2024年4月12日(金)
主張
日米首脳共同声明
危険な安保大変質に未来なし
岸田文雄首相とバイデン米大統領は10日、米ワシントンのホワイトハウスで会談し、「日米首脳共同声明」を発表しました。
共同声明は、敵基地攻撃能力の保有をはじめ、岸田政権が憲法の平和主義をじゅうりんし強行してきた数々の安全保障政策の大転換を持ち上げ、今後も、米軍と自衛隊のシームレスな(切れ目のない)統合など、憲法破壊の一層危険な政策を推し進めていくことを表明しました。
声明のタイトルは「未来のためのグローバル・パートナー」ですが、それが指し示す方向は、アジア太平洋地域の分断と軍事的緊張を激化させ、平和と安定を脅かす未来なき道です。
■戦争国家化を加速
今回の岸田首相の訪米は、米国の招待による国賓待遇での公式訪問です。日本の首相としては、2015年4月の安倍晋三氏以来9年ぶりです。両氏の公式訪米はいずれも、戦後日本の安保政策を大転換したさなかに行われ、「戦争国家づくり」をさらに加速する跳躍台となっています。
安倍氏の公式訪米は、歴代政府が憲法違反としてきた集団的自衛権の行使を認める閣議決定(14年7月)の翌年でした。安倍氏は首脳会談や米議会での演説で、閣議決定に基づき、海外での米軍の戦争に自衛隊が参戦することを可能にする安保法制=戦争法の成立を誓約しました。
岸田氏の公式訪米も、歴代政府が違憲としてきた敵基地攻撃能力の保有などを盛り込んだ安保3文書の閣議決定(22年12月)を受けたものです。
米国のエマニュエル駐日大使は岸田氏の国賓待遇での米国招待について、安保3文書に明記された軍事費の国内総生産(GDP)比2%への増額や敵基地攻撃能力の保有、そのための米国製巡航ミサイル・トマホークの購入を挙げ、「岸田政権は2年間で、70年来の(日本の安全保障)政策の隅々に手を入れ、根底から覆した」と述べています(「産経」5日付)。
実際、共同声明も、安保3文書に基づく「防衛力の抜本的強化」の取り組みが「日米の防衛関係をかつてないレベルに引き上げ、日米安全保障協力の新しい時代を切り拓(ひら)く」などと強調しています。
■阻止の国民運動を
重大なのは、共同声明が日米同盟をさらに危険な段階に引き上げ、大変質させようとしていることです。
岸田政権は、安保3文書に基づき、陸・海・空自衛隊を一元的に指揮する「統合作戦司令部」を24年度中に創設します。これを踏まえ、共同声明は、「日米同盟をさらに前進させる」とし、米軍と自衛隊の作戦や能力をシームレスに統合し、平時でも有事(戦時)でも共同して計画を練り、一体となって動けるように、「それぞれの指揮・統制の枠組みを向上させる」と表明しました。
狙いは、米軍が進める対中国軍事戦略に、長距離ミサイルなど敵基地攻撃能力を持ち、南西地域での態勢強化を図る自衛隊を組み込むことです。平時から自衛隊が米軍の指揮下に置かれ、有事になれば有無を言わさず動員される危険があります。急加速する「戦争国家づくり」阻止の国民的な運動が求められます。