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2024年5月10日(金)

離婚後「共同親権」民法改定案

熊上崇参考人の陳述(要旨)

参院法務委

 和光大学現代人間学部の熊上崇教授が7日の参院法務委員会で、離婚後に「共同親権」を導入する民法改定案について行った意見陳述の要旨は次の通りです。


 2013年まで19年間、家庭裁判所調査官として勤務してきました。法案の「共同親権」では、子の転居、教育や医療について父母双方の合意がないと、子どもは希望する進学をすることや医療を受けることができません。一方の共同親権者が拒否すれば、「急迫の場合」以外は進学や医療を受けることができず、子どもにとって不利益なのではないでしょうか。

 まずは子どもたちの声を聞くべきです。子どもたちのことを子ども抜きで決めるべきではありません。私の知る限りでは、「共同親権」を望む声はありませんでした。離婚家庭の子どもたちは「共同親権」を望んでいないのではないでしょうか。

 法案に子どもの意見表明権や意思の尊重が含まれていないことも問題です。私は、面会交流していた子ども299人、していなかった子ども250人の調査を行いました。面会交流の有無にかかわらず意思が尊重されない場合に、つらさ、苦しさ、怒り、憎しみなど心的負荷が多く回答されています。子の意思の尊重は必須です。

 法案は家裁が「単独親権」とする条件として、DV(配偶者などからの暴力)やその恐れがあり、双方の話し合いが困難であるときとしています。家裁はDVを完全に認定除外することはできていません。家裁の手続きを利用した1147人の調査で「年に4回ほどの暴力は大したことではない」などと言われた経験が記されています。家裁でDVが完全に除外されずに面会交流が実施され、子どもが体調を崩したり、おねしょや自傷行為などをしたりするケースもあります。

 法案では法定養育費の金額が明示されていませんが、低額と見込まれます。海外では面会交流を促進すれば、養育費の支払い率が高いと紹介されていますが、例えば米国では養育費を払わないと運転免許証やパスポート停止などの制度があります。同居親が別居親の合意を得る制度としての「共同親権」だけがつくられ、なぜ別居親の養育費不払いはそのままなのか。著しい不平等性があります。

 子どもが安心して過ごせる環境整備が子どもの利益になります。進学や医療で合意がもらえないかもしれない、家裁にその都度行かなければいけないかもと不安にさせ、諦めさせることがあってはなりません。「共同親権」を導入するなら、子どもの意見を尊重することを前提に、父母が対等に合意したケースに限って認めるべきです。法案が子どもを泣かせることはあってはならないと考えます。


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