2024年5月24日(金)
無償化へ半額早く
学生ライフ 学費が圧迫
バイト月120時間 教科書は古本
高等教育予算が抑制されているなか、中央教育審議会の部会で伊藤公平慶応義塾長が「国立大学の授業料を150万円に」と提言し、東京大学で学費値上げが検討されるなど学費値上げの動きが加速しています。しかし、経済的に苦しく既にアルバイト漬けなどでぎりぎりの生活をしている学生は少なくありません。「これ以上の値上げは容認できない」と学生は口々に話します。(学生は仮名)
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東北地方で1人暮らしをする国立大4年生の木村佳織さん(22)。コロナ禍のオンライン講義の受講がうまくいかず留年したため、月5万円あった貸与型奨学金が4月から打ち切られました。実家からの月5万円の仕送りとアルバイトで生活しています。
早朝は時給が50円上がるため、1限目の授業のない日に週4回午前4時に起床して、午前5時から9時までアルバイトをしています。秋や冬はまだ暗い時間に下宿を出ます。秋には大学や住宅街にクマが出没。恐怖の中、クマに出合わないよう、ラジオをかけながらアルバイトに出かけました。「物価や電気代の高騰で大変です。ごはんが食べられて、眠れてという生活の根底が安定しないと勉強に集中できません」
信州大学3年の山中悠真さん(20)は、飲食店でアルバイトを週3、4回しています。平日は午後5時か6時から11時まで、休日は昼から深夜まで、計月120時間程働いて、1人暮らしの生活費をまかないます。
理系学部に通い、課題も多く出ます。バイトの後に1~3時間、課題の勉強をし、就寝は午前2時か3時。睡眠時間は5、6時間しか取れません。「学費は無償にするべきなのに、さらに上げるなどありえません。学内に立て看板を出して、値下げを求めたい」
値上げ43万円
2020年に学費が10万7160円値上げされた千葉大学4年生の海野航平さん(23)。4年間の値上げ分は約43万円にも。同大は値上げの理由に「全員留学」をあげました。「実際は渡航の際に10万円を補助されるだけです。10万円では海外に行けません。お金のない学生はオンラインで海外の提携校の授業を聞くだけ」と話します。「値上げが全国に波及するのをとめたい。学費は『受益者負担』と政府や自民党はいいますが、受益者は社会です。国が予算を出すのは当然です」
親戚から借金
東京大学では、有志が学費無償化プロジェクト「FREE東大」を結成。東京大学の学費値上げ反対と高等教育予算拡充の声明を出し、学内外で賛同を募っています。
メンバーで東京大学の理学部3年生の川村研さん(20)は、3人きょうだいの2番目。3番目と双子のきょうだいです。昨年まできょうだい3人が実家を出て大学に通っていました。
「ぼくたち双子が入学したときの初期費用は、両親が親戚からお金を借りて何とかしてくれました」。現在、貸与型奨学金を利用しています。学費や家賃、水光熱費は親が払いますが、その他の生活費、教科書代は奨学金でまかないます。仕送りはありません。「卒業したら数百万円の奨学金を返済しなければなりません。将来、研究職に就きたいと思っていますが、任期が短いとか給料が低いと聞き不安です」
奨学金は、主に食費に消え、教科書は古本しか買っていません。服にお金をかけず、中学時代の服を今でも着ています。「学費を抜本的に減らし、奨学金は給付型を広げてほしい。教育を受ける権利と学問の自由を保障するために高等教育予算を増やすことを求めていきたい」(染矢ゆう子)