2024年10月18日(金)
主張
中小企業の賃上げ
支援拒否の石破政権に審判を
物価高から暮らしを守り経済の低迷から抜け出すには最低賃金を早期に全国一律1500円に引き上げるなど大幅な賃上げが必要です。最賃引き上げは今や自民党でさえ言います。鍵は、全雇用者の7割が働く中小企業の賃上げです。そのためには中小企業への公的な支援が不可欠です。
■全体主義だと攻撃
国会での党首討論(9日)で日本共産党の田村智子委員長が最賃引き上げのため中小企業への直接支援を求めたのに対し、石破茂首相は「私どもは全体主義国家、社会主義国家ではないので、政府が主導して直接お金を支払うやり方が必ずしも正しいとは思っていません」という驚くべき答弁をしました。
通常時なら、賃上げ分が価格転嫁され、国民所得が増えて企業の売り上げや利益も伸び、さらなる賃上げの原資が生まれる好循環が政府の支援なしで進むことが望ましいでしょう。しかし、長年の景気低迷で海外諸国と比べても大幅に低い最賃を短期間で一気に引き上げるには思い切った政府支援が欠かせません。
世界を見ても、フランスで2000年代初めに最賃を大幅に上げた際には中小企業の社会保険料負担を2・28兆円軽減しました。アメリカでも00年代後半に最賃を引き上げた時には、中小企業に8800億円の減税を実施しています。
日本でも、岩手県では賃上げした企業に県が補助金を支払う制度を実施、徳島県も知事が実施を表明しています。「賃上げ支援は全体主義」などという首相の認識は全く通用しません。
■大企業には大減税
一方、自公政権は13年以来、「賃上げ減税」を実施してきました。賃上げした企業の税金を安くするもので、首相が否定する直接支援の一形態です。ただし、減税は黒字企業しか対象にはなりません。このため、赤字企業が多い中小企業の場合、支援を受けた企業の割合は過去10年間の平均で4%程度にすぎません。
かたや、トヨタ自動車は過去10年間で1092億円賃上げをしたうち4割に当たる440億円の減税を受けています。同社はこの間に17・9兆円の利益をあげ、株主に6・5兆円も配当し、内部留保を10・9兆円も増やしています。政府の支援などなくても賃上げは十分可能だったはずです。
最低賃金を一律1500円に引き上げれば、賃上げ総額は中小企業だけでも10兆円近くになります。トヨタ並みに支援するなら数兆円規模の支援をして当然です。支援が1年限りで済まないと考えれば10兆円程度が必要です。日本共産党は大企業の内部留保への臨時課税で10兆円を確保し、中小企業への支援に充てることを提案しています。
石破首相は日本記者クラブの党首討論(12日)で中小企業の淘汰(とうた)もやむを得ないかと問われ「どんな企業でも守るとは全く言っておりません。(最賃1500円は)地域によって無理なところがあるのは当然で、淘汰とは申しませんが、いかに労働力の流動性を確保するか、規模が大きい企業の賃金が上がっていくとすれば、そういう状況になることを私は否定しません」とまで述べました。この政権に中小企業の未来を任せることはできません。