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2024年3月22日(金)

主張

マイナス金利解除

ゆがんだ金融政策正してこそ

 日銀が19日の金融政策決定会合で、「異次元の金融緩和」の一環として実施してきたマイナス金利の解除を決めました。長期金利を0%程度に抑制する政策もやめ、株式上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(J―REIT)の新規買い入れを終了しました。

 大規模な金融緩和によって2%の物価上昇を実現すれば、賃金が上がり、経済の好循環が生まれるとの触れ込みで、2013年に安倍晋三政権下で始まった政策でしたが、破綻に陥っていました。財政と金融にもたらしたゆがみはあまりに大きく、異常な政策全体を正すことが迫られています。

物価押し上げ格差拡大

 異次元緩和を開始した際、当時の黒田東彦日銀総裁は「2年程度で2%の物価目標を達成する」と豪語しました。日銀が金融市場で大量の国債を買い入れ、膨大なマネーを供給する政策でした。しかし景気は上向かず、16年にマイナス金利政策が追加されました。

 民間金融機関が日銀に預けている当座預金の一部に「マイナス0・1%」の金利をつけ、逆に預金からお金を徴収する政策でした。金利を極端に低く抑え込むとともに、民間銀行が日銀当座預金を増やせば、損が出るようにし、貸し出しの増加につなげる狙いでした。それも効果はなく、金融政策は手詰まり状態でした。

 1990年代から続く経済の長期停滞の原因は、賃金抑制や社会保障の削減によって国民が疲弊していたことにあります。安倍政権による2度の消費税増税はさらに消費を冷え込ませました。暮らしを応援し内需の低迷を克服する政策が必要なのに、金融頼みで大企業・富裕層の利益を増やす政策を行ったところに根本的な間違いがあります。

 異次元緩和は、円安を進め、輸入物価の上昇を通じて物価全体を押し上げました。実質賃金は22カ月連続でマイナスです。

 その一方、円安による海外マネーの流入や、ETFの大量購入は株価を押し上げ、大企業・富裕層に多大な恩恵をもたらしました。物価高に苦しむ国民との格差は広がる一方です。

 異次元緩和は日本経済の今後を危うくする重大なひずみをもたらしました。国の長期債務残高は、日銀の国債買い入れに支えられて1000兆円を超え、GDP(国内総生産)の約1・8倍です。今後、金利が上昇すれば、国の利払いが膨らみ、社会保障などの予算を圧迫します。

 日銀が保有する長期国債は595兆円にのぼり、発行残高の半分以上を占めます。物価の安定を使命とする日銀が政府の借金を大量に引き受けることは本来、財政法で禁じられています。

正常化へ政治の転換を

 政府も日銀も、金融頼みがもたらした弊害に何の反省も示していません。植田和男日銀総裁は「当面、緩和的な金融環境が継続する」として国債の大量買い入れを今後も続けることを表明しました。岸田文雄首相は、異次元緩和を決定づけた、13年の政府・日銀共同声明を見直さないと述べました。

 これでは「失われた30年」といわれる経済の長期停滞を打開することができません。経済政策を抜本的に転換し、金融政策を正常化するために、自民党政治を一刻も早く終わらせることが必要です。


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