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「赤旗」創刊93周年に寄せて

 

荒れ野で叫ぶ声であれ

同志社大学教授
浜矩子さん

写真:浜矩子 菅政権の中には人の痛みのわかる人がいません。経済政策は弱い者、苦しんでいる者を救済するのが勘所です。誰がどこでどう困っているかを察知し、胸を痛める感性がないと話になりません。

 けれど「自助、共助、公助」を掲げる彼らは、人のために泣ける目を持っていません。だから彼らのやることには個別性がありません。コロナ禍で店を閉めなければいけない人たちの個別的な事情に可能な限り配慮して、本当に必要な手助けをしようという構えがないのです。政策を切り盛りしてはいけない人たちが政治の中心にいることが、日本国民にとっての不幸です。

 菅政権が行おうとしているのは恐怖政治です。学術会議の人事に介入し、言論を弾圧し、異を唱える者を黙らせることに徹しています。菅首相の唯一最大の狙いは、自分のいう通りに事が運ぶ状態をつくること、絶対権力を掌握することなのでしょう。すると人の痛みなんてどうでもいいということになります。

 「赤旗」は学術会議の問題でも「桜を見る会」の問題でも、徹底追及の構えを貫徹しています。報じ方も正確で丁寧です。もちろん論調は大事ですが、事実関係を漏らすことなく正確に書いてくれていることが重要です。

 例えば、学術会議の人事に関する法律解釈がいつごろから変わったのか。どういう形で変化が生じたのか。条文も引いてきちんと事実を書いてくれるから、原稿を書くときの参照資料としても頼りにできるのです。

 「赤旗」はジャーナリズムのかがみであってほしい。荒れ野で叫ぶ力強い声であってほしい。

 荒れ野で叫ぶ声というのは聖書に出てくる言葉で、預言者を指します。壁を張り巡らせた街の外の荒れ野から、内側でのほほんと生きている人たちに警告を発するのです。「思考停止するな。偽預言者にだまされるな」と。

 反骨の精神、反体制の精神を持って警告を発する。広大な荒れ野で叫ぶ声を組織する核になって、大合唱、大音声を湧き起こす。そういう役割を果たしていただきたいですね。

(2021年1月28日)


 

メディアけん引 活性化を

日本ジャーナリスト会議代表委員、元新聞労連委員長
藤森研さん

写真:藤森研 最近、「赤旗」はジャーナリズムとしての活躍が目立っています。日曜版の「桜を見る会」の調査報道が日本ジャーナリスト会議(JCJ)の大賞に選ばれたことは、画期的だと思っています。今まで例のないことが起き始めています。

 日本のマスメディアは、1980年代半ばまで自民党一党支配の中、どちらかといえば野党的なスタンスで、民主主義の健全なバランスを保つ一定の役割を果たしてきました。

 ところが、親政権化するメディアが出てきて、分断され二極化が進みました。過去にスパイ防止法案が出た時は、メディアの団結が廃案につながりました。ところが2013年の特定秘密保護法では、あろうことか「読売」「産経」は賛成しました。

 「マスメディア」総体としての元気がなくなり、権力監視機能が弱ってきた中で、新しい機関紙ジャーナリズム「赤旗」の活躍、そして『週刊文春』などの週刊誌ジャーナリズムが台頭して、ジャーナリズム活動の主体が多元化しています。この動きは注目に値します。

 大手メディアには人も資金もあるし、全国網を持っているから地力はあります。けれども、そうでないメディアがこれだけのヒットを飛ばせるのはなぜか。そう考えた時に、「赤旗」日曜版の山本豊彦編集長がいうように、「視点」が大事です。私が「視点」の大切さに注目するのは、小さなメディアであっても大きな仕事ができるというメッセージを発信しているからです。

 最近も「赤旗」は、日本学術会議や内閣官房機密費(報償費)でスクープを出しました。鋭敏な視点によるスクープは大手メディアにとっても大きな刺激になるでしょう。多元的なメディアが切磋琢磨して権力監視を強めていくことは民主主義にとって望ましいことです。「赤旗」には、スクープに今後も果敢に挑んで、権力監視機能をさらに強め、メディアをけん引、活性化させてくれることを期待しています。

(2021年1月29日)


 

「赤旗」と共に闘います

作家・フラワーデモ呼びかけ人
北原みのりさん

写真:北原みのり 「赤旗」が創刊された1928年は、女性に投票権のない「普通選挙法」が初めて実施された年でした。この4年前、久布白落実さん、市川房枝さんは婦人参政権獲得期成同盟会を結成しています。25歳以上の男性たちが投票に行った日、女性たちはどのような思いでこの日を過ごしたのでしょう。

 女性参政権運動のはじまりは、公娼制度への抵抗から始まっています。家畜のように女性が売り買いされ、容姿によって値段をつけられ、女性の自由意思を装った性奴隷制度である公娼制度を廃止するためには、女性が政治に参加する必要があるのだと、その意思をもって女性たちは声をあげつづけました。

 市川房枝さんが亡くなったのは私が10歳の時でしたが、新聞やテレビで大々的に報道される〝おばあさん〟をカッコイイと思ったものでした。女性のために闘う女性たちがいる。その事実に私はどれだけ励まされてきたことか。

 大変な時代になりました。これまで以上に私は、人の命、人の尊厳、人の暮らし、そして性差別根絶のために闘う政治家を強く求めます。権力におもねらない抵抗の意思を持った筆を求めます。「赤旗」の役割はこれまで以上に大きくなるのではないでしょうか。

