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2024年3月23日(土)

主張

特定大企業補助金

歯止めなき公費投入をやめよ

 大手半導体メーカーへの法外な政府補助金が相次いでいます。台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第2工場の建設には経済産業省が最大7320億円の支援を発表しました。すでに決定している第1工場への支援と合わせて約1兆2000億円の補助金です。国内企業にも千億円単位の補助金を出します。特定企業に直接これほど巨額の支出をするのは、あまりに不公正な税の使い方です。

半導体メーカーに兆単位

 半導体企業への補助金には法律上の歯止めがありません。2021年、政府がTSMC第1工場の建設に支援を決めた際、青天井になりかねないと批判されました。その通りの事態になっています。

 東芝メモリを前身とするキオクシアと米国企業が岩手県と三重県で共同運営する工場の設備投資には最大2400億円を支出します。トヨタ自動車をはじめ日本の主要企業が出資するラピダスの北海道工場の建設にも3300億円を補助します。

 24年度政府予算案で中小企業対策費は1693億円です。TSMC1社に、その7倍を支出します。その一方、岸田文雄政権は、中小企業の賃上げを直接支援することには後ろ向きです。

 半導体の不足は、家電や自動車の供給の遅れなど、暮らしに影響をもたらしています。半導体にはさまざまな製品があり、用途が異なります。生産に国費を出すなら、際限ない支出にならざるをえません。製品の安定確保は、電機、自動車などユーザー企業が主体となって民間の責任で行うべきです。

 熊本工場を運営するTSMCの子会社には、ソニーのグループ企業と、トヨタグループのデンソーが出資しています。トヨタ自動車も出資します。これらの大企業は、研究開発減税など、数々の優遇を受け、内部留保を膨らませています。補助金がなくても、投資の資金は潤沢です。

 日本の半導体産業を衰退させた責任は自民党政権にあります。日本の半導体の世界シェアは1980年代、5割を超えていました。米政府は自国産業第一の立場から、日本政府に圧力をかけて不利な競争条件をのませました。今や日本の世界シェアは10%程度です。

 ところが米中対立が激化し、米国が半導体を安全保障上の重要物資に位置づけると、自民党は過去への反省もなく、2021年に首相経験者の安倍晋三、麻生太郎両氏を最高顧問とする半導体戦略推進議員連盟を立ち上げ、兆円単位の支援を主張し始めました。

 経団連の提言は、半導体を「米中の技術覇権争いの中でも、経済安全保障に直結する戦略物資」とし、減税や補助金を求めています。

米戦略への危険な加担

 米国は先端技術で中国が優位に立たないよう、締め出しを図っています。しかし日本にとって中国は最大の貿易相手です。米国に加担して半導体を争いの道具とすれば、日中間の対立を深め、アジアの緊張を強めることになります。

 日中両政府は08年の共同声明で「互いに協力のパートナーであり、互いに脅威とならない」ことに合意し、その後もこれを繰り返し確認しています。合意を誠実に履行、具体化し、共存共栄の経済関係を築くことが、国民が必要な物資を安定的に確保する上でも欠かせません。


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