国会議員らに情報を持ち込みました。

 「複雑な事柄でも『大事な問題です』と応じて熱心に取り上げてくれたのが大門議員でした。『味方をたくさんつくる』方針で自民党議員とも連携し、超党派の取り組みにしてくれました。『この問題なら大門議員だ』という口コミが全国に広がり、大門議員事務所は損保代理店の相談所のようになったのです」

手数料の減額

 損保代理店は、損保会社の代理人として顧客と保険契約を結びます。顧客の事故通知を受け付けて保険会社に報告し、保険金請求手続きを援助する役割も担います。損害保険契約の90・9%(20年度)を扱い、損害保険の普及に貢献してきた代理店なしに、損保会社は成り立ちません。

 「損保各社は表向き、ビジネスパートナーである代理店とともに繁栄を図るといいます。しかし実際には代理店を『単なるコスト』と見て淘汰(とうた)する動きを強めてきました」と松浦さんは話します。最大の問題が03年に始まった代理店手数料ポイント制度です。

 損保各社が代理店に支払う手数料は従来、一定の基準を満たす代理店であれば一律でした。ところがポイント制度が導入されると、例えば60ポイントの代理店は従来の60%へ、手数料が減額されました。最小20から最大125まで6倍もの格差があるポイントの算定基準を、損保各社が一方的に決めます。代理店の規模が大きくなければ、また毎年増収にならなければ、ポイントが上がりません。

 大門氏が最初に国会で取り上げたのがポイント制度でした。新潟県で起きた大規模火災の際に損保代理店が迅速に対応して被災者を助けた事例を紹介し、「地域のセーフティーネットの役割を果たしている」と強調。「頑張る代理店がポイント制度のために苦しい目にあっている。実情をまず把握してほしい」(17年3月22日、参院財政金融委員会)と訴えたのです。

 大門氏の質問を受けて金融庁は、損保会社6社と全国の代理店から聞き取りを行いました。その上で、損保各社が加盟する日本損害保険協会に「見解」を示し、「顧客対応等の業務品質の評価についてのポイントはわずかで、規模・増収がポイント決定の中心的な要因となっている」と、問題点を指摘しました。

契約書を是正

 大門氏の質問が是正の突破口を開いた事例はこれにとどまりません。一つの損保会社の商品を扱う専属代理店が複数の会社の商品を扱う乗り合い代理店に移行しようとすると、損保会社側が脅して断念させるという対応が横行していました。大門氏は一方的に契約を解除された代理店の例も示し、「こんなことを放置していいとは到底思えない」(17年6月8日、同委員会)と質問。金融庁が指導を行い、損害保険ジャパンと三井住友海上火災保険は一方的な乗り合い拒否を禁止する通達を現場に出しました。

 損保会社側が契約を一方的に解除する根拠としてきた委託契約書の文言も是正されました。損保各社が代理店と結ぶ委託契約書には「信頼関係が著しく損なわれた」なら「何時でも本契約を解除することができる」といった文言がありました。大門氏は、これが「現場では非常に恣意(しい)的に使われている」(19年11月7日、同委員会)と批判。損保各社は20年4月に契約書を改定し、一斉にこの文言を削除しました。

 松浦さんは話します。「事実を示し道理を説いた国会質問に、大手損保はぐうの音も出ませんでした。当時、ある損保会社内では大門議員の名前が飛び交ったと聞きます。優越的地位を乱用してやりたい放題だった損保会社の手足を縛ってきたのは大門議員の質問だと、経過を知る誰もが理解しています。本丸の手数料ポイント制度は損保会社の収益源ですから、抵抗が強い。中小代理店に統廃合を押し付ける動きも続いています。大門議員の頑張りと結んで運動を広げ、抜本的な改善を勝ち取る決意です」

 (杉本恒如)


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