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2024年3月21日(木)

“三つの合言葉”で学習教育活動の強化を

全国都道府県学習・教育部長会議 志位議長の発言

 15日に開かれた全国都道府県学習・教育部長会議での志位和夫議長の発言を紹介します。


写真

(写真)発言する志位和夫議長=15日、党本部

 今回の全国都道府県学習・教育部長会議は、4年ぶりの開催ということですが、私は、4年前の学習・教育部長会議に参加して、「綱領と決定で党をつくろう」という呼びかけをいたしました。今日は、それをさらに踏み込んで話をしたいと思います。すなわち、「どういう党をつくるか」という角度から、大会決定の徹底、さらにより広く学習教育活動の根本的な意義について述べたいと思います。

 私は、「どういう党をつくるか」ということにかかわって、“三つの合言葉”で学習教育活動の強化をということを呼びかけたいと思います。

どんな困難にも負けない党になろう

 第1の合言葉は、「どんな困難にも負けない党になろう」ということです。

 私は、昨年の党創立101周年記念講演で、「日本共産党の歴史には、順風満帆な時期はひと時もない、つねに迫害や攻撃に抗しながら、自らを鍛え、成長させ、新たな時代を開く――私たちはこれを『階級闘争の弁証法』=『政治対決の弁証法』と呼んでいますが――、そうした開拓と苦闘の100年でした」と述べました。

 どんな困難があっても負けない開拓と苦闘によって、前途を開く。その根本の力になるのは、綱領路線、科学的社会主義への理論的確信であり、それを具体化した大会決定を文字通り全党のものにすることです。

 この点で、あらためて私は、党史にふれたいと思います。

 戦前・戦後のわが党のリーダーだった宮本顕治さんが、1975年に、「赤旗」学習教育版を発行したさいに、それに寄せて書いた「知を力として」という論考があります。いま読み直してみましても胸を打つものです。一節を紹介したいと思います。

 「わが党は、日本の政治史に比類のない先駆的な英雄的闘争の歴史を持っている党です。機関紙『赤旗』(せっき)を読み、党の支持者になるだけでもきびしい弾圧を受け、いわんや入党すれば長期の投獄を覚悟しなければならなかった天皇制支配の暗黒の時期に、多くの同志の不屈の確信と勇気を支えたものは、何だったでしょうか。警察の拷問で岩田義道、小林多喜二たちが死をもおそれず組織を守り、闘いぬいた信念はどこから生まれたのでしょうか。長期の投獄の中で、市川正一をはじめわが党の多くの戦士たちが、死をもおそれず、屈服を拒否して長期の苦難の道を昂然(こうぜん)と選ぶことができたのは、なぜだったでしょうか。……それは、資本主義社会から社会主義社会への必然的な変革の理論的展望を法則的に示す科学的社会主義の理論への原則的確信、侵略戦争と天皇制の専制支配に反対して民主的日本への道を開く党の歴史的使命を、自己の血肉としていたからです」

 戦前、暗黒政治に抗して不屈の闘いを貫いた宮本さんならではの深い実感がこもった、学習教育活動の重要性について述べた一文です。

 私は、先日、長野県の上田市で懇談会に参加したさいに、長野県出身で、24歳の若さで弾圧に倒れた戦前の日本共産党員――伊藤千代子さんについて語る機会がありました。

 あらためて千代子さんの生涯について調べてみまして、彼女の不屈の頑張りの根底にあったものが、理論への確信だったということが、たいへんに印象的でした。伊藤千代子さんは、東京女子大に入って、社会科学研究会をつくり、そこで古典学習を始めるわけですが、その後、捕らえられて東京・市ケ谷刑務所に入れられて、ひどい拷問を受け、しかしその獄中でも、『資本論』を手に学習を続けていた。ところがその『資本論』が、監獄当局によって取り上げられてしまって、たいへんに悔しい思いをした。そのことが、伊藤千代子さんの社研時代の後輩の塩澤富美子さん(野呂栄太郎の妻)――戦前のつらい時期を生き抜き、戦後に野呂栄太郎の業績を紹介するなどの立派な仕事をされた方ですが――、塩澤さんの戦後の追憶で明らかにされています。

 私は、伊藤千代子さんの闘いを調べるなかで、情熱的に学習を続けたことが、彼女の闘いを支えたと強く感じました。『日本共産党の百年』では、戦前、24歳で迫害に倒れた4人の女性の先輩同志を紹介していますが、学習と理論への情熱は、4人の先輩同志のすべてに共通していると、私は思います。

 時代は異なりますが、理論的確信によって、「どんな困難にも負けない党をつくる」ことは、いま、特別に強調されなければならないと思います。

 戦前と違って、いまは直接の弾圧や迫害はありません。しかし、支配勢力がその主要な部分を統括下におく巨大メディアによって、わが党の前進を阻む、あるいは国民の自覚と成長を阻む、いろいろな言説が流布されています。それに打ち勝って、社会変革の事業を進めるためには理論への確信が必要です。

