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2021年11月5日(金)

主張

COP26岸田演説

脱炭素に逆行する姿勢は重大

 岸田文雄首相は、英グラスゴーで開かれている気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)の首脳級会合で演説しました。二酸化炭素(CO2)を大量に排出する石炭火力発電からの脱却に一言も触れませんでした。2030年度の発電量の19%を石炭火力に依存するとした第6次エネルギー基本計画に沿った立場です。世界の環境NGOから厳しい批判を浴び、気候変動対策に後ろ向きな国に送られる「化石賞」をまたもや受賞しました。一刻の猶予もならない気候危機の打開に責任を果たさない姿勢は重大です。

石炭火力に依存続ける

 気候危機を打開するには世界の平均気温の上昇を産業革命前に比べて1・5度以内に抑えなければなりません。そのためには今後10年間で温室効果ガス排出を半減し、50年までに実質ゼロを達成する必要があります。石炭火力発電については国連が2030年までの廃止を先進国に求めています。

 さらに同条約の事務局は、各国が提出した温室効果ガスの排出削減目標をすべて達成しても、各国が目標を上積みしなければ世界の平均気温は今世紀末までに2・7度上昇すると警告しました。

 会合では、海面上昇の影響が深刻な島しょ国から「生き残りがかかっている。すべての経済活動を失ってしまう」(セーシェル)と悲痛な訴えが相次ぎました。削減目標の上積みや石炭火力の廃止は待ったなしです。

 岸田首相の演説は、日本自身の新たな対策強化に言及せず、アンモニア、水素利用など実用化のめどが立っていない技術を使う石炭火力事業をアジアで展開するというものです。

 CO2を大幅に削減する新技術の開発は必要です。しかし、いつ実用化できるかも定かでない技術を前提に石炭火力を使い続ければCO2削減を先送りするだけです。30年には到底間に合いません。

 石炭にアンモニアを混ぜて燃やす技術は、石炭が多く消費されることに変わりがありません。水素の生成には大量の電力が必要です。その電力を化石燃料でつくったら何もなりません。日本を化石賞に選んだNGO「気候行動ネットワーク」(CAN)は「アンモニアや水素を使った排出ゼロの火力発電を妄信している」と指摘しました。

 短期間にCO2を大幅に削減するには既存の技術や実用化のめどがある技術を利用して直ちに削減に踏み出すことが必要です。

 ドイツの新政権は脱石炭を実現する目標を38年から30年に8年繰り上げようとしています。英国は24年、フランスは22年と多くの国が石炭火力からの撤退期限を示しています。日本の姿勢は世界の流れに真っ向から逆らい、気候危機の打開を妨げるものです。

政治の責任で大改革を

 日本自身の30年度の温室効果ガス削減目標は10年度比で42%と、世界平均を下回るきわめて消極的なものです。50~60%減らすことがどうしても必要です。エネルギー消費を4割減らし、再生可能エネルギーで電力の50%をまかなえば十分に達成可能です。

 発電所は日本のCO2排出の4割を占めています。石炭火力の廃止は決定的に重要です。政治の責任で原発ゼロの実現と合わせてエネルギー政策を大改革することが急務です。


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