2024年9月10日(火)
長崎被爆体験者訴訟
44人中15人被爆者認定
長崎地裁 原爆被害「黒い雨」だけに矮小化
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国が指定した被爆地域外にいたため被爆者と認められない長崎被爆体験者が、長崎県と長崎市を相手に被爆者と認め、被爆者健康手帳の交付を求めていた裁判の判決が9日、長崎地裁(松永晋介裁判長)であり、44人のうち15人に対し被爆者と認める一部勝訴の不当判決を出しました。
「黒い雨」が降ったという証言が多い風下地域の旧古賀村、旧矢上村、旧戸石村の15人の原告に限って被爆者健康手帳を交付するよう命じました。
岩永千代子原告団長らは「残念だ。判決は原告を分断した。超高齢者ですが、ひるまず、死ぬまでたたかうつもりです。真実を、放射線微粒子による内部被ばくによる健康被害があることを認識すべきだ」と怒りを込めました。
争点は、広島高裁判決と同様に「放射能の影響を受けるような事情の下にあったか否か」にありました。長崎地裁は「原爆の放射線による健康被害の可能性がある事情の下にあった者」で「合理的根拠のみならず一定の科学的根拠を踏まえる必要がある」ことを原告に証明責任を負わせるなど広島高裁判決を後退させました。
判決では、証言調査において「黒い雨」の証言がある地域の15人を被爆者と認め、マンハッタン調査については、精度が劣り、誤差を含むので、線量率の値が低い地域では困難であると判断しました。
足立修一弁護士は、「広島高裁判決を後退させたありえない判決だ。広島の“黒い雨”だけに矮小(わいしょう)化して原爆由来の放射線があったと判断し、米軍マンハッタン調査団の報告書には蓋然(がいぜん)性は認められないと切り捨てた。分断を持ち込んだ極めて不当で、行政に忖度(そんたく)した判決だ」と厳しく批判しました。