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2021年8月23日(月)

主張

「盛り土」の規制

全国一律の法整備が急がれる

 静岡県熱海市で7月に発生した大規模土石流被害の原因が「盛り土」だった可能性が強まり、全国各地の盛り土の安全対策が問われています。これまでも盛り土による土砂崩れなどが後を絶たず、強い規制を求める声が上がっていましたが、政府は自治体任せでした。熱海市の土石流被害の後、国土交通省は盛り土の総点検を開始しました。危険な盛り土を洗い出して直ちに対策を取るとともに、厳しく対処できる全国一律の法整備に踏みだすことが急がれます。

自治体からの要望相次ぐ

 死者24人、行方不明者3人を出した熱海市の土石流をめぐり、犠牲者の遺族は盛り土の土地を所有していた不動産業者らを刑事告訴しています。違法な盛り土を造成し、安全に管理しなかった責任を問うためです。甚大な被害を引き起こした「人災」の要因の徹底解明と責任の明確化は再発防止にとって不可欠です。行政の対応も検証されなければなりません。

 深刻なのは、大雨や地震などの際、盛り土被害が各地で繰り返されているのに、規制する仕組みづくりを国が怠ってきたことです。

 宅地をつくったり廃棄物を埋め立てたりする場合の盛り土は法律で安全対策が義務付けられています。しかし、ビルの建設工事などで出る残土を処分するための盛り土を規制する法律はありません。

 地方自治体が独自の条例を制定していますが、強く規制できる力はありません。違反があった時、停止は命じられるものの、罰金は軽く、実効性が伴いません。残土を排出する建設業者や運搬する業者を処罰できない問題もあります。一定規模を超える盛り土を許可制にしている自治体もあれば、届け出制にとどまる自治体もあります。静岡県は届け出制でした。悪質な業者は規制の緩い自治体に残土を運び込んで盛り土をつくっていると指摘されています。

 国交省によれば建設残土は年間約2億9000万立方メートル(東京ドーム約230杯分)に達しています。建設工事の増加などで置き場が限られ、住宅近くに盛り土がつくられることもあります。コスト削減のため不法投棄されることも少なくありません。

 抜け道をふさぐ規制を国に求める自治体の声は切実です。関東地方知事会議は昨年、建設残土は「県域を越えて流通している上、条例で定めることのできる罰則では、不適正な事案に対する十分な抑止力となっていない」として訴え、法整備を要望しました。近畿ブロック知事会は、「全国一律に適用される最低限度の基準の設定等が不可欠」と提言しています。

 法整備に背を向け、違法な盛り土を事実上野放しにしてきた国の不作為は重大です。2015年の参院国土交通委員会で、日本共産党は残土の発生から搬出・処理に至る流れを管理する仕組みの法制化を求めました。厳格に規制できる法律の実現は待ったなしです。

リニア工事に不安広がる

 JR東海のリニア中央新幹線工事で発生する膨大な残土に関係する住民の不安が広がっています。谷を埋めたり、傾斜地に積み上げたりする残土処理が想定されていますが、JR東海は全体像を明らかにしていません。安全の置き去りは許されません。自然環境を破壊し、崩落事故のリスクを高めるリニア建設は中止するべきです。


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