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2020年8月28日(金)

モザンビークODA事業中止

日本国際ボランティアセンター 渡辺直子さん語る(上)

社会のあり方を問うた

 分断工作、メディア懐柔、不透明な事業内容…。安倍政権の「国益重視のODA(政府開発援助)」の暗部が凝縮されたモザンビーク・プロサバンナ事業が7月、事実上の中止に追い込まれました。8年間にわたり現地市民とともに事業を告発してきた日本国際ボランティアセンターの渡辺直子さんは、新自由主義的な大規模開発を世界の市民の連帯で止めた重要な勝利だと語ります。(聞き手・写真 佐久間亮)


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わたなべ・なおこ 1973年生まれ。大学卒業後、英国の海洋生物保護団体での勤務などを経て、2005年から日本国際ボランティアセンター・南アフリカ事業担当。モザンビークのほか、南アフリカでの農業支援やHIV(ヒト免疫不全ウイルス)陽性者支援などに携わる。

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 プロサバンナ事業は、大規模農業開発によって同国を大豆など日本向け輸出用穀物の一大生産拠点とする構想として始まりました。外国資本による土地収奪に拍車をかけるとの懸念や、小農を排除して進む事業に批判が高まり、本格展開に向けた「マスタープラン」を決定しないまま事業は中止となりました。

小農見下す

 実はマスタープランの草案の改訂版は、批判を意識して、当初の構想とは違い家族農業も大事だと書いています。ただ、小農の農業形態を変えなければいけないものと描く点は変わっていません。小農の農業をサステイナブル(持続可能)と呼ばず、国際市場と接合した農業をサステイナブルと呼ぶ。結局見下しているのです。

 プランが実行されても直接的被害はそれほど出なかったかもしれません。問題は、社会のあり方が変わらないというメッセージを与えることです。小農を見下し、「変わるべき」客体として描く開発の象徴がプロサバンナでした。プロサバンナとのたたかいはそうした社会のあり方そのものへの抵抗でした。このため、プロサバンナが止まらなければ、さらなる大規模開発が許されることを意味し、すでに起きている地域社会の分断もより深刻になったでしょう。

抵抗の象徴

 同国では土地収奪や人権侵害、環境破壊を引き起こす大規模開発が進んでいます。そのなかで開発の象徴であり、抵抗の象徴でもあるプロサバンナが止まった意義は大きい。この一歩がなければ次の一歩もないと言っていい重要な勝利です。(つづく)

 プロサバンナ事業 日本がブラジルで進めたセラード農業開発をモデルに2009年に開始。14年には安倍首相が日本の首相として初めてモザンビークを訪れ、推進を表明。これまで35億円もの税金が投じられてきました。内部告発や情報開示請求によって、JICA(国際協力機構)が複数の現地コンサルタントを雇って市民社会の分断工作をしていたことが発覚。18年には、事業の不透明性について現地の行政裁判所が国民の知る権利を侵害していると判決。日本共産党の井上哲士参院議員も繰り返し国会で追及してきました。


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