2024年5月25日(土)
主張
G7環境相会合合意
孤立化する石炭依存やめよ
深刻化する気候危機の対策として、化石燃料による発電の削減、とりわけ石炭火力発電からの一刻も早い離脱が求められています。
イタリアのトリノで開かれた主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合は、二酸化炭素の「排出削減対策のない」石炭火力発電を「2030年代前半ないし1・5度目標に整合する各国の温室効果ガス排出量実質ゼロに向けた時間軸」までに段階的に廃止すると共同声明で合意しました(4月30日)。日本を含めたG7の共同声明として石炭火力発電の廃止時期に言及したのは初めてで一歩前進です。
■石炭火力が3割
しかし、国連が先進国に30年までに廃止を求めていることを踏まえれば30年代前半でも遅すぎます。しかも、日本政府は「排出削減対策のない」という言葉の勝手な解釈によって石炭火力発電を温存しようとしています。
日本政府が固執する石炭火力発電は、化石燃料を使用した火力発電の中でも温暖化の原因である二酸化炭素を最も多く排出します。石炭火力発電は、現在、日本の発電量の3割を占めています。現行のエネルギー基本計画では30年時点でも総発電量の19%を石炭火力が占めます。
一方、日本と同様に石炭火力温存の姿勢だったアメリカが、昨年ドバイで開催された国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)で、石炭火力廃止を目指す脱石炭国際連盟に参加しました。同連盟に不参加なのはG7で日本だけになりました。
アメリカは先月、石炭火力発電所の温室効果ガスの排出量を、回収・貯留技術(CCS)で90%削減するか、できない施設は稼働を認めない規制を32年から導入すると発表しました。業界団体は「CCSはまだ経済性がなく導入する段階にない」としており、石炭火力発電は実際上廃止になる見込みだと報じられています。
日本の政策は、「グリーンウオッシュ」(見せかけの環境政策)だとの批判もあがっています。日本政府は石炭火力のアンモニアなどとの混焼や、CCSをあてにしてきました。これを「排出削減対策のある」ものとして、G7の合意にもかかわらず石炭火力発電を温存したいのです。
■未熟な技術前提
国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によれば、「排出削減対策がある」というのは、CCSにより二酸化炭素排出を90%以上除去できる対策があることをいいます。
アンモニアの混焼は計画通り順調にいっても20%混焼が開始される30年ごろに、その施設で二酸化炭素が20%削減されるにすぎません。50年ごろを計画するアンモニア専焼化まで石炭火力を温存することにほかなりません。
しかも、アンモニアは輸入を前提としており、製造の際に発生する二酸化炭素を考えれば、現状の計画は「排出削減対策がある」とは認められません。
CCSは技術的にも費用的にも実用化は進んでいません。気候危機打開のためには、すでにコストが低下している再生可能エネルギーに力をふりむけるべきです。