 私はフラワーデモを通して「声が聞かれる」ということはどのようなことなのかと考え続けてきました。そしてそれはやはり、私たちが私たちの尊厳を守る、という意思、そして行動そのものなのだと思います。では尊厳とは何なのか。既に私にあるものだというのに、簡単に損なわれ、奪われてしまうような恐怖を日本社会で強いられ続けている今。尊厳とは、何なのでしょうか。

 「赤旗」の根底にあるのは、私たちの尊厳を取り戻すのだ、という宣誓なのだと理解しています。だからこそ私は「赤旗」を読んでいます。私たちが取り戻すべき尊厳、すでに誰にも奪えないものとしてあるはずの尊厳の形を、言葉によって確かなものにしたいのです。

 創刊93周年を期して、私も「赤旗」と共に闘います。

(2021年1月30日)


 

権力射抜く「知の武器」

高千穂大学教授(政治学)
五野井郁夫さん

写真:五野井郁夫 「赤旗」は、今の政治を考えるうえで、あるいは日本と世界で起こっていることを考えるうえで、何が大事なのかをしっかりと示している極めて重要な存在だと思います。新聞がもっていた政論新聞の機能を担っていると思います。

 明治期の日本の新聞には、多様な新聞の中に、政治を論じる新聞=政論新聞というジャンルがありました。その時々の社会の状態はどうなっていて、どういう方向に社会改良をしていくべきか、あるいは政治の課題は何かなどを明確に示していた新聞を政論新聞と言います。政論新聞は、知識人層はもちろんのこと、読み書きを覚えた一般市民層にも浸透していって政治に対する関心を喚起する役割を果たしました。そして、後の大正デモクラシーも用意していきました。

 日本で、政論新聞として役割や権力を「射抜く」機能を有している新聞がこの数十年で無くなってきました。あしき両論併記や相対主義がまかり通り、解決を求められる問題や解決後の課題を明確に提示できない新聞が多くなっています。

 「赤旗」は政論新聞として今の日本政治や国際政治の課題を正しく指摘するとともに、権力を射抜いていくという本来のジャーナリズムの機能をもっていると思います。

 また、社会の出来事を俯瞰的にとらえ、全体像を提示している新聞も意外と少ないと思います。事件を時系列で整理して報じる新聞は多いのですが、全体を見て本質を報道するのは「赤旗」です。調査報道という部分でも「赤旗」は、「桜を見る会」問題で実績があります。国会での田村智子参院議員の質問とも連動した精度の高い報道を行っていました。「桜」については事実上「赤旗」の報道をきっかけとして追及が始まり、結果として、安倍政権という長期政権の崩壊につながります。「赤旗」が〝一番やり〟だったわけです。

 政治を捉える上での情報の正確さについても定評があり、政治学者にとっても「知の武器」として実用的に使えるメディアということです。

(2021年1月31日)


 

反権力、メディアの星

文芸評論家
斎藤美奈子さん

写真:斎藤美奈子 メディア全体が「ヘタレ」になっている中、「赤旗」は今「反権力の星」ですね。新聞労連の首相官邸記者へのアンケート調査(2019年)では、「権力の監視」より「政府の公式見解の確認」を重視している記者の方が多かった。地方紙はまだ頑張っていますが、全国紙となると「赤旗」なんだよね。

 昔から「赤旗」の調査能力は高くていろいろなスクープを飛ばしてきたでしょうけど、これまではネタ元が「赤旗」だと知らない人が多かった。でもインターネットで記事が読めるようになり、党の機関紙にとどまらないジャーナリズムとして認識されるようになりましたね。

 原稿を書く時、事実関係を知りたいのと、この問題をどう考えたらよいのかヒントがほしくて記事検索すると、「赤旗」のヒット率が高い。「赤旗」の記事には、事実関係と共に、日本共産党はこう考えるという意見が入っているんだよね。うのみにするわけではないけれど、指針というか一つの大きなヒントになります。

 大手紙でよくあるのが「問題になることが予想される」「波紋を広げそうだ」。ひと事のような言い方するでしょ。この語尾、余計なわけ。

 例えば消費税増税やTPP(環太平洋連携協定)加入のように、メディア全体が推進の音頭をとっている時、おかしいと思って「赤旗」を読むと、「やっぱそうだよね」ってなる。

 日曜版編集部の『「桜を見る会」疑惑 赤旗スクープは、こうして生まれた!』は取材の舞台裏が分かり、とても面白かった。特別珍しい取材をしているわけではなく、視点の問題なんだよね。

 「赤旗」の強みを考えると、一つは、全国に張り巡らされている共産党のネットワークを使って取材ができること。もう一つはその成果を国会に持ち込み、公の議論のステージに乗せられること。そうすると何かを変えるキッカケになるもんね。どこの編集部も、問題を見つければ国会で取り上げてほしいと思っているんですよ。国会とうまく連携できる「赤旗」は、非常に手応えのあるメディアになっていく可能性があると思っています。

(2021年2月1日)


 

「赤旗」創刊93周年で考える

編集局次長 藤田健

(上)政党機関紙こそ日本のジャーナリズムの原点

 「しんぶん赤旗」は、2月1日で創刊93周年を迎えます。いま、日曜版の「桜を見る会」スクープのJCJ(日本ジャーナリスト会議)大賞受賞を契機に、大きな社会的注目を集めています。昨年は日刊紙が日本学術会議の会員任命拒否問題でスクープ。年初には内閣官房機密費の報道が話題を呼びました。...⇒続きを読む (1月28日掲載)

(下)権力の暴走・腐敗を監視 切磋琢磨する存在として

 ジャーナリズムの歴史を考えるうえで、もう一つ考えなければならないのは、「中立公正」や「不偏不党」というスローガンがどうして生まれたのかです。...⇒続きを読む (1月29日掲載)

 


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