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2021年11月21日(日)

主張

政府の「分配戦略」

本格的な賃上げへ政策転換を

 岸田文雄政権は「新しい経済対策」の柱のひとつに「分配戦略」を掲げ、「賃上げ」を強調します。

 しかし、具体的な方策は、賃上げする企業の支援強化など従来も行われ、効果を上げなかったものばかりです。本格的賃上げにつながる保証はありません。抜本的な政策転換こそが必要です。

賃金が低下している日本

 経済協力開発機構(OECD)によると、この間、賃金が下がっている主要国は日本だけです。

 1997年の時給を100とすると、2020年に日本は90に落ち込んでいます。これに対して、イギリスは194、アメリカは192、フランスは175、ドイツは163と増えています。韓国は、270となっています。

 財界が、「日本の賃金は高い」などと主張し、“アジア諸国並み”を目指すといって賃金を抑え込み、リストラ、非正規化を押し付けてきたことに原因があります。

 賃金が下がっているのとは正反対に、大企業は大もうけしています。上場企業の21年4~9月期決算は、過去最高益を更新しました。内部留保は466・8兆円(資本金10億円以上、20年度)と過去最高です。

 暮らしと経済を立て直すには、賃上げと安定した雇用の拡大が必要です。大企業の内部留保となっていくもうけの一部を使うだけで、賃上げや正社員化を実現し、新たな雇用をつくることができます。大企業による下請け・納入単価の強引な切り下げを規制することで、下請け・関連の中小企業にも賃上げの条件が生まれます。

 岸田政権が打ち出す賃上げ企業への減税策は、安倍晋三政権から9年続けても、その結果は実質賃金がマイナスとなるなど、効果はなかったものです。

 非正規労働者や医療・福祉などエッセンシャルワーカーの労働条件の改善も喫緊の課題です。日本における非正規労働者の比率は、41%まで達しています。

 労働政策研究・研修機構の集計によると、最低賃金ぎりぎりで働く労働者は、卸売・小売業で22・7%、宿泊業・飲食サービス業で39・9%、医療・福祉で6・6%です。

 最低賃金の引き上げは賃金水準全体の底上げにつながります。21年度の全国平均930円(時給)の最賃を1500円に引き上げ、全国一律制を確立することが求められます。中小企業への抜本的支援をセットで、赤字企業でも利用できるよう、生産性の向上を条件とせずに行うことが必要です。しかし、岸田政権の経済対策には最低賃金の大幅な引き上げは据わっていません。

 賃金が下がり続けるのは、正社員がどんどん非正規労働者に置き換えられてきたからです。労働者派遣法の改正や均等待遇など、人間らしく働くことのできるルールを確立すれば、正規雇用を増やし、「賃上げ社会」への道も開けます。

経済の成長のためにも

 労働者の賃金が上がらず、低く抑え込まれているから国内需要も増えず、経済成長していないのに、大企業のもうけばかりが増えているのです。賃上げを実現し、国民の所得を増やせば、国民全体の需要が増加し、本当の「好循環」が生まれます。コロナ危機から経済を回復させるためにも賃上げは決定的に重要です。


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