2024年7月7日(日)
主張
300日切った万博
危険な万博今こそ中止決断を
来年4月の大阪万博開幕まで300日を切りました。各地でキャンペーンがされていますが、依然、大きな盛り上がりはありません。チケット販売数は目標1400万枚に対し6月末で2割にとどまり、大半は「企業による購入」(万博協会幹部)とされます。
いまここで立ち止まり、中止を決断することを改めて訴えます。
「今さら中止は無理では」との声も聞かれます。しかし、1995年、東京都知事選に勝利した青島幸男氏が公約通り「都市博」中止を決めたのは開幕の298日前でした。要は政治の決断です。
■危険な会場に不安
中止すべき大きな理由は安全性への懸念です。とくに不安を広げているのが3月のガス爆発事故です。会場となる夢洲(ゆめしま)はゴミの最終処分場です。事故が起きた1区には団体バス乗降場が設けられますが、地下には焼却灰、下水汚泥など有害な廃棄物が埋め立てられています。土中で発生する大量のメタンガスを常時83本のガス抜き管で排出しており、起こるべくして起こった事故と言えます。
事故当時、万博協会は「(1区以外では)可燃性ガスの発生はない」とし、その後も「ガス発生の可能性は極めて低い」と繰り返してきました。本紙は、メイン会場の2区・3区を通る地下鉄工事でメタンガスが検知されていた事実を指摘。5月末、協会はようやく事実を認めました。「いのち輝く」を掲げながら、危険なガス発生の事実を隠してきた協会の姿勢が厳しく問われます。
アクセスが夢咲トンネルと夢舞大橋の二つしかない夢洲で大規模災害が起きた際の避難計画もいまだにありません。6月に「防災実施計画」が一部明らかになりましたが、津波や強風のなか「孤立が想定される15万人を船舶などで近隣の舞洲や咲州に避難させる」などに対し現実性に疑問の声があがっています。
高さ20メートルの大屋根リングは「落雷の危険性が高い」と指摘されます。夢洲では強い毒性を持つヒアリ550匹が発見されています。
チケットが売れないなか大阪府は学校行事として児童・生徒を万博に参加させる「無料招待事業」を進めていますが、教職員組合などから事業の中止を求める声が上がっています。
メディアからも「こんな場所でなぜやるのか」と疑問が出ています。夢洲を会場にしたのはカジノ建設のインフラ整備に公金を投入するためです。万博をカジノの隠れみのにしたことが矛盾を広げています。
■さらなる負担増も
さらなる負担増も明らかになっています。各国が独自に建設する海外パビリオンの遅れから、協会が「簡易型」を9棟整備したものの移行が進まず、日本側が最大76億円を負担することを協会が明らかにしました。
チケット売り上げで賄う運営費は当初見込みの1・4倍の1160億円に増加。赤字になればなし崩しで国民負担になる恐れがあります。電子チケットに加え紙チケット導入を決めたことで事務経費21億円が追加されるなど一歩進むたびに負担がかさむ様相です。
「万博を中止し予算を暮らしに」「能登の復興に」の声を大きく広げましょう。