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2024年5月8日(水)

主張

ゼロ歳児の選挙権

子どもの人格否定と世代分断

 「ゼロ歳から選挙権をもって成人になるまで親が代理行使する」―日本維新の会の吉村洋文・大阪府知事の4月25日の会見での発言です。少子化問題の抜本解決、「次世代が政治的な影響力を持つ」ためだとし、「僕は子ども3人だから4票の影響力があることになる」とのべました。

 同党政務調査会長の音喜多駿参院議員も自身のブログで、ゼロ歳児選挙権に「個人的にもっとも期待」しているとのべています。

■親が代行して投票

 選挙権年齢未満の子どもに投票権を与え親が代行する方式は米国の人口統計学者のポール・ドメイン氏が提唱したものです。少子高齢化で高齢者層向けの政策が優先され、若者や子育て世代の声が反映されないという考えにもとづきます。

 しかし、この考え方には大きな問題があります。

 なにより、子どもの人格、権利の否定だということです。ゼロ歳児であっても親とは別人格です。ましてや成長・発達にともない、当然、支持する政策や政党などについて自らの考えを持ちます。

 親の代理投票は、子どもに親の考えを押し付け、子どもを親の従属物かのように扱うもので、「締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する」と定める子どもの権利条約に反します。

 子どものいる人にだけ複数の投票権を認めるのは、憲法が定める「法の下の平等」にも反します。

 吉村氏は当然のように「僕は子ども3人だから4票」と言います。妻の意思を顧みない、吉村氏の家父長的感覚も露呈しています。

■高齢者優遇なのか

 そもそも、ゼロ歳児選挙権は、限られた財源が高齢者に優先的に使われ次世代が割を食っているという、世代間を対立させる発想に立つもので、その考え方自体が誤りです。

 政府は世代間対立をあおり、介護、年金、医療切り下げの口実にしています。しかし、それら諸制度の改悪は「自己責任論」を強め、現役世代の将来不安を増大させます。「自分たちは負担だけして、年を取った時にはそれに見合うサービスを受けられない」という不満も、制度切り下げから生じています。

 親を支える現役世代の負担も重くします。まともな公的サービスを受けられなければ家族が支えざるを得ず、介護離職、民間サービスを買わなければならないなどの事態を招きます。

 年金が家計最終消費支出の2割を超す県は13にのぼり、年金が減れば消費が冷え地域経済は疲弊します。一方、介護制度の充実は従事者の賃金アップにつながり地域経済に貢献します。

 子育て世代への支援が足りないのは高齢者優遇のせいではありません。米国言いなりの大軍拡と財界最優先のためです。政府は5年間で43兆円の大軍拡をすすめ今年度の軍事費は約8兆円、前年度比1・1兆円増です。特定大企業には1社で約1・2兆円もの補助金を投入します。2・5兆円あれば大学・専門学校の学費半額と入学金廃止、小中学校の給食費・高校授業料の無償化などができます。

 世代間対立を持ち込み、真の問題から目をそらせる議論を厳しく退けなければなりません。


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