しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年7月30日(金)

主張

英語民間試験活用

各大学の入試に押し付けるな

 文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」が「提言」(8日)をまとめました。「大学入学共通テスト」での英語民間試験の活用と国語・数学の記述式問題導入は「困難である」とし、各大学が実施する個別試験で活用などを進めるべきだとしています。

混乱させた責任は重大

 「共通テスト」の英語民間試験と記述式問題は、安倍晋三前政権が進めた「入試改革」の2本柱です。教育再生実行会議の提言を起点に、財界が求める「グローバル人材」を育成するために、専門家からの批判を無視して具体化されました。

 実施を目前にさまざまな問題が噴出し、高校生や教育関係者の中止を求める声と野党の結束したたたかいで、2019年11月と12月に、それぞれ延期や見送りに追い込まれていました。無謀な入試改革を推し進め、受験生や高校に大混乱をもたらしたことを、政府は当事者に謝罪すべきです。

 今度の「提言」は、英語民間試験の活用が、多くの大学・学部にとって「現実的な選択肢」だとし、各大学が個別入試で活用する積極的取り組みを促進するよう文科省に求めています。しかし、個別入試においても民間試験の活用は多くの大学の合意になっておらず、活用するか否かも含めて大学の自主的判断にゆだねられるべきです。

 文科省の20年度の調査でも、「個別入試(一般選抜)において英語資格・検定試験を活用すべき」に対して、否定的意見の学部は国公立で76%、私立で46%にのぼっています。日本学術会議が発表した提言「大学入試における英語試験のあり方について」(20年8月)は、英語の「書く、話す」力を問う問題は「各大学が必要に応じてそれぞれのやり方で実施する」ことが望ましいと強調し、「民間試験の活用は各大学の判断に委ねる」よう提起しています。

 大学入試で英語民間試験を活用することには、多くの疑念がもたれています。(1)民間の資格検定試験は留学目的やビジネス目的などが多く学習指導要領に依拠していない(2)民間試験を数多く受けた受験生が入試で有利になるため、多額の検定料負担が生じる(3)高校の英語教育が民間試験のスコアをあげるための受験勉強にゆがめられる(4)スピーキングテストは審査が難しく民間業者で公正・公平な評価ができるのか(5)営利目的の民間業者に受験生の個人情報を管理させてよいのか―などです。共通テストでの活用は困難だが個別入試なら問題がないとは言えません。

 「提言」は、個別入試での英語民間試験活用を推進するインセンティブ(動機付け)として、国立大学の運営費交付金や私立大学助成を評価によって傾斜配分することを求めました。民間試験を使わなければ交付金・助成金を減らすという脅しに他なりません。こうしたやり方はやめるべきです。

公正・公平の原点に立ち

 教育再生実行会議が「入試改革」を推進した動機は、英語民間試験の活用にありました。大学や高校の英語教育が巨大な市場になっているからです。そのため、実行会議の関係者や自民党と試験業者との癒着の疑惑もたびたび浮上しました。この闇の疑惑も全面的に明らかにし、「公正・公平」の原点にたって、入試改革を根本から見直すことが必要です。


pageup