2024年10月9日(水)
自民政治おおもとから転換
首相の政治姿勢厳しく追及
田村委員長の代表質問 参院本会議
8日の参院本会議の代表質問で、「手のひら返し」の対応が相次ぐ石破茂首相の政治姿勢を厳しく追及した日本共産党の田村智子委員長。暮らしと経済でも外交・安全保障でも、気候危機打開、ジェンダー平等を巡っても行き詰まった自民党政治をおおもとから変える党の提案を示し、実現を迫りました。
経済・暮らし
大企業優遇から生活応援へ
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田村氏は「大企業・大富豪優遇から暮らし応援の政策への抜本的な転換が必要だ」と強調。「何より政治の責任での賃上げだ。そのカギは中小企業への直接支援だ」と主張しました。
賃上げと時短
政府の「賃上げ減税」は、中小企業への適用がわずか数%の一方、トヨタ自動車は10年間で440億円もの減税になりました。田村氏は「まず大企業ありきでは物価に負けない賃上げは進まない」と指摘。539兆円にまで膨張した大企業の内部留保の一部に時限的に課税し、中小企業の賃上げを直接支援する党の提案を示した上で、「最低賃金1500円へと踏み出そう」と求めました。
「労働時間を短くし、自分のための自由な時間を増やしたい」―田村氏は、これが働く人の切実な要求だと強調。経済協力開発機構(OECD)11カ国のうち、日本の女性の睡眠時間は最も短いとして「今の労働時間では女性が身を削って仕事・育児・家事を担わざるを得ないことが示されている」と述べました。
田村氏は「1日7時間、週35時間労働制」へ進む党の提案を紹介。労働時間の短縮こそ、男性が日常的に家庭でのケアに関わる条件や、女性が正規雇用で働き続ける条件を広げ、ジェンダー平等の推進力となるとして首相の認識を問いました。
石破首相は「男性も含めた労働時間の短縮に取り組むことが必要」と述べながら、短期間勤務の活用という従来施策を示すだけでした。
年金・介護
年金を巡って田村氏は、物価が上がっても年金が増えず「100年安心」どころか「毎日が不安」の年金制度になっているとして「年金積立金を計画的に年金給付の維持・拡充に充て、低年金の抜本的解決のために最低保障年金制度に踏み出すべきだ」と求めました。
訪問介護報酬が減らされ事業所の閉鎖が相次ぎ、「赤旗」日曜版調べで6月末現在、訪問介護事業所が一つもない自治体が97町村、残り1カ所だけが277市町村に上ると指摘。「介護崩壊を何としても止めなければならない」と強調しました。自民党・公明党も野党時代に介護保険の国庫負担割合を増やすと公約していたとして「今こそ実行を」と迫りました。
石破首相は「国庫負担割合を増やすことには慎重な検討が必要」と背を向けました。
学費無償化
田村氏は、総裁選で首相が「国立大学・高専の授業料無償化」を公約に掲げたとして「東京大学の授業料2割値上げなど、大学の学費値上げにストップをかけるべきだ」と要求。国からの運営費交付金削減分の一部を元に戻すだけで、国立大学の値上げは必要なくなるとして「削減分を戻すことを表明し、授業料値上げを止めることこそ首相自身が掲げた公約を守る道だ」と求めました。石破首相は「高等教育費の負担軽減に取り組む」などと述べるだけでした。
安保・外交
戦争準備でなく平和外交を
田村氏は「『日米同盟』と言われると思考停止になり、憲法も踏みにじり、財源もおかまいなしで軍備増強に突き進む」と厳しく指摘しました。
自衛隊の地対空ミサイル部隊が新たに配備される沖縄県与那国島で、有事を想定し九州への全島民避難計画が作られようとしている問題―。田村氏は主要産業である畜産を巡り、防衛省が「家畜の島外避難は不可能で、補償は考えていない」として、避難しない島民には電気やガスなどが使えなくなると説明していると指摘。「これが『国民を守る』ということか」と批判しました。
また、沖縄県名護市の米軍辺野古新基地建設も日米同盟強化の思考停止の象徴だとして「県民が自ら基地を受け入れることはありえない」「完成のめどが立たない」とし、「もう断念するしかない」と迫りました。
田村氏は、日米同盟強化は軍事対軍事で果てしない軍備拡大をもたらすとして、やるべきは憲法9条を生かした外交に本気で取り組むことだと指摘しました。
日本共産党は「東アジア平和提言」を掲げ、▽2008年の日中首脳会談▽両国が賛同した「ASEANインド太平洋構想(AOIP)―に基づき、日中関係の前向きな打開を提案していると紹介。「東アジアに分断と敵対のブロック政治を持ち込むのではなく、特定の国を排除しない包摂的な対話の枠組みの活用・発展こそ求められているのではないか」と迫りました。
