2024年7月18日(木)
強制不妊 首相が謝罪
原告 全面解決を要求
一日も早い全被害者補償を
岸田文雄首相は17日、旧優生保護法は憲法違反だとして国に賠償を命じた最高裁判決を受け、訴訟の原告を含めた当事者らと首相官邸で面談しました。首相は障害者らへの強制不妊手術に関し、「政府の責任は極めて重大だ。心から申し訳なく思う」と謝罪。不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」適用の主張を係争中の関連訴訟で撤回すると表明しました。面談後、原告らは記者会見し、「旧優生保護法の問題はまだ終わっていない。声を上げられない人たちのためにも、すべての被害者に補償を」と訴えました。
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面談で首相は、新たな補償の在り方について「可能な限り早急に結論を得る。速やかな解決に向けて全力を尽くす」と語りました。
原告らは首相に「優生保護法問題の全面解決要求書」を手渡しました。要求は▽政府・国会による謝罪と決意表明▽全被害者への一日も早い補償▽当事者と第三者による検証▽優生思想を根絶する立法と教育▽継続的協議の場の設置―など。
会見した優生保護法被害全国弁護団の新里宏二共同代表は、岸田首相から謝罪の言葉があったことについて「やっとここまできた」と強調。その上で、裁判の途中で原告が亡くなるなど、政治の判断が遅れた点を指摘し、「声を上げられていない人たちも含め、今行われている裁判を和解で終わらせるよう求めたい」と述べました。
原告の北三郎さん(仮名)は「心の苦しみは忘れることはありません。年を取ってから子どもが欲しくてもできない。自分と同じような苦労をしてほしくない」と話しました。
旧法は1948年に成立。「不良な子孫の出生防止」を目的に、障害者などに不妊手術を強制し、96年の改正までに約2万5000人の被害を生みました。最高裁は今月3日、旧法と不妊手術は違憲と判断。不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」の適用を認めず、被害者1人当たり最大1650万円の賠償が確定しました。
被害者に一時金320万円を支給する制度がありますが、支給認定は5月末時点で1110件にとどまっています。