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2024年4月4日(木)

経済秘密保護法案 成立急ぐ政府・与党

米・財界が望む武器商人国家に

塩川衆院議員に聞く

 「秘密の範囲」を経済分野にまで拡大する経済秘密保護法案(重要経済安保情報法案)。政府が秘密を指定し、国民への身辺調査=「セキュリティー・クリアランス(適性評価)」も行うという重大な法案ですが、政府・与党は来週にも衆院での採決を狙っています。日米の軍事一体化を背景にした同法案の危険性について、日本共産党の塩川鉄也衆院議員(党国会議員団内閣部会長)に聞きました。(田中智己)


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(写真)白石光撮影

秘密指定 際限なく拡大

―経済秘密保護法案とはどんな法案なのでしょうか。

 同法案は、何が「秘密」なのか、国民には一切知らせないまま、政府の一存で「秘密」指定する秘密保護法と同じ法体系です。重大なのは秘密の範囲を経済分野にも拡大することです。その範囲は経済安保推進法の基幹インフラ(電気、ガス、水道、運輸、通信など14分野)や重要物資(半導体など)より広く、秘密保護法制に新たに組み込まれる食料なども含みます。

 意図していなくても秘密に触れたり、情報漏えいした場合、5年以下の拘禁刑、または500万円の厳罰が科されます。漏えい未遂、過失、共謀、教唆、扇動、取材などで秘密を取得する行為も処罰対象です。

 秘密指定された情報は、国民の代表である国会議員にすら明らかにされません。報道や国会による行政監視は一層困難となり、国民の知る権利への侵害がより深刻化していくことは明らかです。

 秘密を扱う人は民間労働者、技術者、研究者などへと、秘密保護体制が際限なく拡大できることも重大です。

強制的調査 生涯監視も

―「セキュリティー・クリアランス(適性評価)制度」の問題点とは?

 今回とくに重大な論点となっているのが、「セキュリティー・クリアランス制度」の導入です。「秘密」を扱う人に対する身辺調査として、政治的思想、精神疾患などの病歴、借金などの信用情報といった機微な個人情報を根こそぎ調べ上げるものです。家族や同居人の氏名、国籍、住所なども家族本人の同意なく調査されます。秘密保護法に基づく「適性評価」として、公務員を中心に約13万人がすでに対象となっています。本人に回答の提出を求める質問票は30ページに及び、海外渡航歴やそううつ病の治療歴、家賃の滞納状況まで書かせます。上司による回答も求めており、変更事項がある際には「速やかな」報告が必要です。継続的な監視を行うということです。これが民間労働者にまで大きく拡大することになります。

 調査は本人同意を前提としていますが、拒否すれば職場などで不利益を被る恐れがあり、事実上の強制です。しかも、本人や上司などから提出された調査票に疑問が生じれば、再調査や警察、公安調査庁を含む公的機関や医療機関などへの照会なども行うとしています。何重にもチェックする仕組みがつくられます。

 政府は収集した情報は10年の保存期間後に廃棄するとしていますが、照会情報を削除するための規定は設けていません。政府が本当に情報を廃棄したのか、確かめるすべもなく、保管し続けることもできます。一度でも秘密に触れた人は、秘密を漏らしていないか生涯監視が続く恐れがあります。思想、良心の自由、プライバシー権を踏みにじる憲法違反そのものです。

武器輸出・共同開発狙う

―次期戦闘機など国際共同開発をめぐる武器輸出との関係は?

 岸田政権は英国、イタリアと次期戦闘機の国際共同開発を進めています。先月26日には共同開発した次期戦闘機の第三国輸出を解禁するため、「防衛装備移転三原則」の運用指針を改定しました。

 岸田首相は「セキュリティー・クリアランスは、同盟国・同志国との円滑な協力のために重要」だと述べています。日米同盟のもと、2014年に集団的自衛権の行使を可能とする流れの中で、日米の軍事一体化が進められ、米国要求に応える形で秘密保護体制を構築してきました。今回は、英国等も含めた同盟国・同志国との連携強化を図ることが最大の狙いではないかとも見ることができます。

 駐日英大使のジュリア・ロングボトム氏は、毎日新聞(2月14日付)への寄稿で、次期戦闘機の共同開発を進める「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」に関連して、「セキュリティー・クリアランス制度」は「機密技術の共同開発を促進するために欠かせない」と語っています。こうした発言を背景に考えると、政府は武器輸出の推進や連携強化を念頭に、英国からの要求で、政府は同制度の導入を急いでいるのではないかと思います。

 日本国内の財界からも「相手国の国防省関係の業務獲得・円滑化のためにはクリアランスが必要」との声があがっています。英伊との次期戦闘機や、米国との極超音速兵器を迎撃する滑空段階迎撃用誘導弾(GPI)の共同開発に加えて、極超音速兵器やAIの共同開発を柱とする米英豪の安全保障の枠組み「AUKUS(オーカス)」との協力が進められることも報じられています。

 米国など同盟国・同志国と財界の要求に応えて、殺傷性のある兵器の共同開発・輸出を進め、日本を「死の商人国家」にしようという法案の正体を追及していくことが、今国会の大きな焦点の一つです。基本的人権や、国民主権、平和主義という日本国憲法の基本原理を根底から覆す危険な法案を成立させてはなりません。国民世論を結集し、廃案へ追い込むことが絶対に必要です。


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