しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2024年4月21日(日)

主張

国立大法人化20年

失敗を検証し抜本的な転換を

 「教育研究の土台を壊す」―多くの大学関係者の反対を押し切って、自公政権が国立大学を法人化してから20年がたちました。懸念は現実のものとなり、「法人化は失敗した」という評価はメディアでも一致しています。失敗を検証し、大学政策を抜本的に転換することは急務です。

 法人化は、小泉政権による「大学の構造改革」(2001年)の梃子(てこ)として打ち出されました。「経済再生のため…世界で勝てる大学をつくる」として、大企業などにより短期的に実用化できる研究成果を生み出す大学を重点的に育て、それ以外は切り捨てる「選択と集中」を推進しました。

■研究の環境を破壊

 国立大学は、人件費や光熱費などにあてる運営費交付金が20年間で1631億円(13%)削減され、大学外から調達する競争的資金に依存せざるを得なくなりました。資金獲得の書類作成に忙殺され、教育や研究のための時間は減っています。地方の国立大学は存続さえ危ぶまれる経営困難に直面し、最低限の研究費すら確保できない状況です。

 国立大学だけで約2万人の常勤教員が任期付きに置き換わり、腰を据えて挑戦的な研究を行う環境がなくなってきています。そのため注目される質の高い研究論文数は、20年前の世界4位から13位に転落しました。法人化は大学の活力を弱めただけでした。それが、研究力の低下という現実となって表れています。

 法人化の問題点は、大学の設置者を国から法人に移し、国の財政責任を後退させるとともに、国の大学への統制を強めるコストカット型の「選択と集中」を可能にしたことです。

 「選択と集中」は、国公私立大学にわたって及んでいます。定員割れの私立大学に対する経常費助成を減額するペナルティーを強化し、地方や中小の大学をつぶそうとしています。

■予算増やす諸外国

 日本は大学予算を抑制していますが、諸外国は大幅に増やしています。2000年を1として各国通貨による大学部門の研究開発費の名目額を見ると、日本は1・0で伸びていません。一方、米国2・8、ドイツ2・5、フランス1・9、中国19・0、韓国6・0と大きく伸ばしています。

 国立だけでなく公立私立大学に対する国の財政責任を強化し、大学予算を増額に転じる改革が急務です。

 国立大学運営費交付金には人事院勧告に準拠して人件費を増やす仕組みがありません。かつて国立大学は「積算校費」の単価増額で物価高などに対応し、教職員給与を増やしてきました。

 岸田政権は「賃金が持続的に上がる好循環」「コストカット型経済からの脱却」をうたっています。ならば、国立大学交付金や私大助成を増額し、学費値上げに頼らず正規雇用の教員を増やせるようにして研究力の回復をはかるべきです。

 日本はGDP(国内総生産)が世界4位なのに、高等教育予算はOECD(経済協力開発機構)加盟38カ国で最下位クラスです。これが高学費の原因であり、少子化の要因です。少子化を理由に大学の再編・統合を迫るのではなく、経済力にふさわしく大学予算を拡充することこそ求められています。


pageup