 この間、わが党が2021年の総選挙で「政権交代」を掲げ、一大政治攻勢をかけた。それに対して支配勢力の側から、「安保条約容認の党になれ」「民主集中制を捨てろ」「共産主義の看板をおろせ」という攻撃が、強まりました。いまも続いています。こうしたときに、敗北主義に陥らず、未来への確信を深いところで持って、意気軒高に頑張りぬける最良の力になるのが、綱領と科学的社会主義、それを具体化した党大会決定だということを強調したいと思います。

 さきほどの討論の中でも、さまざまな攻撃との関係で党の方針に疑問を持っていた同志が、大会決定を読んで心がすっきりとして頑張れると述べたという経験が語られましたが、現にそうした力を発揮しているわけです。

 今度の大会決定では、綱領路線にもとづいて世界と日本の大局的展望を明らかにするとともに、支配勢力による攻撃の焦点になっている日米安保条約の問題、民主集中制の問題、未来社会の問題などについても、深いところから党の立場を解明し、新たな理論的発展を行っています。

 討論の中では、大会決定が明らかにした「五つの理論的・政治的突破点」について、これは相手の攻撃に対する断固たる回答にもなっていると受け止めたと発言されましたが、その通りであります。

 この決定を全党が身につけて、どんな困難にも負けることなく、元気いっぱいに未来を開く党をつくろうではないかというのが第1の呼びかけです。

知的魅力によって国民の共感を広げる党になろう

 第2の合言葉は、「知的魅力によって国民の共感を広げる党になろう」ということです。

 いま多くの国民が、社会の現状に怒りや不満を持ち、希望を持って暮らせる社会を求めています。さまざまな不合理がこの社会にはある。それに対して「なぜこんなことが起こっているのか」という問いかけも、さまざまな形でなされています。しかし、世界も、日本も、表面の出来事だけを見ていては、暗く、混沌(こんとん)としたものにしか見えないこともあるでしょう。表面の出来事だけからでは、社会を変える展望は見えてきません。深いところから見る目が必要です。

 そのときにわが党が、綱領と科学的社会主義の立場に立って、国民の「なぜ」に答え、展望を指し示すことができれば、それが党の知的魅力になって、国民の共感を広げ、国民に希望を広げる大きな力になるだろうと思います。大会決定はそのための力の源泉になると確信いたします。

 たとえば東アジアにどうやって平和をつくるか。これは多くの国民の切実な関心事です。岸田政権のように、軍事で軍事に対抗したら悪循環に陥る。平和はつくれません。平和をつくる希望は、東南アジア諸国連合(ASEAN)の取り組みにある。ASEANが半世紀以上の努力でつくりあげてきた、徹底した対話の積み重ね、大国の言いなりにならない自主的立場――この二つを貫くことこそ平和をつくる道だ。この世界平和の一大源泉に光を当てて、「ASEANとの協力で東アジアの平和をつくろう」という大展望を示している党は、日本共産党しかありません。今日の討論でも、わが党の「外交ビジョン」に対して、若い世代から目の前の展望が大きく開けたという反応が寄せられたことが語られました。

 ウクライナ侵略をどうやって終わらせるか。これも多くの人々が心を痛めている大きな問題です。ロシアが侵略を開始してから2年で、さまざまな議論がされました。しかしこの問題でも、本質的な議論をしているのは日本共産党をおいてほかにありません。この問題の第1の責任はもちろんロシアにある。同時に、アメリカにも弱点がある。「民主主義対専制主義」という「価値観」で世界を分断したこと、ウクライナとガザで「ダブルスタンダード」(二重基準)をとっていること――これらが解決の障害になっています。「ダブルスタンダード」ではなくて、「国連憲章を守る」という「シングルスタンダード」で全世界が団結する。ここに解決の方向があります。こういう深いところで問題の本質を明らかにし、展望を語ることができるのは、今度の大会決定、そして綱領の立場を持つ日本共産党ならではのものです。

 物価高騰のもとでなぜこんなに暮らしが苦しいのか。株価があんなに上がっても暮らしは苦しいままです。その原因も大会決定は解き明かしています。「失われた30年」とも言える長期にわたる経済の停滞によって、すでに暮らしがヘトヘトに疲弊しきっているところに、物価高騰が襲っている。だからこんなにも苦しい。そしてそれは自然現象ではない。財界・大企業の利益のための「コストカット」を応援し続けてきた自民党政治の結果だ。この点でも、大会決定は深いところから、暮らしの問題を解明し、展望を示しています。

