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2024年8月11日(日)

主張

「山の日」

管理者を決め登山道の維持を

 11日は「山の日」です。「山に親しむ機会を得て、山の恩恵に感謝する」ことを目的に制定された休日です。

 里山の散策から高峰の縦走路まで、山に親しむために欠かせないのが登山道です。いま、その維持管理が困難になってきて、超党派の「山の日」議員連盟でも問題の検討が進められています。

 一般の道路は自治体が維持管理に責任を負っていますが、登山道はほとんどが管理者不在で、多くは、誰が責任を負っているのか不明です。登山道は昔から歩かれてきた道が使われているものが多く、管理者を決めないまま現在に至ったことが影響しています。市町村合併で管理者があいまいになったところもあります。

■継続困難な山域も

 厳しい自然にさらされる登山道は、放っておけば浸食や斜面の崩壊、下草の成長、倒木などによって通行困難になります。橋やはしご、鎖のような工作物は経年劣化で強度が落ちてきます。小まめな維持管理が欠かせません。

 管理者不在でも山小屋や山岳会が整備を担ってきたところもあります。しかし、コロナ禍や山岳会員の高齢化で継続が難しくなってきた山域もあります。

 青森県の八甲田山では、かつていくつもの登山道が整備されていましたが管理者不在で荒れ果て、特に南部は通行困難になっていました。県内の山岳団体が協力して、現状調査や刈り払いの実績を示すなど粘り強く運動する中で、国や自治体が管理者になり、整備が進みました。

 管理は必ずしも整備と同じではありません。観光用の遊歩道と違い、登山道は登山者の自己責任が原則で考え方が異なります。危険表示をして、できる限り自然のままの状態を残すという方法もあります。

 アメリカの自然公園の小道(トレイル)は安全性を重視して整備する区域と、自然保護のため可能な限り人工物による整備を避ける区域を分けています。過剰な整備は自然保護と相いれません。

■決定すすむ措置を

 どんな形態の登山道にするのか、橋や鎖、標識を設置するのかなどは管理者が決められます。自治体の予算の範囲内で整備することも可能です。ただ、小規模市町村は2分の1の負担となる環境省の交付金活用だけでは厳しいといいます。国からの一定の財政措置が必要です。

 自治体は事故が起きたときの責任を懸念して管理者を避ける傾向もあるようです。確かに、橋などの工作物を設置したら維持管理の責任が生じます。ただし、管理者の責任が問われた事故のほとんどは遊歩道の事例です。登山道とは区別できます。

 登山道が管理されていることは、登山者だけでなく地元自治体にとっても恩恵があります。頂上を目指す登山者は少数でも、対象となる山のイメージは多くの観光客やハイカーをひきつけます。それは地域にとっても大きな財産です。

 山岳遭難防止や自然保護のためにも、登山道の管理者は欠かせません。国が登山道を道路並みに位置付け、管理者の決定が進むような施策が必要です。


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