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2024年4月4日(木)

「共同親権」民法改定案

岡村弁護士の意見陳述(要旨)

衆院法務委

 衆院法務委員会は3日、離婚後「共同親権」を導入する民法改定案についての参考人質疑を行いました。岡村晴美弁護士の意見陳述の要旨は次の通りです。


 DV(配偶者などからの暴力)事件を担当してきた弁護士として、反対の立場から話します。

 日本では男女賃金格差が大きく、性別役割分業意識が残り、経済的劣位に置かれる女性の多くは、DVを受けても子どもを育てるために我慢を重ねる現状があります。DVの本質は支配で、暴力は手段です。

 DVに関する無理解のもと、子連れ別居を実子誘拐などと非難する風潮が生まれています。DV被害者に対する誘拐罪での刑事告訴や、配偶者や子の個人情報の公開など加害行為が別居後もエスカレートするケースが増えています。離婚や別居でDVが終わる時代は終わりました。

 2010年代以降、家庭裁判所は面会交流を積極的に推進してきました。DVや虐待、子の拒否も軽視される運用がされました。面会交流時の殺人事件や、性的虐待事件も起きました。面会交流は子のために良いものという推定のもと、弊害を生じさせてきました。親権の共同は子どものために良いものという推定に基づき、原則「共同親権」と解釈することは子どもの利益を害します。

 現行法では離婚後の同居親が子どものことを決める場合、単独で決めることも別居親と一緒に決めることもできます。しかし「共同親権」が適用されれば、単独での行使は例外事由に当たらない限り許されません。単独行使できるか、単独行使が違法になるかが「共同親権」問題の正しい捉え方です。裁判所がDVや虐待を見抜けずに「共同親権」を命じれば、加害が継続するということを深刻に捉える必要があります。

 「共同親権」制度は自由を広げる制度ではありません。相談して決めることができる人には必要がなく、対立関係にある人ほど強く欲する制度です。親権の共同行使の合意すらできない父母にそれを命じてもうまくいきません。DVや虐待が除外されなければ「共同親権」は支配の手段に使われる可能性がありますが、抑止策はないに等しいのが現状です。

 最も懸念されるのは、「共同親権」制度が適用された場合、他方の親の許可をとらなければ違法とされ、慰謝料請求されることです。裁判所の人的、物的資源の拡充もなく規定が先行することも大きな懸念です。現状でも家裁はパンクしています。過重な事件を抱えた家裁が迅速に審議を進めようとすれば、原則「共同親権」の運用に流れ、弱い方に痛みが強いられ、子やDV被害者の意見が封じられることになります。


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