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2024年5月8日(水)

経済秘密保護法案

井原聰東北大名誉教授の意見陳述(要旨)

参院内閣委

 井原聰東北大名誉教授が7日の参院内閣委員会で行った経済秘密保護法案についての意見陳述の要旨は次の通りです。


 米国で発達してきた軍事制度の一部ともいえる「セキュリティー・クリアランス(SC、適性評価)」制度を、日本では軍事には関係ないとことさらに強調されることに警戒心を持たずにはいられません。

 これまでの衆参内閣委員会の議論では、「法案成立以降、有識者に意見を聞いた上で運用基準を策定し閣議決定する」というフレーズが政府側答弁で多出しました。本法案の肝ともいうべき重要な内容が具体的に示されず、「運用基準」で決めていくという議会制民主主義を形骸化する法案審議に驚きを禁じ得ません。「政府に丸投げの法案ではありませんか」と詰問する議員もいました。法の枠組みだけが示され、政府の恣意(しい)的な運用を可能にする建てつけになっています。

 学術分野でも研究のプライオリティー(優先度)を確保したり、各種共同研究実施に関わって秘密保持契約が結ばれることがあります。大学や研究機関にとってどのような内容を秘密保持に盛り込むのかは個別具体的ですが、こうしたものに具体的基準もなく手を突っ込むSC制度は、学術研究体制に大いなるかく乱をもたらすことになります。また適合事業者はどのようにピックアップするのか、手続きや基準も示されていません。一部の研究目利きに下駄を預けるとすれば、先端分野の食い散らかしが起き、結果としてますます日本の研究力の劣化が進行するでしょう。

 本法案は軍事研究とは関係がないと政府は述べていますが、「米国重要新興技術国家戦略」(2020)に示された重要技術分野をそっくり取り込んだ日本の特定重要技術開発は、まさに日米の国家戦略の線上にあり、岸田・バイデン共同声明による日米共同研究・開発はそのことを明瞭に示すものとなりました。シームレスな共同研究のためにも、それに参入しようとするスタートアップ企業や軍需工業部門にとって、SCが不可欠となっているといえます。

 本法案は特定秘密保護法の大幅な拡大版といえるもので、研究者が引き返せないような危険な仕掛けと、学術体制をかく乱し、研究力は言うに及ばず、産業の健全な発展をも阻害することが危惧されます。また多くの事業者の経営情報を報告させ内閣府に一手集約する前代未聞の仕組みは、経済の国家統制への仕掛けともなり得る危険をはらんだもので、廃案を強く求めます。


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