石破首相は、反撃能力などが日本の対処力・抑止力を向上させると固執し、有事での住民避難について「平素から関係機関間の連携を強化する」などと開き直りました。
裏金問題
新たな疑惑次々 再調査迫る
田村氏は、石破首相が予算委員会での論戦を回避して衆院の解散・総選挙を行おうとしていることは「あまりにも党利党略が過ぎる。これは民主主義の根幹にかかわる問題だ」と批判しました。
「しんぶん赤旗」日曜版がスクープした石破派・水月会の裏金疑惑について、「総理は『事務的ミス』と言うが、自らの派閥について調査もせず『出も入りもきちんと載せている』と説明したのか。(収支報告書への)不記載は他にないと断言できるのか」と追及。石破首相は「ほかに訂正すべき事項は、これまでのところ把握していない」と述べ、ほかに不記載がないとは言えませんでした。
石破派や麻生派の裏金、堀井学前衆院議員による裏金を原資とした香典配りなど新たな問題が次々と明らかになっています。田村氏は、石破首相が過去に「新たな問題が起きれば再調査する」と明言していたとして、徹底した再調査を要求。「これを拒否することは自民党の組織的な大政治犯罪にふたをすることになり、国民の信頼回復などあり得ない」とただしました。石破首相は「可能な限り事実関係の把握、解明の努力が進められてきた」と述べるだけで石破派の問題も含め、再調査について一言もふれませんでした。
石川・能登の豪雨災害
従来の枠超えた支援策必要
「一段階ずつ元の生活に戻ろうとしたのに、足元をすくわれた気持ちだ」―。田村氏は石川・能登の被災地の切実な声を紹介、「政府は今回の豪雨災害を複合災害とみなさずに、従来の枠組みで対応している」と批判しました。
元日の地震に加え、9月の豪雨災害で深刻な被害を受けた能登半島では、かつてない連続した災害が大きなダメージとなっています。田村氏は、いますぐ温かな食事と安心できる居住環境をと求めた上で「従来の枠を超えた支援策を行う、そのことを示すためにも補正予算の編成が、今国会で必要ではないか」と迫りました。
石破首相は「予備費の活用で迅速な対応が可能だ」と述べるにとどまり、従来の枠を超えた支援策には言及しませんでした。
気候危機
本気の省エネ・再エネ普及を
田村氏は、国連が先進国に対して2030年までに石炭火力からの撤退を要請しているにもかかわらず、主要7カ国(G7)で日本だけが撤退期限を示していないと批判。「急速に進む地球温暖化への危機感があまりにも欠落している」と指摘しました。
日本の再生可能エネルギーの電力普及率は24%で、英国46%、ドイツ52%、カナダ66%と比べ、大きく立ち遅れています。田村氏は大手電力会社が石炭火力と原発からの送電を優先し、再エネを捨てるという逆行さえ生じているとして、「再エネの普及を妨害しているのが石炭火力と原発だ」と強調。石破氏は「安全性の確保を大前提とした原発の利活用」と原発に固執する姿勢を示しました。
田村氏は、省エネ・再エネの本気の普及、石炭火力からの撤退、原発ゼロで、2030年度までにCO2排出6割削減に取り組むべきだと迫りました。
ジェンダー平等
古い価値観押しつけやめよ
石破首相は就任後、選択的夫婦別姓の実現について「党内で真摯(しんし)な議論をさらに進める」と、これまでの自民党政権と変わらず棚上げに転じました。
田村氏は、7月の世論調査で国民の7割が賛成していることなどにふれ、「『個人の尊重』の上に、自民党一部勢力の古い価値観を押しつけることは許されない」と迫りました。
田村氏は、今月、女性差別撤廃条約にもとづく日本政府の取り組みが国連女性差別撤廃委員会で審査されることに言及。「焦点の一つが選択議定書を批准しない政府の態度だ」と指摘しました。
選択議定書には、女性差別が最高裁まで争っても認められなければ条約違反を国連に通報できる個人通報制度があり、115カ国が批准。田村氏は「選択議定書を批准し、女性差別撤廃条約を全面実践する意思を示すべきだ」と主張しました。石破首相は「検討している」と従来の政府答弁の繰り返しにとどまりました。
また田村氏は、重大な人権問題に関わるとして、(1)旧優生保護法の被害者への謝罪決議と被害補償法案が可決されたことを第一歩に「優生思想の根絶」をする(2)袴田巌さんの無罪判決を受け、再審制度を見直す―ことを提起。石破首相は再審制度の見直しを「法務省で対応する」と述べるにとどまりました。