2024年6月15日(土)
きょうの潮流
ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館は、肉食恐竜のティラノサウルス・レックスの全身骨格標本が展示されていることでも知られています。国連のグテレス事務総長が先日、この博物館で演説しました▼「気候の事では私たちは恐竜ではなく、隕石(いんせき)だ」「私たちこそが危険なのだ」と。巨大隕石の衝突が恐竜絶滅の引き金になったとする学説を念頭において、人間は気候危機を進行させている当事者だとして、対策強化を訴えたのです▼世界気象機関の報告書は、今後5年間のうち、少なくとも1年は、世界の平均気温の上昇が産業革命前と比べて1・5度を超える確率は80%だとしました。温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」が掲げた1・5度目標に近づいているとの警告です▼グテレス氏は、「気候地獄」に向かう高速道路からの出口が必要だと指摘。「もっと激しくたたかうなら起死回生は可能だ」と述べています▼同氏が各国政府に正面から呼びかけたのは、温室効果ガスを大量に排出する化石燃料企業の広告禁止です。化石燃料企業は「恥知らずなグリーンウォッシュ(みせかけの環境対策)」を行い、広告会社などから支援され、積極的に対策を遅らせようとしていると▼ひるがえって岸田自公政権の政策です。まさにグリーンウォッシュそのもの。脱炭素を標榜(ひょうぼう)し、アンモニアと石炭を混焼させる技術で石炭火力の延命を計っています。世界で広がり、コストが急落する再生可能エネルギーや省エネへの政策転換は急務です。