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2019年10月27日(日)

主張

日米協定審議入り

拙速な国会議論は許されない

 日本がアメリカから輸入する農畜産物の関税撤廃・削減を柱とする日米貿易協定などの承認案の国会審議が始まりました。安倍晋三政権は審議の前提となる、協定実施による国内経済や農畜産業への影響についての詳細な試算も示さず、日米「ウィンウィン(相互利益)」の協定だとごまかし、12月9日までの臨時国会中に承認を取り付けようとしています。日本の食料主権や経済主権を破壊する“売国”の協定を拙速な審議で押し通すことは許されません。

審議の前提整っていない

 24日の衆院本会議で審議入りしたのは、日米貿易協定と、アメリカの巨大情報技術(IT)企業の利益を最優先する日米デジタル貿易協定の二つの承認案です。日本共産党の笠井亮議員の本会議質問や同日の田村貴昭議員の衆院農林水産委員会の質問などでアメリカに一方的に譲歩した問題点があらためて浮き彫りになりました。

 重大なのは、審議の前提になる日米貿易協定実施による影響の試算が、大ざっぱな「暫定」の数字しか示されていないことです。安倍政権は専門家などの分析・検証を経た正式な試算公表は年末になるといいます。国会で協定を承認させた後で正式試算を公表するというのは本末転倒です。安倍政権の国会軽視の姿勢は大問題です。

 その「暫定」試算であっても日本の農林水産業の生産額は600億~1100億円も減るとなっています。すでに発効しているアメリカを除く11カ国との環太平洋連携協定(TPP)を加えると、農林水産業の生産減少額は、1200億~2000億円に上ります。とりわけ影響が大きいのは、牛・豚肉や乳製品、小麦などです。

 田村議員が明らかにしたように国内の牛肉の飼育農家数も飼育頭数も年々減っており、これにアメリカからの牛肉などの輸入が加われば文字通り、国内の農畜産業の“死活”に関わります。国内で販売される国産牛肉と輸入肉の価格には大きな差があり、日本の農畜産業が大きなダメージを受けるのは目に見えています。

 しかも今回の協定には、「米国は将来の交渉で農産物に関する特恵的な待遇を追求する」と明記されています。笠井氏が、「さらなる市場開放を強く求めてきたら首相は断られるのか」と迫ったのに、安倍首相は「予断をもって申すことは差し控える」というだけで、はっきり断るとは言いません。協定の付属文書には米国からの牛肉などの低関税の輸入枠を広げる可能性のある規定もあります。アメリカからの輸入が歯止めなく拡大する恐れは否定できません。

さらなる市場開放の危険

 「暫定」試算では、日米貿易協定によって、日本の国内総生産(GDP)は約0・8%押し上げられるなどともあります。しかしこれは、日本が要求したのに今回の協定では盛り込まれなかった、自動車・同部品の対米輸出関税の撤廃を前提にした架空の計算です。

 日米政府はさらに、金融やサービスについても交渉する予定です。笠井議員が、今後の日米自由貿易協定(FTA)交渉をやめるよう迫ったのにも首相はごまかしに終始するだけです。アメリカの要求を一層受け入れる危険が浮き彫りになっています。二つの協定の承認阻止と、日米FTA交渉に反対する世論と運動が急務です。


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