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2024年5月21日(火)

戦争憎い 自民を取り換え

ロックミュージシャン うじきつよしさん

 「子供ばんど」のボーカルでロックミュージシャン、うじきつよしさん(66)は、歌詞やX(旧ツイッター)などで「戦争絶対反対」「守り抜け自由」と自民党政治への怒りを表現しています。政治への意見を表明しにくい雰囲気があることを憂え、「声を上げよう」とも呼びかけています。その思いとは―。(三浦誠)


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(写真)撮影・橋爪拓治

 うじきさんの父親(2018年に97歳で死去)は陸軍士官学校を出た職業軍人でした。敗戦後はB級戦犯としてベトナムと巣鴨プリズンで計8年間収監されています。父親のことを歌った曲「Shameless People」(恥知らずな人々)には、「すべては幻と 老兵はつぶやく 彼の人生は 二度と戻らない」「なぜに許される? 俺にはわからない」という一節があります。戦争を引きずる父親への葛藤が歌詞になっています。

「反対」というと

 「僕は戦争そのものを憎んでいます。でも戦争反対というと会話が止まる。ネットで『きれいごとだ』と突っ込んでくるやつも出てくる。でもね、それを承知であえて言わないといけない」

 5月6日に東京・下北沢であった子供ばんどのライブで、うじきさんは「不屈」とプリントされたTシャツを着て熱演しました。沖縄県で祖国復帰運動の先頭にたった故瀬長亀次郎さん(日本共産党元副委員長)が残した資料など沖縄民衆の闘いを後世に伝える資料館「不屈館」のTシャツです。

 「今日も着てきたよ。『赤旗』のインタビューだし。カメジローさんを知らなかったんだけど、沖縄に通ううちに後追いで知ってね。沖縄は唯一地上戦でたくさんの方が亡くなった。直接的な痛みを知っている場所です。それすらも伝える人が減っていくと、どんどん忘れられていく。怖いね」

選挙の前に検挙

 自民党派閥の裏金事件についても、「少なくとも現状、85人もの犯罪者が蠢(うごめ)く政党が、未(いま)だ政権政党に居座っている無法社会」と、Xに辛辣(しんらつ)な投稿をしています。

 「自民党が腐り果てている。罪を犯しているものが裁かれないまま、国権の最高機関である国会にいる状況は異常です。選挙の前に検挙だろ! 自民党に反省を促す段階ではなく、取り換えないといけない」

 以前「赤旗」の取材を受けた時は、共産党という名前がひっかかるので「レインボー党に改名したら」と提案したといいます。

 「最近は『レインボー党』に変えなくても、裏金の追及や国会での議論をみて皆さんが共産党のことを分かってきているのでは。僕はね、志位(和夫日本共産党議長)さんに、『自民党にまかせたら、にっちもさっちもいかない。私たちが政権をとるからみんな協力してくれ。一緒に新しい日本をつくろう!』と露骨にアピールしてほしい」

声上げよう 一寸先は未来

温かい心欠落した政治に憤り

怒りを前進のパワーに変える

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(写真)ライブ後に観客の歓声にこたえる子供ばんどのメンバーら。中央がうじきさん=6日、東京都世田谷区(三浦誠撮影)

 うじきつよしさんは、正月の地震で甚大な被害をうけた能登半島を4月末に訪れています。これまでも東日本大震災の被災地をボランティアで訪問するなど、被災者支援に取り組んできました。復旧が進んでいない能登半島の状況について、うじきさんは目に涙を浮かべながら、憤りを語ります。

4カ月たっても

 「地震から4カ月たっても、壊れた住宅の解体とかまったく進んでいない。避難所では温かい食事をとるのも大変です。避難所にいるとつらいと自宅に帰ったお年寄りたちも。一人では何もできない方もいるのですが、行政の支援がまったく足りていない。やっと復旧した水道も自宅敷地の配管は自分で修理しろという。おかしいよね。大嫌いな言葉だけど『自己責任』を(政府が被災者やボランティアに)押し付けている。それが志をもって国をつくっていこうと政治家になった人のやることですか」

 50年以上自転車を愛好し「チャリダー」と名乗っています。4月末に開かれた「頑張ろう北陸! つながる富山と石川 復興応援ライド」に参加。富山県氷見市を出発し、石川県七尾市、中能登町、羽咋市を回る約75キロのサイクリングです。

 「自転車を大好きな被災者が4カ月以上乗れていない。自転車がつぶれたりしてね。その方たちと段差ができた道を通り、傾いて入れなくなった家を見せてもらいながら走りました。終わったら、皆さんの表情が違っていたの。『もやもやがとれた』と。こっちも心が温かくなる。元気をもらったという感じ。お互いに思いを寄せ合うって、すてきなんです。でも、政治にそこが欠落している。国の代表が、何を差し置いても能登を救うんだとやればね、みんなの心が少しは温かくなる。そんな基本がなんで分かんないのだろう」

犯罪集団が改憲

 今年5月3日の憲法記念日には「邪悪な犯罪者集団が、更に憲法にまで手をつけようとしている。僕らの国を導く誠実さなど、1ミリもない」とX(旧ツイッター)に投稿しました。

 「軍事費とかいって、型遅れの兵器を米国から買わされ、どんどん金がかかる。今度は戦闘機、兵器を輸出するという。発砲こそしていないけど、これは政府による軍事クーデターですよ」

 安倍晋三首相(当時)が集団的自衛権の行使容認を閣議決定(2014年)した翌年に、子供ばんどはアルバム「ロックにはまだやれることがあるんじゃないのか」を出しました。収録曲の「Blackbirdがないた時」には、「君はついに声を上げた」というフレーズがあります。

 「声を上げよう、声を上げてほしいという意味ですね。炭鉱のカナリアでなくても、“掃きだめのカラス”になろうと。僕はカラスでいい、声もきたねえし(笑)。家でニュースを見ながらよく『バカヤロー!』って言っている。岸田文雄首相とは同い年なんですが、同年代としてなんか責任を感じるんです」

どん底でも空が

 同じアルバムに収録されている「U―Ha―E.」(うはえ)は、「たまには 空でも 見上げなよ ガックリうつむいてないでさ」「諦めないぞ 一寸先は未来 明日は未来」という詩があります。「前向きな歌ですね」と問うと、ゆっくり目を閉じ柔らかな笑みを浮かべて、こう語り始めました。

 「大好きな先輩の作詞家、島武実(しま・たけみ)さん(故人)と一緒につくった詩です。冒頭は2世議員をサラブレッドの偽物と皮肉ってます。島さんが曲名を『U―Ha―E.』としたのだけど、最初は意味が分からなくて。実は、カタカナにすると『ウハエ』。並べると漢字の『空』になります。絶望のどん底でも空はある。その空を暗い空にしちゃうか、いくしかないという空にするかは、気持ち一つで変わる。怒りも前に進むパワーに変えていかないと、損をしちゃいますよね」

 うじきつよし 1957年東京都生まれ。80年に「子供ばんど」でメジャーデビュー。ボーカル、ギター。88年バンド休止。その間も俳優や司会者などで活躍。2011年にバンドを再開。


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