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2024年4月22日(月)

主張

スポーツ賭博

もうけ優先の解禁 犠牲は国民

 ギャンブルがスポーツや社会、人間性を蝕(むしば)む現実を浮き彫りにしています。米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の元通訳・水原一平容疑者による違法賭博事件です。

 同容疑者はスポーツ賭博の借金返済のため、大谷選手の口座から24億5千万円あまりを不正送金していました。2年間で約1万9千回の賭けを行い、損失総額は62億円余に上ります。

 米連邦地検の訴状には、胴元に「賭けの上限額引き上げ」を頼み、深みにはまるギャンブル依存症の生々しい姿が示されています。

■米は解禁で急拡大

 犯した罪はぬぐいようもありません。しかし、賭けが氾濫する社会環境に目を向ける必要があります。米国では2018年にスポーツ賭博が解禁されました。それまでは原則禁止でしたが、連邦最高裁が連邦政府に規制する権限はないと州に権限を委ねました。

 それによって50州中38州が解禁したのは、州の税収増となるからで、その額は21年までに約1700億円となっています。併せて賭博産業も巨大ビジネス化し、昨年の収益は約1・6兆円に上っています。

 公認業者の宣伝合戦が起き、テレビ中継に賭け情報があふれます。スマートフォンなどで手軽に賭けられることで、若者の依存症が社会問題化しています。米問題ギャンブル全国協議会は成人250万人が重度の状態と公表。18年からの3年間で依存症リスクが3割アップしたといわれます。

 スポーツ現場への影響も深刻です。17日、米プロバスケットボール協会(NBA)の選手がスポーツ賭博に関わる情報を漏らし永久追放になっています。NBAでは3月、賭けに参加した一般の人が、チームの監督を脅迫する事件も起きています。

■日本で導入の動き

 問題はこれが対岸の火事ではないことです。

 日本には01年からサッカーのJリーグを対象にしたスポーツ振興くじがあります。刑法では賭博を禁じているため、競馬や競輪同様、特別法で例外的に認め公営賭博として実施。売り上げが思うように伸びず、一昨年のバスケットボールに加え、プロ野球を対象にする動きも強まっています。

 その上、米国のような民間のスポーツ賭博導入が画策されています。スポーツ庁は昨年から中学校の休日の部活動を地域に移す取り組みを始め、財源に「スポーツベッティング(賭博)の可能性」を挙げています。教育に関わる財源を賭博のあがりで賄おうとする驚くべき発想です。

 同庁と経済産業省が研究会を重ね、自民党のスポーツ立国調査会やIT関連企業も含めた政財官一体で推進しようとしています。

 米国の現状を見る限り、もうけ優先で規制緩和を続ける新自由主義的な施策によって、多くの依存症を生むなど犠牲になるのは国民の側です。スポーツもその根幹が傷つけられ、ゆがめられることが明瞭です。

 ギャンブル大国といわれる日本では6年前、カジノを解禁したばかりです。これ以上、賭博を増やすことの愚は論をまちません。今回の事件の教訓は、有害なスポーツ賭博は決して解禁すべきでないということにほかなりません。


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