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2021年9月3日(金)

米価下落 営農の危機

前年比2~4割減

農民連・共産党「過剰在庫は隔離を」

■2021年産米の概算金・買い取り価格
農民連ふるさとネットワークのまとめから(60キロあたり、税込み)
産地 銘柄 2021年産 2020年産
北海道 ゆめぴりか 1万3500円 1万4700円
千葉 ふさおとめ 1万50円 1万2300円
茨城 あきたこまち 9500円 1万2000円
新潟 コシヒカリ 1万2200円 1万4000円

 各地で新米の収穫が始まるなか、農協から農家に支払われる仮払金や買い取り価格が前年比で2割~4割も下落していることが、わかりました(表)。

 農民連ふるさとネットワークがまとめたもの。北海道産「ななつぼし」は60キロあたり1万1000円で前年比2200円下落し、新潟県産「一般コシヒカリ」は、1万2200円で前年比1800円下落。茨城県産「あきたこまち」は2500円下落で9500円と1万円を割りました。17道府県の約60銘柄中50超が下落。再生産費が1万5000円といわれるなか離農に拍車をかける水準です。

 暴落の原因は、コロナ禍で飲食業の休業・営業自粛による大幅な需要減少です。7月末の民間在庫は138万トンで前年比19万トン増えています。

 日本共産党は、農民運動全国連合会(農民連)などの要求にこたえて、過剰在庫を政府が買い取り、市場から隔離▽生活困窮者、学生、子ども食堂などへ供給▽法的義務もないミニマムアクセス米の輸入中止▽転作補助金の大幅拡充―などを求めてきました。

 菅政権は、こうした抜本対策に背を向け、農家に史上最大規模となる36万トン(生産量の5%)の転作・減反を求めています。それでも来年6月末の在庫が210万トンにもなり、“適正水準”とされる180万トンを大きく上回る見通しです。

 農民連ふるさとネットの湯川喜朗事務局長は「菅政権の政策は、多くの農民の離農を広げ、農村・経営を破壊するものだ」と批判。「菅政権ではこの危機を乗り越えられません。総選挙で菅政権を代えるしかありません」と語ります。

大規模農家ほど打撃

図

 生産の現場では、暴落への不安が広がっています。

 滋賀県では、ある農協の買い取り価格で、「コシヒカリ」(環境こだわり米)が1万2000円と前年に比べ1700円、「みずかがみ」が1万1300円で2300円それぞれ下落しています。

 同県で40ヘクタールの水田でコメを生産する男性(39)は「出荷量が多い大規模な農家ほど打撃は大きい。私自身も経営の見通しはかなり厳しいと感じている。何よりも緊急事態宣言が繰り返されるなど、事態打開の方向が見えないのがしんどいし、不安だ」と語ります。

 「主食用だけでは経営の見通しが立たないので、加工用米や飼料米にも取り組みたいが、主食用にくらべ単価が低い。国は転作支援の単価引き上げなどの手を打ってほしい。経営の見通しがたつ具体的な対策を示してほしい」と訴えます。

 農民連は、昨年の春以降、コロナ禍で米価暴落の危険を指摘し、▽過剰在庫を買い上げ市場隔離▽買い上げ食料を困窮する国民に支援▽義務もないのに輸入を続けるミニマムアクセス米の削減・停止―を求めてきました。

 農水省への要請、農協との懇談、自治体への請願、新聞「農民」号外を配布。号外を読んだ農民が「書いてあることはその通り。菅政権を代えないといけない」(新潟)と電話してくるなど大きな反響が広がっています。

 岩手県農民連は、県内の農協を訪問。組合長らから「緊急買い入れという提案もいただいたが、それも含めて国が責任を果たすことが大事」との訴えが寄せられました。

 全国知事会も来年度予算へ向けた要望(6月)のなかで「需給環境の改善の取組は生産者、関係団体及び自治体だけでは限界があるため、備蓄米の買入数量を拡充する」よう求めています。

 農民連ふるさとネットの湯川氏は「政府は36万トン減反・転作を打ち出していますが、ほとんど効果はありません。20年産米の在庫が、JAにも卸業者にも生産者の手元にも多く残っており、政府の責任でこれを市場隔離するなど手だてをとるべきです」と警告します。

 「政府として“暴落を止める手だてを取る”とのメッセージを出すべきですが、菅政権にはその姿勢がない。農村で変化をつくり、政治的に大きな変動を起こし、菅政権を代え、明るい農村へつなげたい」と語りました。


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