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2022年1月6日(木)

憲法改悪を許さない

全国署名 推進Q&A

 9条改憲に前のめりになる岸田内閣。危険な新局面を迎えています。「9条改憲NO! 全国市民アクション」がよびかけた「憲法改悪を許さない 全国署名」を草の根で進め、世論と運動でストップさせましょう。署名を推進するために、「Q&A」で考えてみました。


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(写真)改憲反対の署名に応じる市民=2021年2月9日、東京都新宿区

Q 「憲法改悪を許さない 全国署名」はなぜ提起されたのですか。

 A 安倍政権以来の改憲策動の「再起動」という新たな局面を迎えているからです。署名は、日米軍事同盟強化の方向での改憲に反対する世論を広げるために提起されました。

 昨年10月の総選挙の結果、自民、公明が衆院で安定多数を確保したのに加え日本維新の会などの改憲勢力が議席を伸ばし、改憲勢力が改憲発議に必要な3分の2を超える議席を得ました。

 岸田文雄首相は、昨年9月の自民党総裁選のときから「任期中の改憲」を繰り返し公言。総選挙での自民党公約も「早期の憲法改正」を掲げました。敵基地攻撃能力の保有や大軍拡にも前のめりで、「台湾有事」における「安保法制の発動」も安倍晋三元首相を先頭に繰り返し主張されています。

 選挙の結果を受け、維新が「来年の参院選挙と同日で改憲の国民投票実施」を迫るなど、改憲の突撃隊としての動きを強める一方、自民党は党の憲法改正推進本部を「実現本部」に改称。同本部内に国民運動委員会を設置し世論形成の強化を打ち出しています。

 また、野党の国民民主党が憲法審査会の開催、改憲論議の継続に賛同を示したことから、昨年12月の臨時国会では、予算委員会の開催中に衆院憲法審査会が開催される異例の動きとなりました。

 自民党は改憲4項目として(1)憲法9条への自衛隊の明記(2)緊急事態条項の創設(3)参院選の合区解消(4)教育の充実をあげています。

Q 「自衛隊を憲法に書き込む」とは何を意味しますか。

 A 改憲の最大の狙いは9条です。自衛隊が憲法に書き込まれれば、世界のどこにでも出かけて無制限の武力行使が可能になります。

 世界有数の戦力である自衛隊ですが、憲法9条2項の「戦力不保持」に「違反」しないとされてきました。その理由は、自衛隊の武力行使は日本に対する攻撃の排除にだけ許され、海外派兵や集団的自衛権の行使などはできないとされたことです。自衛隊は世界標準の「戦力=軍隊」ではなく「必要最小限度の実力」などと説明してきました。

 ところが、自民党の自衛隊明記案ではどうなるか。自衛隊が憲法上の存在に格上げされたら、これまでの制約はなくなります。さらに自民党案では「国および国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとる」と明記されています。

 「自衛の措置をとる」とは「自衛権」そのもの。個別的自衛権と他国を守る集団的自衛権の両方を含みます。自衛隊は世界の軍隊と同じ権限を持つ「普通の軍隊」になります。

 さらに、自衛隊明記の条文には念入りに「前条の規定(9条2項)は…必要な自衛の措置をとることを妨げず」と書かれています。

 「9条2項」の戦力不保持規定は残っているが「自衛の措置」を「妨げず」―。つまり9条2項は、自衛権の行使の障害にならないというのです。

 9条2項は空洞化し、無制限の海外での武力行使が可能になります。

Q 緊急事態条項とはどのようなものですか。

 A 緊急事態条項とは「緊急」を口実に権力を内閣に集中し独裁制を実現するもので現代の「戒厳令」です。9条改憲と一体で有事において内閣による人権制限「立法」も可能になります。

 戦前の大日本帝国憲法には、緊急勅令(8条)、戒厳大権(14条)、非常大権(31条)、緊急時の財政処分(70条)という四つもの緊急事態条項が置かれました。天皇制政府の独裁的な権力行使によって、国民を破滅的な戦争へと駆り立てた基盤でした。

 自民党の改憲4項目では、「大地震その他の異常かつ大規模な災害」の場合で「国会による法律の制定を待ついとまがない」とき、「内閣は…政令を制定」できるとしています。この政令は「法律と同じ効力を持つ」とされ、立法権を政府が独占します。

 「大地震その他の異常かつ大規模な災害」には「外部からの武力攻撃」「テロ」など人的災害も入り得ます。具体的には法律で定めますが、軍事的緊急事態の可能性を否定できません。政府が戦争状態だと判断すれば、国会を開かずに政府が人権制限の権力を独占するのです。

 自民党はコロナ危機を「理由」に緊急事態条項の創設を主張します。しかし、失政の理由は緊急事態条項がないからではありません。逆行・無策でコロナ失政を続けたのは自民党自身の責任です。憲法を無視して国会を開かず失政を続けてきた自民党が、国会を開かず何でも決められる権限を欲しがるのは恐ろしいことです。

Q 岸田政権は「敵基地攻撃能力」といいますが。

 A 岸田政権は、歴代政権ではじめて「敵基地攻撃能力」の検討を言い出しました。これは、相手国の領域まで乗り込んで、ミサイル基地をしらみつぶしに攻撃し、地下施設も含めて大規模に破壊するというものです。先制攻撃そのもので、相手国の反撃をよび、全面戦争に発展しかねないきわめて危険な道です。

