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2024年6月18日(火)

主張

客室乗務員の増配

安全最優先の見直しすすめよ

 7月から日本航空が、ボーイング787の客室乗務員を国の示す最低基準より増やし、すべての非常口へ配置します。安全の層を厚くする方針であり、歓迎します。国も航空会社の取り組みに応え、安全規制の水準を引き上げるべきです。

 日航は、今回の客室乗務員増配について、「1月2日に羽田空港で発生した海上保安庁機と日航機の衝突事故の教訓を踏まえた」と本紙に答えています。

 羽田衝突事故は、海保職員5人が亡くなる悲痛な事態になりましたが、日航機の乗客・乗員は全員脱出しました。当該のエアバスA350は、非常口8カ所に対し客室乗務員9人が搭乗していたことが重要だったと指摘されています。

■労組の要求が実る

 ところがボーイング787の場合、非常口8カ所より少ない客室乗務員7人という編成が存在します。国の示す配置基準が客席50席に1人となっていることに問題があります。ボーイング787は300席弱のため、客室乗務員6~7人でも許されています。

 航空労組連絡会や客室乗務員連絡会は長年、▽非常口ごとの客室乗務員配置▽客室乗務員に保安要員としての国家資格付与―を求めており、羽田衝突事故を機に国への請願署名を集めています。

 今年の春闘では、客室乗務員の日航キャビンクルーユニオン、パイロットの日航乗員組合、地上職の日航ユニオンの3労組が共通して、客室乗務員増配を会社に要求しました。

 世界でも緊急脱出時の客室乗務員の役割の重要性の認識が高まっています。国際民間航空機関(ICAO)は2017年、「客室乗務員の最低必要人数の設定に関するマニュアル」を作成。事故事例を検証し、各非常口に客室乗務員を配置するよう推奨しています。

 日航がボーイング787の客室乗務員増配を決断したことは、事故の教訓を踏まえ、労働組合の安全提案を受け止めたものとして評価できます。

 ただし、日航内の業務マニュアル上の最少客室乗務員数は変更されていません。コスト削減が優先課題になれば、ふたたび後退するおそれがあります。国の最低基準で歯止めをかける必要があります。国は、ICAOが推奨する各非常口への客室乗務員配置がすべての航空会社に広がるよう基準を見直すべきです。

■利益優先の転換を

 一方、日航はこの間、停止線オーバーなどの安全トラブルが連続し、国土交通省から厳重注意を受けています。

 11日に国交省に提出された日航の報告書は、労働者が受けていた「プレッシャー」を繰り返し指摘しています。定時運航などの高い目標を課したため、「落ち着いて安全活動に専念できる環境が十分につくれていなかった」といいます。

 日航では2010年の経営破綻の際に掲げられた「利益なくして安全なし」という利益優先の思想が、安全へ専念することを妨げてきました。

 日航は労働組合の安全提案を受け止め、労働者が自由にものを言える職場をつくることが必要です。

 国には、航空会社の取り組みを後押しする安全基準向上が求められています。


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