 もう一つ、いま気候危機が本当に深刻です。産業革命前に比べて平均気温が1・45度もすでに上がっている。ティッピングポイント(転換点)――地球環境そのものが制御できない状況になっていく危険性も指摘されています。そうした気候危機や、格差拡大などを世界的規模の資本主義の矛盾をどうしたら解決できるのか。この問いに答えられるのは日本共産党しかありません。さまざまな矛盾の根源に、資本のもうけの際限ない追求を最優先におく「利潤第一主義」がある。それを乗り越えた未来社会――社会主義・共産主義社会でこそ、「人間の自由」が全面的に花開くことになる。大会決定は、この問題について「三つの角度」から明らかにしました。資本主義を乗り越えた先の展望を語れるのは文字通り日本共産党だけです。党名の問題で疑問を持っていた方が、大会決定にふれて、やっぱりこの名前がいいということになったということも、討論で語られました。

 国民の多くが、いまの社会と政治の不合理に対して「なぜ」という問いを持っています。それに対して深いところから回答を示し、希望を伝えることができるのは日本共産党です。大会決定はその宝庫になっていると確信します。

 この決定を全党のものにして、知的魅力を輝かせて、そのことによって国民の共感を広げよう。これを合言葉にして力をつくそうではありませんか。

一人ひとりが成長する党になろう

 第3に最後の問題です。学習教育の力で、「一人ひとりが成長する党になろう」。これを合言葉にしたい。

 一人ひとりの人間として、そして日本共産党員として、みんなが自分自身の成長を願っていると思います。その最大の保障になるのは何か。今日、参加されている学習・教育部長のみなさんも、お一人おひとりの成長の軌跡を振り返ってみれば、やっぱりその一番の糧になったのは、社会進歩の事業に対する理論的確信ではないでしょうか。理論こそ、成長の糧です。大会決定の徹底を、この角度からもぜひ重視していきたい。このように思います。

 「共産党に入ると自由がなくなる」という議論は昔からあります。この問いに対して、私は、だいぶ前のことで恐縮なんですが、1987年に『今日における組織と人間』という論考を書いたことがあるんです。

 私は、この論考の結びに、いわゆる近代主義的個人主義の立場から、組織と人間というのはもともと対立したものなんだ、組織というのは必ず組織悪をつくりだす非人間的なものなんだと主張した作家の伊藤整氏の議論を批判して、宮本顕治さんが述べた言葉を引用して、つぎのように述べました。

 「『伊藤整が、「組織と人間」という設定で、組織にある人間の宿命的非人間性という主題をくりかえし書いた。私は、これを信じたことはない。この組織と人間の統一的発展の可能性にこそ、組織を武器にする新しい人間、新しい歴史の前進の保障があると信じている』(『宮本顕治文芸評論選集第四巻』の「あとがき」、1969年)

 人間は進歩的組織とともにあってこそ、人間としての自由を獲得し自己を成長させることができる。同時に組織を構成するそれぞれの人間がみずからをきたえ自己変革をすすめていくことは、組織の発展の確固とした保障となる――こうした『組織と人間の統一的発展』という見地こそ、科学的社会主義の立場からの『組織と人間』というテーマにたいする一つの結論といえるでしょう」

 「組織と人間」という見地で見てみますと、大会決定は、その全体が、党員一人ひとりの成長、発展、自己改革について、それが党の組織の発展と響きあいながら前進するということについて、さまざまな角度から、豊かに解明し、強調したものだということがいえるのではないでしょうか。

 ジェンダー平等、ハラスメント根絶についても、大会決定ではつぎのように述べています。

 「党内にある弱点に真摯(しんし)にむきあい、率直に話し合う気風が生まれています。しかし、この自己改革の努力は途上です。学習や率直な議論、日々の活動での不断の努力を続けることをよびかけます」

 「努力は途上」ということを互いに銘記して、いっそうの努力をつくすことが、一人ひとりの成長にとって、また党組織の発展にとって、きわめて重要な課題になっていると思います。党大会決定は、一人ひとりの成長、発展、自己改革にとっての導きの文章にもなっていると思います。

 もちろんこの問題にかかわって、一言、強調しておきたいのは、人間の尊厳を傷つけるハラスメントと、事実に基づく率直な自己・相互批判は、厳格に区別されなければならないということです。率直な自己・相互批判こそ党活動発展の保障となることを、しっかりとつかむことも必要です。この点にかかわって、討論で、大会での結語を学ぶことの重要性が強調されましたが、結語を含めた党大会決定の全体を、そうした見地から深くつかむこともぜひ重視していきたいと思います。

 “三つの合言葉”、どうでしょうか。学習教育活動の持っている根本的意義を広くとらえて、「どういう党をつくるか」を大いに議論し、「どんな困難にも負けない党になろう」、「知的魅力によって国民の共感を広げる党になろう」、「一人ひとりが成長する党になろう」――こういう方向をみんなの合言葉にして、根本的なところから学習教育活動の重要性をしっかりとつかみ、大会決定の徹底、綱領、規約、党史、科学的社会主義を学ぶ一大学習運動にとりくもうではありませんか。全国の学習・教育部長のみなさんが、このやりがいに満ちた仕事の先頭に立って奮闘されることを期待して、発言といたします。


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