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2019年7月24日(水)

主張

日米の貿易協議

うそ・ごまかしの交渉は中止を

 参院選が終わり、日本とアメリカの貿易交渉がいよいよ大詰めを迎えます。安倍晋三政権とトランプ政権は24日から26日にかけて事務レベルの協議を開きます。そのあと8月から9月に閣僚級の折衝を複数回おこない、9月下旬にも開催する予定の首脳会談までに合意したいとしています。

 トランプ政権は、日本製自動車への関税引き上げなどで日本を脅し、米国産の農産物や米国製兵器の購入などを迫っています。今秋から本格化する大統領選をにらみ、安倍政権から大幅譲歩を取り付ける構えです。交渉継続は、日本にとって“亡国”への道です。

“密約”の存在は明らか

 日米貿易交渉は、昨年9月の日米首脳会談の合意にもとづき、今年4月から始まりました。安倍政権は物品貿易協定(TAG)交渉だといいます。しかしトランプ政権は最初から、物品だけでなく、サービスや投資についても協議する自由貿易協定(FTA)交渉だと明言しています。実際、4月中旬の交渉初会合では、物品だけでなくサービスも対象にすることで押し切られました。

 4月末に開かれた日米首脳会談ではトランプ大統領が、「とても素晴らしい長期的な貿易協定を結べる可能性がある」「日本は大量の軍事装備品を米国から買っている」と述べ、「日本が農産物にかけている莫大(ばくだい)な関税が撤廃されることを望む」などと要求しました。5月の首脳会談では大統領が、7月の参院選後を念頭に、「8月には良い発表ができると思う」と発言し、日米間での“密約”の存在を浮き彫りにしました。同氏はその後も、米国内向けに、「日本が間もなく、(農産物を)たくさん買ってくれるようになる」などと公言しています。

 トランプ大統領の就任後、アメリカは12カ国による環太平洋連携協定(TPP)から一方的に離脱しました。その後、アメリカを除く11カ国のTPP11や、日本と欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)が発効したため、米国内では、牛・豚肉や乳製品などの対日輸出で不利になったとの不満が噴出しています。トランプ氏は大統領選を有利に運ぶため、日米交渉での実績づくりに躍起です。

 安倍首相は選挙中も、「密約はない」とか「譲歩はTPPが最大限」などとごまかしました。しかし交渉を担当する茂木敏充経済再生担当相は6月の閣僚協議の後、「参院選後に早期に成果を挙げることでは、日米間で一致している」と明言しています。トランプ大統領は5月の首脳会談の後、「アメリカはTPPに縛られない」と発言しました。“だんまり”を続けて参院選をやりすごし、一気にアメリカと合意しようという安倍首相のうそとごまかしは許されません。

「アメリカ枠」拡大の危険

 トランプ政権が重視する農産物の対日輸出拡大の危険は深刻です。TPPでは、バターや脱脂粉乳の低関税での輸入枠として7万トンが設けられました。トランプ政権はその上積みを求めています。コメについても、7万トンの「アメリカ米輸入枠」のさらなる拡大を迫っています。こうした要求を受け入れれば、日本の農畜産業は成り立ちません。

 参院選で東北4県の1人区で自民党が敗北したのは、安倍農政への怒りの表れです。日米交渉は中止しかありません。


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