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2024年3月21日(木)

きょうの潮流

 卒業シーズンになると思い出す詩があります。「これからの本統(ほんとう)の勉強はねえ/テニスをしながら商売の先生から/義理で教はることでないんだ/きみのやうにさ/吹雪やわづかの仕事のひまで/泣きながら/からだに刻んで行く勉強が/まもなくぐんぐん強い芽を噴(ふ)いて/どこまでのびるかわからない」▼作者は宮沢賢治。彼が子どもに稲作の指導をしている様子を描いた詩の一節です。中学校卒業のときの文集で教師が紹介してくれました。当時、なぜ勉強しなければならないのだろうという思いを抱えていた思春期の心に深く響きました▼「本統の勉強」とは。今、そう考えさせられる事件が起きています。奈良教育大学の付属小学校が、国の定めた学習指導要領に従っていないとされ、大学側が同校の教師たちを他校に出向させようとしています。文部科学省が出向させるよう圧力をかけた可能性があります▼同校では教師たちが長年にわたり研究と創意工夫を重ね、子どもの生活や学力の実態にあった教育を実践してきました。そして子どもたちは目を輝かせて学んできました▼それを否定して学習指導要領の通りにやるのが勉強なのでしょうか。そもそも指導要領はおおよその基準です。付属小のように子どもの思いにそった教育でこそ学ぶ意欲は育ちます。つぶそうとする動きに憤りを感じます▼賢治は先の詩をこう結んでいます。「雲からも風からも/透明な力が/そのこどもに/うつれ」。風のように自由で豊かな教育をと願います。


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