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2022年3月1日(火)

ロシア覇権主義への屈従

日本の対ロ外交 見直せ

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日ロ領土問題をめぐる主な動き
1875年 樺太・千島交換条約で日ロの国境が画定
1917年 ロシア革命
1922年 ソ連が成立
1945年 ヤルタ協定に基づき、ソ連が千島全域を軍事占領
1951年 サンフランシスコ平和条約で日本は千島を放棄
1956年 日ソ共同宣言で国交回復。日本は「4島返還」を打ち出す
1973年 田中角栄首相が訪ソ、日ソ共同声明を発表
1991年 ソ連が崩壊。領土問題はロシアに引き継がれる
2018年 日ロ首脳会談で日本が事実上、「2島返還」に後退
2020年 ロシア憲法改定、「領土割譲禁止」を盛り込む

 「プーチンとしては領土的野心ということではなくて、いわばロシアの防衛、権益の防衛、安全の確保という観点から、行動を起こしているということだろうと思う」。ロシアによるウクライナ侵略に対して、世界各国が団結して「侵略やめよ」と立ち上がっている中、安倍晋三元首相は27日のフジテレビ番組でこう述べ、プーチン大統領を露骨に擁護しました。安倍氏の発言は、自国の領土を不当に奪われながら、戦後一貫してロシアの覇権主義に対する屈従外交を続けてきた日本政府の姿勢を如実に表したものです。

領土交渉行き詰まり

 日本国民は既に、ロシアの「力による現状変更」の犠牲になっています。「領土不拡大」という第2次世界大戦の戦後処理の大原則を踏みにじり、当時のソ連の指導者スターリンが米英とのヤルタ協定(1945年2月)で「千島引き渡し」を決め、それに沿って同年8月、ソ連軍が千島などを占拠、住民を追い出し一方的に自国領として編入しました。

 国後、択捉はもちろん、千島列島全体が1875年のロシアとの「樺太・千島交換条約」で平和的に確定した歴史的な日本領です。

 ところが日本は、サンフランシスコ平和条約(1951年)で、千島列島に対する「すべての権利、権原および請求権を放棄」を宣言。その後、“国後と択捉は千島ではない”と言い出し、この2島と、北海道の一部である歯舞、色丹をまぜ合わせ「北方領土」とし、4島だけの返還を求めるという、国際法上も通用しない論理にたったため、領土交渉は完全に行き詰まりました。

安倍政権のすり寄り

 その“打開”のため、第2次安倍政権がとってきたのは、プーチン大統領との個人的な“信頼関係”を築くための徹底的な“すり寄り”路線です。

 2014年2月のソチ冬季五輪。ロシア国内の人権問題を理由に各国首脳が参加を見合わせる中、安倍首相(当時)は出席。さらに同年3月、ロシアがウクライナの一部であるクリミア地域を一方的に併合し、世界中が非難の声を上げる中、安倍氏は「すべての当事者に対し、自制と責任をもって慎重に行動するよう求める」と述べ、ロシアの責任をあいまいにしました。岸田文雄外相(当時)は「(ロシアのウクライナ併合が)侵略にあたるかの判断にいたっていない」(同年3月12日、衆院外務委員会)と述べ、「侵略行為」との言明を避けたのです。制裁措置も欧米各国と比べて甘いものでした。

 こうした屈従ぶりはさらに加速します。18年に英国でロシアの元スパイと娘が毒殺未遂に遭った時、G7(主要7カ国)で制裁を発動しなかったのは日本だけでした。

 そして同年11月の日ロ首脳会談で、安倍氏は、平和条約締結後に歯舞、色丹を引き渡すとした1956年の「日ソ共同宣言を基礎とする」と表明。従来の「4島返還」さえ投げ捨て、「2島返還」論に大後退しました。ロシア側を刺激すまいとして「北方領土」は「固有の領土」であるとの表現を封印するという屈辱的な対応まで取りました。

 しかし、プーチン氏は領土問題で多少なりとも譲歩に応じるどころか、強権ぶりをさらに強めてきました。20年7月のロシア憲法改定で、「領土割譲禁止」を明記。千島占領は「領土不拡大」という第2次世界大戦後の原則に反しているのに、プーチン氏は「大戦の結果として受け入れろ」と迫るにいたりました。

 安倍氏はプーチン氏と30回近い首脳会談を行ったことを自らの実績として誇示していますが、その屈従路線の破綻は誰の目にも明らかです。

立場を継ぐ岸田政権

 今回のウクライナ侵略を岸田文雄首相は「侵略」だと明言。「力による一方的な現状変更の試みであり、国際秩序の根幹を揺るがす行為です。明白な国際法違反であり、断じて許すことはできない」と表明し、各国と協調して厳しい制裁を科すことを表明しました。(27日の記者会見)

 岸田氏は一方で、領土問題を含むロシアとの平和条約交渉については「今は申し上げられない」と明言を避けました。岸田政権も、安倍政権が敷いた「2島返還」論、「固有の領土」封印の立場を引き継ぎ、「北方4島」での共同経済活動も継続しています。

 ロシアによる一方的な「力による現状変更」を東アジアに波及させないためにも、日本政府はこれまでの対ロ外交が誤りだったことを明確に認め、道理に立った交渉を進める立場への根本的な転換が求められます。

どんな大国の横暴も許さない

日本共産党は一貫

 日本共産党は、他国の主権を侵害するどんな大国の横暴・覇権主義も許さない政党です。日ロ間の領土問題では「日本の歴史的領土である千島列島と歯舞群島・色丹島の返還をめざす」(綱領)との立場で、1875年の千島・樺太交換条約で千島列島全体が日本の領土だと画定していることを基礎に、国際的な道理に立った交渉こそが必要だと一貫して主張しています。

 2014年にロシアがウクライナの領土であるクリミアとセバストポリの併合を強行したとき、日本共産党は国連憲章、国際法に反した侵略行為そのものと断じ、併合の撤回、ロシア軍の介入の中止とウクライナの主権尊重を求めました。「力による現状変更は認められない」としか口にしない安倍晋三首相(当時)に対し、侵略を認定しロシアに対する撤回を求めるよう迫りました。また2008年にロシアがグルジア(現ジョージア)の一部の「独立」を一方的に承認し軍事侵攻したときも、国連憲章、国際法に違反する行動だとしてロシアの覇権主義的行動を厳しく批判しました。

 今回の事態でも、ロシアによる軍事的威嚇、ウクライナ東部地域の「独立」承認、ロシアの軍事侵攻と侵略の開始のそれぞれの段階で志位和夫委員長が談話と緊急声明を発表し、問題点を明らかにしロシアを厳しく批判してきました。


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