2024年5月5日(日)
主張
子どもの権利
子どもの声を聞き尊重しよう
今日は「こどもの日」です。ガザやウクライナで命の危機におびえる子どもたちの姿に心を痛めない日はありません。どの子も戦争や暴力におびえず幸せに生きる権利をもっています。
■権利条約批准30年
それを保障した子どもの権利条約が1989年、国連で採択されました。今年は、94年に日本政府が条約を批准して30年の節目の年です。
子どもに対する痴漢・性暴力、子どもの自殺、不登校の急増など、子どもを取り巻く環境の深刻さがクローズアップされ、少子化対策を含め、子ども施策は国政の重点課題の一つに変わってきました。
昨年4月、こども家庭庁が設置され、こども基本法が施行されました。こども基本法が、子どもの権利条約にのっとって、▽基本的人権が保障される▽年齢や発達段階に応じて自己に直接関係するすべての事項について意見を表明する機会が確保される―と規定していることは重要です。
昨年末、閣議決定された「こども大綱」では、こども・若者を権利の主体とし、意見表明と自己決定を年齢や発達段階に応じて尊重し、こども・若者の最善の利益を第一に考えることを政府のこども施策の基本的な方針としています。
しかし、10~18歳を対象にした「こども1万人意識調査」(日本財団、昨年5月)では、子どもの権利条約について「聞いたことはない」が59%でした。批准から30年を経ても、権利の当事者である子どもの多くが子どもの権利について知らされておらず、理解されていない状況です。
「守られていないこどもの権利」は何かの問いに、「こどもは自分に関することについて、自由に意見をいうことができ、おとなはそれを尊重する」が12%と最も高かったことも見過ごせません。
文科省は、子どもの意見表明権について「必ず反映されることまでをも求めているものではない」とした通知(1994年5月20日)について、4月の参院決算委員会で撤回の必要はないと答弁しました。これでは「どうせ言っても意味がない」と意見を言うのをあきらめさせてしまいます。
■大人側にある義務
成長発達の段階でうまく言語化できないことを考慮して、意見・意思をくみとる責任が大人の側にあります。子どもの意見表明権は、大人に子どもの意見を聞く義務を課すものです。
日本政府は子どもの権利を根付かせる努力を怠り、国連子どもの権利委員会から過度に競争的な教育システムが子どもの発達をゆがめていると繰り返し勧告を受けてもほごにしてきました。こども基本法や大綱を実現するためには、これまでの政府の施策への反省は不可欠です。
「大人は怒らずに最後まで話を聞いてほしい」「大学など授業料が高い。もっと安く」「昼食の時間が短い」。日本社会で特に聞かれていないのが子どもの声ではないでしょうか。国会で審議中の共同親権についても、子どもの意見表明権が明示されず、子どもの声が置きざりにされたままです。子どもの権利条約の原則を子どもに関わるすべての施策、社会全体にゆきわたらせることが必要です。