2024年5月20日(月)
主張
賃金減少過去最長
大企業の内部留保の活用こそ
実質賃金の低下が止まりません。厚生労働省が発表(9日)した3月の毎月勤労統計調査によると、実質賃金は前年同月比2・5%減で24カ月連続の減少です。比較可能な1991年以降で過去最長となり、2008年のリーマン・ショック時の記録を抜きました。
一方、上場企業の純利益の総額は3年連続で過去最高となる見通しです(SMBC日興証券まとめ)。日本経済のいびつな姿が表れています。
■値上げ圧力が続く
実質賃金の減少は、歴史的水準に達する円安で、輸入価格やエネルギーと資源価格などが高騰し、賃金の伸びが追い付いていないためです。物価の変動を示す3月分の消費者物価指数(総合指数)は前年同月比で2・7%の上昇です。
とくに生活必需品の高騰が生活への打撃になっています。民間信用調査会社の帝国データバンクによると、5月の食品値上げは417品目にのぼり、年間では予定を含め7000品目を突破しています。しばらく一服していた「原材料高」を理由とした値上げが円安の進行を背景に再燃しており、帝国データバンクは、値上げ圧力は高止まりが続くと分析しています。
実質賃金をより長期で見ると、1996年の445万円をピークに低下傾向をたどり、2023年には371万円と、74万円もの減額となっています。
円安で、庶民が食料品などの値上げに苦しみ、下請け中小企業がエネルギーや原材料の高騰にあえぐ一方、製造業の輸出大企業や商社などは大もうけしています。
トヨタ自動車は、24年3月期に円安で営業利益を6850億円押し上げました。営業利益は前期の約2倍となる5兆3529億円です。日本企業の最高額を塗り替え、初めて5兆円の大台に乗せています。三菱商事は、円安で利益を700億円押し上げ、同期の純利益で最高益だった前年に次ぐ9640億円をあげています。
こうした利益を集めた結果として大企業の内部留保は、23年10~12月期に530・5兆円に達し、アベノミクス開始前の12年同期の320・4兆円から210・1兆円増加しています。
■中小企業支援こそ
岸田文雄首相は、「所得と成長の好循環に向けて…手を打ってきた」「今年、物価上昇を上回る所得を必ず実現する」(3月28日、首相会見)とのべましたが、賃上げ政策として実際にやっているのは中小企業には使いにくく実効性が無いものばかりです。
岸田首相は、「中小・小規模企業における十分な賃上げによってすそ野の広い賃上げが実現していくことが大切」(政労使会議、3月31日)とものべていますが、今年度予算では中小企業対策費を削減しています。中小企業の賃上げの原資となる価格転嫁への対策は、重層的な下請け構造のもと、人員的にも政策的にも不十分です。
日本経済のまともな発展のためには、これらの問題の改善とともに、大企業の内部留保に時限的に課税し、その資金で社会保険料の減額など直接支援で日本の雇用の7割を占める中小企業の賃上げを実現することが必要です。