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2022年2月4日(金)

主張

佐渡金山の推薦

歴史の事実直視し誤り認めよ

 岸田文雄政権は新潟県の「佐渡島(さど)の金山」を世界文化遺産の候補として国連教育科学文化機関(ユネスコ)に推薦することを閣議了解し、推薦書をユネスコに提出しました。韓国は、朝鮮半島出身者が戦時中に強制労働させられた現場だとして世界遺産への登録に反対しています。強制労働は歴史的事実です。推薦した以上、世界平和のために知的連帯をつくるというユネスコの理念に沿って政府が歴史に誠実に向き合い、強制労働の誤りを認める必要があります。

強制労働は否定できない

 ユネスコは第2次大戦後、二度と戦争を起こさないために「人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」(憲章前文)との決意を込めて設立されました。憲章は、平和が「人類の知的および精神的連帯の上に築かれなければならない」と明記しています。

 この理念に基づいて1972年に世界遺産条約が採択され、人類に普遍的価値を持つ遺跡や自然を未来に引き継ぐことが定められました。登録推薦物について調査、勧告する国際記念物遺跡会議(ICOMOS)は、社会、文化、歴史、自然の背景を広く考慮することを原則としています。

 佐渡金山は1601年に開かれたと伝えられ、江戸時代、幕府の直轄下で採掘されました。1989年、資源が枯渇して閉山するまで大量の金銀を産出し、近代日本の産業にも重要な役割を果たしました。推薦に値する遺跡と考えられます。

 ただ、ユネスコの理念と世界遺産の趣旨を踏まえるなら、負の歴史を含めた検討を避けるわけにはいきません。政府・自民党の中には、江戸時代に限った推薦であり、戦時中の朝鮮人の労働と無関係との主張があります。通用しない言い分です。

 戦時中、朝鮮半島は日本の植民地支配下にありました。アジア・太平洋戦争末期に佐渡金山で朝鮮人の強制労働が行われたことは、新潟県史や地元自治体の町史に記述された否定できない事実です。

 2015年に長崎県の軍艦島を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界遺産に登録された際、日本政府は、戦時の朝鮮人強制労働を含めて「犠牲者を記憶にとどめる措置をとる」とユネスコ世界遺産委員会で表明しました。

 しかし日本は実行を怠っています。昨年の委員会では日本に「強い遺憾の意」を示し、適切な措置をとるよう求める決定が採択されています。政府はこうした態度を改め、戦時の朝鮮人強制労働の事実を認め、国際的約束を果たすべきです。

「歴史戦」と称す誤り

 安倍晋三元首相が「いまこそ、新たな『歴史戦チーム』を立ち上げて、日本の誇りと名誉を守り抜いてほしい」(1月27日付「夕刊フジ」インタビュー)と主張しています。岸田首相は1日、内閣官房、外務省、文部科学省から成るタスクフォース(作業部会)を立ち上げました。「正しい歴史認識」の形成や「いわれなき中傷」への対応を掲げています。

 「歴史戦」と称し、侵略戦争や植民地支配、それに伴う人権侵害を否定する立場から歴史を改ざんし、それを認めない相手を攻撃することは根本的に間違っています。偽りを世界に広め、日本が孤立する道を歩んではなりません。


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