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2024年8月12日(月)

きょうの潮流

 「道を挟んで、あちらはもらえて、こちらはもらえないなんて、おかしか」。長崎で「被爆体験者」とされてきた岡田セツ子さんが本紙で語っていました。さまざまな病気に苦しめられた、被爆者と認めてほしか、と▼9歳のとき、閃光(せんこう)と爆風に襲われた岩永千代子さんは1週間後に歯茎から出血し、喉に痛みを覚えました。しかし国によって被爆地域外とされ、岡田さんと同じく被爆者健康手帳も交付されませんでした▼灰やすす、黒い雨…。放射性降下物による健康被害は広い地域で確認されています。それなのに国は科学的な根拠もなく行政区で線引き、分断や差別を強いてきました。被爆体験者は被爆者ではない、と置き去りにして▼取り残され、命を軽んじられて死んでいった多くの人たち。その苦しみや無念のために闘ってきた岩永さんは、今年の長崎原爆の日にそれを岸田首相に直接訴えました。「体験者」の平均年齢は85歳をこえ、一刻も早い救済が求められます▼核兵器の非人道性とともに核なき世界の実現を国内外に発信しているさなか、岸田首相は憲法9条改憲、自衛隊の明記に向けての指示を出しました。米国と一体となって戦争をするため、自身の延命のために。核兵器禁止条約には背を向け続けながら▼米欧の一部の大使が理不尽に式典を欠席したとはいえ、被爆者や被爆地の切々たる声に世界が耳を傾けているときに、唯一の戦争被爆国の首相がふたたび戦争への道を開こうとする。それがどんなに恥ずべきことか―。


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