 岸田政権は、この構想のために、膨大な軍事費を計上し、長距離巡航ミサイル、F35戦闘機の配備、空母への改修などの攻撃型兵器を備えるという際限のない大軍拡を進めています。こうした動きは、相手国にも軍事力を高める口実を与え、周辺国のあいだにも疑念を広げ、この地域に極度の緊張をもたらします。

 憲法からの逸脱は、日本国民の暮らしと安全を危機にさらす許されない行為です。「敵基地攻撃能力」の保有は断念し、軍拡競争の悪循環を断ち切り、平和憲法をいかした外交交渉の力を発揮すべきです。

Q 「憲法を生かす」とはどういう意味ですか。

 A 日本国憲法は平和の「9条」だけでなく、世界の先進ともいえる条文がたくさんあり、これを生かす政治が、いま求められています。

 憲法第13条は「すべて国民は、個人として尊重される」としています。国民のさまざまな個性、生き方、LGBT(性的少数者)などの権利を擁護、尊重する社会をつくることが大切です。第14条は、国民は「法の下に平等」だと決めています。生涯で1億円もの格差がある男女の賃金差別など、不平等の是正は急務です。第25条は「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を規定していますが、自民党政府は、命ないがしろの「コロナ対策」、福祉、医療切り捨てをすすめてきました。憲法に素晴らしい条項があるのに、これに逆行する自民党政治を切り替えることこそ必要です。

 また、自民党は、「総議員の4分の1以上」が求めれば臨時国会を開かなければならない(第53条)との規定にもとづき、野党がコロナ対策、その他で国会開催を要求しても、無視し開かない態度をとってきました。こうした憲法違反は、絶対に許してはなりません。

Q 「9条を守る」といいますが、中国は脅威ではないですか。

 A 尖閣諸島への領海侵犯や台湾への軍事威嚇など、中国の行動は大問題であり、許されません。重要なのは、こうした中国の行動が国連憲章や国連海洋法条約など国際法に違反しているという外交的な批判によって中国を包囲していくことです。

 米国や日本の軍事的対応を強化する立場では、軍事対軍事の動きの悪循環を招き、さらには、偶発的な衝突から戦争への破局的な事態をもたらしかねません。だからこそ9条を守ることが切実に求められているのです。必要なのは、軍事対決型ではなく、中国を含む安全保障の枠組みをつくりだす努力です。

 東南アジア諸国連合(ASEAN)10カ国は、域外の中国、米国や日本など8カ国が参加する「東アジアサミット」を設け、毎年首脳会議を開催し、この地域の平和の枠組みとして発展しています。紛争を戦争にさせないこと、そのために話し合いで問題の解決をはかるという原則にたった外交の場になっており、これを発展させて東アジアを「平和と協力」の地域にしていく―憲法9条をいかした平和外交こそ、日本に求められています。

Q 憲法審査会での議論は必要ないのですか。

NHK調査のグラフ

 A 日本共産党は、国会の予算委員会をはじめあらゆる機会に、憲法を守り生かす政治をどう実現するかという議論を積極的に行ってきました。野党が憲法の議論をしていないという攻撃は、的外れです。

 同時に、憲法審査会は動かす必要がないとの立場です。それは、憲法審査会は、たんに憲法問題を議論する場所ではなく、国会で唯一、憲法改正原案を発議、提出する権限を持った審査会だからです。世論調査を見ても、国民は憲法改正を望んでいません(NHK調査のグラフ)。安倍元首相自身、退陣の記者会見で(改憲の)「国民世論が盛り上がらなかった」と認めています。

 自民党などが「憲法審査会での議論」を要求するのは、国民が望まない改憲発議に道を開くためであり、認められません。

Q 改憲を食い止める道は。

 A 国民の世論と運動、市民と野党の共闘は、これまでも安倍元首相を先頭に執念を燃やしてきた憲法改悪を許してきませんでした。安倍氏が2017年5月に、オリンピックの年までに改憲を実現すると宣言した際には、「9条改憲NO! 全国市民アクション」が立ち上がり、全国の草の根からの署名運動を推進し阻止してきました。

 今回提起された新しい署名も、安倍、菅政治を引き継いで改憲を狙う岸田政治を、全国の草の根から包囲するものです。

 日本共産党は、第4回中央委員会総会(4中総)で、5月3日の憲法記念日を節に、党の目標として1000万の署名を集めることを呼びかけました。

 さらに、改憲を阻止するために決定的に重要なのは、6~7月の参議院選挙です。4中総は、参議院選挙で改憲勢力の3分の2獲得を許さず、自民・公明とその補完勢力を少数に追い込み、政権交代への足掛かりをつくること、このなかで日本共産党の躍進を必ず勝ち取ることをよびかけました。

 ことしを、憲法改悪阻止、憲法を生かした新しい政治への画期にするために、力をあわせましょう。

維新と国民民主党をどう見る

 維新の会と国民民主党は、「憲法改定議論の加速」で合意し、昨年12月9日には与党側の憲法審査会幹事懇談会に参加、同月16日の審査会では改憲を進める発言を繰り返しました。自民党はこれを大歓迎しています。

 憲法改悪への協力、加担は、国民からのきびしい批判がさけられません。


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