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2024年5月29日(水)

主張

永住権の取り消し

人権侵害と外国人差別撤回を

 「想像してみてほしいのですが、私たちが税金未納を理由に日本を追い出されれば大問題になるはずです」―いま国会で審議中の入管法改定案について、弁護士の高橋済さんが本紙に寄せたコメントです。

 改定案は「永住許可制度の適正化」として、日本で永住者資格を持つ外国人が▽税金や社会保険料の未払い▽在留カードの常時携帯義務違反など入管法が定める義務を守らない―などの場合に永住者資格を取り消せる制度を新設。国や自治体職員が在留資格取り消しについて入管に通報できる制度も設けます。

 永住者資格は在留期限や就労制限がなく、家族関係の変化で失われることのない最も安定した在留資格です。日本の永住許可の審査は厳しく、原則10年以上日本で暮らし、安定した資産・収入がある、税金・社会保険料の滞納がない、などを審査されたうえで付与されます。

 永住者のなかには、戦前の植民地支配によって日本国籍とされ、戦後、国籍を離脱し母国に帰国した後、朝鮮戦争などで日本に再入国するという歴史的経過で永住者となった人、その2世、3世も多数おり地域に根差して暮らしています。

■内外人平等の原則

 病気や失業、経営難、高齢化などで税金や社会保険料を滞納することは誰にでも起こりえます。その場合は日本国籍者同様に生活保護などで支援する、あるいは督促、差し押さえ、行政処分など日本人同様に対応すればよいのです。

 政府は、日本が1979年に批准した国際人権規約にもとづき、外国人の地位・権利について「本規約で認められた権利を外国人にも等しく保障するよう努めている」とし、社会保障について「内外人平等の原則に立ち…国民と同様の社会保障を実施するよう努めている」としています。

 冒頭の高橋さんの言葉にあるように、日本で長年、納税の義務を果たし生活基盤を築いてきた人が、税金滞納で国を追い出され生活基盤を根底から覆されるのは、不利益があまりに大きく、人道に反します。内外人平等の原則に反する差別です。

 改定案は、永住者についてはこれまで強制退去事由とされていなかった、窃盗など1年以下の拘禁刑(執行猶予を含む)に処せられた場合も、在留資格を取り消すとします。1年以下の拘禁刑に当たる犯罪には軽微で違法性が弱いとされる事案も含まれます。法律違反をすれば日本人と同様の処罰をうけるわけで、在留資格を奪うことは外国籍だからという理由での過剰な制裁です。

 差別的・懲罰的なやり方は人権の軽視であり、永住者だけでなく、永住許可を申請しようとするすべての外国人の地位を著しく不安定にします。

■人権保障こそカギ

 憲法98条は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守(じゅんしゅ)することを必要とする」と定めています。

 差別的制度の創設は撤回し、司法判断も行政の運用も憲法と国際人権条約を遵守して外国にルーツを持つ人々の人権を守り、地域社会で共生していける法制度への抜本的な改正こそ必要です。


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