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2024年3月15日(金)

主張

離婚後共同親権

子の権利が最優先 拙速避けよ

 これまで、離婚時には父母のどちらか一方を親権者と決めなければならなかった民法を変え、父母の両方に親権を認める「共同親権」を導入する改定案が14日、衆院で審議入りしました。この問題を考えるとき一番にすえるべきなのは、離婚で最も影響を受ける子どもの権利と福祉の保障です。

DV・虐待への強い危惧

 改定案では、離婚時に父母が協議して共同親権か単独親権かを決め、合意できないときは家庭裁判所が判断します。

 父母が共同で子どもにかかわることが子どもの利益にかなうケースは多くあります。ただ、夫婦間の信頼が失われ関係が破綻して離婚に至る場合、協力しあって養育にあたれる状況は考えにくく、共同親権にすれば子どもの利益になる、というのは実態に沿いません。子どもの養育について父母間に協力関係があれば、現行法でも面会や養育費用の分担など共同して行うことができます。(民法766条)

 一方で、共同親権がかえって子どもの安心・安全・命を損なう現実的な懸念があります。共同親権となった場合、子どもの医療、転居、進学などを単独で決められず元配偶者の合意が必要になります。合意が得られない場合、そのたびに家庭裁判所に判断を求めることになり紛争が多発します。重要なことが速やかに決められなければ混乱を招き、医療などでは命にかかわりかねません。離婚後も両親の争いが長期化して子どもを巻き込み、強いストレスを与え続ける人権侵害の危険があります。

 「急迫の事情があるとき」「監護及び教育に関する日常の行為」については単独で決められるとしていますが、何が「急迫の事情」「日常の行為」に当たるかは曖昧で紛争を招きます。

 深刻なのはDV・虐待の場合への対応策が全く不十分なことです。離婚協議で共同親権を要求され、一刻も早く離婚したいために応ぜざるを得ない事例も予想されますが、子どもの重要事項の決定で協議が必要となれば被害者は加害者から逃げられなくなります。

 裁判所はDVや虐待がある場合、単独親権を命じるとしています。しかし、現在でも紛争にかかわる調査官が足りず、必ずしも適切な判断ができていないと指摘されています。子どもの意思を確認する体制も不十分です。家庭裁判所の負担増大が必至ななかで、DVや虐待事例を見分けられるのか、関係者から強い危惧が示されています。

 「親権」とは親の権利でなく、子どもが安心・安全に暮らせるための親の責務であり、社会による子どもの権利と福祉の保障であるべきです。法改定ではそれが明確にされる必要があります。

子どもの意見表明権を

 そのためには子どもの意思を確認する体制を確保し、子どもの意思が尊重されることが不可欠です。親であっても面会を強いたり妨害したりすることはできません。しかし、改定案には「子どもの意見」「子どもの意思」の尊重が明記されておらず、子どもの意見表明権が保障されているとはいえません。

 法改定によって新たな人権侵害が起きることは許されません。拙速な改定はやめ、子どもの権利を軸に国民的議論を深めることが必要です。


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