2024年4月26日(金)
主張
嘉手納降下訓練
必要だと言うなら米国でやれ
「必要な訓練だと言うなら米本国で実施しろ」「日米合意さえほごにするのか」―。米軍が、沖縄県や地元自治体の再三にわたる中止要請を無視し、5カ月連続で嘉手納基地(同県嘉手納町、北谷町、沖縄市)でのパラシュート降下訓練を強行し、怒りの声が上がっています。日米両政府は嘉手納基地での降下訓練を「例外的な場合」に限り認めていますが、5カ月連続での実施は「もはや常態化している」(玉城デニー知事)ことを示しています。「例外」だと言い逃れることは許されません。
■例外でなく常態化
嘉手納基地でのパラシュート降下訓練は、昨年12月に3年半ぶりに強行されました。それ以降、今月まで毎月1回ずつ5カ月続けて実施されています。こうした事態は初めてです。
かつて沖縄での降下訓練は、読谷補助飛行場(読谷村、2006年返還)で行われていました。1965年にパラシュートで投下されたトレーラーの下敷きになり小学校5年生の少女が圧死した悲惨な事故をはじめ、72年の沖縄の本土復帰後も、民家や農地への兵士や物資の落下など被害が後を絶たず、県や同村は廃止を求めていました。
95年に沖縄で米兵による少女暴行事件が発生し、県民の怒りが爆発したのを受け、米軍基地負担を軽減するためとして日米両政府が設置した「沖縄に関する特別行動委員会」(SACO)は96年に報告書をまとめます。その中で、米軍のパラシュート降下訓練については、読谷補助飛行場から伊江島補助飛行場(同県伊江村)への移転を決めました。結局、基地の負担・被害を県内でたらい回しするだけのものでした。
米軍は伊江島補助飛行場への移転後、嘉手納基地でもパラシュート降下訓練を強行するようになります。2007年には、米軍地位協定に基づき日米両政府が設置している合同委員会が、嘉手納基地を「例外的な場合に限って使用する」ことを確認しました。
防衛省は今回の5カ月連続の降下訓練について「例外」に該当するとし、米軍を擁護しています。「例外」と判断する理由として、▽伊江島補助飛行場の滑走路の状態が悪く、修復工事が必要▽定期的ではない―などとしています。
しかし、滑走路の修復は少なくとも数カ月かかる見込みだとされています。これまでの5カ月連続にとどまらず、今後も嘉手納基地で降下訓練が継続して行われる可能性が高く、「定期的ではない」に当てはまらないことは明らかです。米軍が滑走路の修復工事を急ぐ様子がないことも、嘉手納での訓練を当然視していることをうかがわせます。
■日本防衛とは無縁
嘉手納基地では、退役するF15戦闘機に代わる新たな戦闘機や、県外から飛来する外来機などの訓練、昼夜を問わないエンジン調整などにより騒音被害が激化しています。加えてパラシュート降下訓練の常態化は、周辺住民に一層過重な基地負担を背負わせます。
米軍のパラシュート降下訓練は、主に敵地に特殊作戦部隊を侵入させるためです。「日本防衛」と無縁なばかりか、住民の命と安全を危険にさらすもので、全面的に中止すべきです。